感染力が強く、毎年冬になると多くの感染者を出すノロウイルス。「除菌しなければ」と思って真っ先に思いつくのがアルコールという人も少なくないでしょう。しかし、アルコールではノロウイルスの除菌はできないとも言われています。そこで今回は、アルコールでノロウイルスの除菌ができない理由や、アルコールよりも効果の高い除菌の方法などをご紹介します。
ノロウイルスとは?
ノロウイルスとは、感染すると嘔吐や水っぽい下痢、まれに発熱などの症状を引き起こすウイルスで、乳幼児からお年寄りまで、年齢に関係なく感染します(※1)。
子供と大人では出る症状が少し違い、子供では嘔吐が多く、大人は下痢が多いという特徴があります(※2)。
また、子供やお年寄りなどの免疫力が低い人がノロウイルスに感染すると、重症化して脱水症状になることもありますが、健康な大人は感染しても発症しないこともあります。
ノロウイルスは、感染者の便や嘔吐物などから、食品や手の指などを経由して口にウイルスが入ったり、便や嘔吐物の粒子が空中に漂い、それが体内に入ったりすることで感染します(※1)。
そのため、タオルやドアノブなど、感染者が触ったところに菌が付着し、保育園や学校、社会福祉施設などの集団生活の場で、爆発的に感染が広がる傾向があります。
ノロウイルスの感染者は一年中出ますが、特に冬に多くなり、11月から増え始めて、12月~翌年1月に感染のピークを迎えます(※3)。
ノロウイルスはアルコールで除菌できるの?
除菌と言えばアルコールというイメージを持っている人も多いでしょう。しかしウイルスや菌には、アルコールで除菌できるものと、できないものがあり、ノロウイルスはアルコールが効かないウイルスの一種です。
アルコールで除菌できるものには、インフルエンザウイルスやRSウイルス、出血性大腸菌などがあり、一方でアルコールが効かないものには、ロタウイルスやアデノウイルス、ポリオウイルスなどがあります。
ノロウイルスに市販のアルコール除菌剤は効果があるの?
前述のとおり、アルコールにはノロウイルスを除菌する効果は期待できません。しかし最近では、アルコールに別の成分を加えて、ウイルスの活動を抑制する効果を高めた除菌剤が市販されるようになってきました(※4)。
国立医薬品食品衛生研究所は、アルコールに別の除菌成分を加えた除菌剤の効果について、培養が難しいノロウイルスに代替して、「ネコカリシウイルス」というウイルスを使用して実験しています。
この実験で、市販のアルコール系除菌剤の中にも、ノロウイルスに対してある程度効果があることが分かりました(※4)。
つまり、アルコールを含んだ市販の除菌剤では、必ずしもノロウイルスを完全に除菌できるわけではないものの、何もしないよりは意味があるといえます。
ノロウイルスのアルコール以外の除菌方法は?
ノロウイルスの除菌にもっとも効果があるのが、塩素系消毒剤です。
ノロウイルスの働きを止めるのに有効な塩素系消毒液は、家庭でも作ることができます。消毒液に使用するのは、ハイターに代表される市販の塩素系漂白剤です。
この塩素系漂白剤を、塩素濃度が200ppmになるように水で薄め、除菌したいものをこれに浸したり、カーテンや衣類、ドアノブなどを拭き取る際に使ったりします(※6)。
市販の塩素系漂白剤を使って200ppmの塩素消毒液を作るときは、下記を目安に分量を調整してください(※6)。
製品の濃度 | 原液の量 | 水の量 |
12% | 5ml | 3L |
6% | 10ml | 3L |
1% | 60ml | 3L |
ただしこの消毒液は、金属を腐食させる可能性があります。ドアノブなど、金属を消毒した後は、薬が残らないようきれいに拭き取りましょう。
また、吐瀉物などの酸性のものに塩素系漂白剤の原液を直接かけると、有毒ガスが発生する場合があります(※6)。塩素系漂白剤を使って消毒液を作るときは、必ず商品の「使用上の注意」を確認してください。
ノロウイルスの除菌はアルコールよりも塩素が確実
「除菌といえばアルコール」と思ってしまいがちですが、アルコールでノロウイルスを完全に除菌することはできません。
ノロウイルスの除菌にもっとも効果を発揮するのは塩素系消毒液です。市販の材料を使って家庭でも作れるので、保育園や会社でノロウイルスに感染した人が出たら、家族みんなが触れるものや子供の持ち物などを除菌し、感染予防に努めましょう。