赤ちゃんには健康に育ってほしいと誰もが願うものですが、先天的に(生まれつき)病気にかかっている場合もあります。先天性の病気は、適切に治療するためにも早めの発見が大切であり、「新生児マススクリーニング検査」によってそれが可能になるケースもあります。今回は、新生児マススクリーニング検査について、検査方法や費用、検査によってわかる病気などをご説明します。
新生児マススクリーニング検査とは?
新生児マススクリーニング検査とは、生後5日前後の赤ちゃんを対象とした検査です。強制ではなく任意ですが、現在はほぼ100%の赤ちゃんがこの検査を受けています。
検査の目的は、そのまま放置すると将来的に神経障害が出たり、命に関わるような障害が起きたりする可能性がある先天性の病気を早期発見し、障害を予防することです(※1)。
新生児マススクリーニング検査の対象疾患は?
これまで日本では、次の6つの病気を対象に新生児マススクリーニング検査が実施されてきました(※1)。
● フェニルケトン尿症
● メープルシロップ尿症
● ホモシスチン尿症
● ガラクトース血症
● 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
● 先天性副腎皮質過形成症
なかでも、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)が起こる頻度が最も高く、3,200人に1人の赤ちゃんに見られます(※2)。
タンデムマスの新生児マススクリーニング検査でわかる病気とは?
近年では、医学が進歩したことにより、「タンデムマス・スクリーニング」で前述の6つ以外にも診断できる病気が増えました。
タンデムマスの検査では、1回の検査で多くの病気を検査できることが特長です。厚生労働省の通達によると、次の3つのグループに分けられる17の病気が検査の対象となります(※3)。
なお、自治体によって対象となる病気の数が異なることもあるため、詳しくは住んでいる地域の役所窓口で相談してみてください。
アミノ酸代謝異常
内容
通常、食事から摂ったタンパク質は体に吸収されるときにアミノ酸になり、さらにホルモンや酵素など体内で必要なものに変換されます。
しかし、アミノ酸代謝異常があると、体内でうまくアミノ酸を分解できず、特定のアミノ酸が体に蓄積することで様々な障害を起こします。
検査で発見できる病気
フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、シトルリン血症1型、アルギニノコハク酸尿症、高チロジン血症1型、アルギニン血症、シトリン欠損症
有機酸代謝異常
内容
有機酸とは、タンパク質を体内で処理するときにできる物質のことで、体内に増加してしまうと重度の体調不良などを引き起こします。
検査で発見できる病気
メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、メチルクロトニルグリシン尿症、ヒドロキシメチルグルタル酸血症(HMG血症)、複合カルボキシラーゼ欠損症、グルタル酸血症1型
脂肪酸代謝異常
内容
通常、炭水化物など食事から摂れるエネルギーが足りなくなってくると、脂肪が代わりのエネルギー源になります。
しかし、脂肪酸代謝異常があると、脂肪からうまくエネルギーを作ることができません。そのため、多くのエネルギーが必要な脳や心臓、筋肉が深刻なダメージを受けてしまうことがあります。
検査で発見できる病気
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD欠損症)、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(VLCAD欠損症)、三頭酵素/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症(TFP/LCHAD欠損症)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1欠損症(CPT1欠損症)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-2欠損症(CPT2欠損症)
新生児マススクリーニング検査の方法は?
新生児マススクリーニングの方法は、生後5日前後の赤ちゃんのかかとからごく少量の血液を採取し、検査用のろ紙に染みこませて、成分を調べます。
検査結果は1ヶ月健診のときに医師から伝えられることが多いですが、もし確実に正常と判断できない場合は、再検査を行うことになります(※2)。
自分の赤ちゃんが再検査となるとママやパパは不安になると思いますが、再検査の結果、異常がないことがわかる場合もあるので、あまり焦らず検査の日を待ちましょう。
新生児マススクリーニング検査の費用は?
新生児マススクリーニング検査にかかる費用として、検査料と採血料の2つがあります。
ろ紙に染みこませた赤ちゃんの血液成分を調べるための「検査料」は、全額公費負担で、無料です。「採血料」は原則自己負担で、3,000~5,000円が必要となります。
また、再検査が必要となった場合は、保険が適用されますが、一部自己負担が必要です。詳しくは、検査を受ける病院で聞いてみてくださいね。
新生児マススクリーニング検査で病気の早期発見につなげよう
新生児マススクリーニング検査の対象になっている病気は、いずれも放置すると赤ちゃんに重い障害を起こす可能性があるものですが、発症する前に検査で見つけて治療を始めることができれば、治療後の状態が良い可能性が高いといわれています(※1)。
検査について疑問や不安に感じることがあれば、希望に応じて専門医による遺伝カウンセリングを受けることができます。生まれてきた赤ちゃんが健康に育つことができるように、ママやパパが検査の内容について事前にしっかり理解しておきたいですね。