先天性代謝異常の検査方法は?再検査と精密検査の違いは?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

産まれて間もない赤ちゃんは、病院を退院するまでに、さまざまな検査を受けます。何を調べるのかと疑問に思うかもしれませんが、先天的な病気がないかを調べるための大切なものです。その検査のひとつに先天性代謝異常検査があります。今回は先天性代謝異常検査の目的や費用、結果はいつ分かるのかなどについてご紹介します。

先天性代謝異常検査とは?

採血 血液検査 

先天性代謝異常は、生まれつき備わっているはずの酵素が不足しているために、代謝機能が正常に働かなくなってしまう病気です。

代謝がきちんと機能しないと、体内に特定の物質が過剰に蓄積し、赤ちゃんに嘔吐や下痢、黄疸などの症状を引き起こします。

この先天性代謝異常がないかを調べるために、現在では生まれたばかりの赤ちゃんを対象に、新生児マススクリーニング検査という先天性代謝異常検査が行われています。

新生児マススクリーニング検査では、主に以下のような先天性代謝異常を発見することができます(※1)。

先天性代謝異常検査で発見できる病気

・アミノ酸代謝異常の5つの疾患:フェニルケトン尿症やメープルシロップ尿症など
・有機酸代謝異常の7つの疾患:メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症など
・脂肪酸代謝異常の4つの疾患:中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症や三頭酵素欠損症など
・糖質代謝異常の1つの疾患:ガラクトース血症

先天性代謝異常検査の方法は?費用は?

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先天性代謝異常検査は、生後5~7日頃の赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取して行います。医療機関で採血された血液が検査機関へ送られ、血液中に含まれる成分を分析し、酵素が正常に機能しているかを調べます。

検査費用は自治体が負担してくれるので、検査自体に費用はかかりません。

ただし、採血料や郵送料などが自己負担になる場合があります。採血料は2,000〜3,000円が目安ですが、病院によって異なるため、事前に確認してください。

先天性代謝異常検査を受けるかどうかは任意ですが、ほぼ100%の赤ちゃんが受けています。

先天性代謝異常検査の結果はいつ分かる?

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先天性代謝異常検査は、多くの場合、産後1週間くらいの入院期間内に実施されますが、退院までに結果が分かるとは限りません。

検査を行って、異常が見当たらない場合、採血してから約2週間後に医療機関に結果が通知され、1ヶ月健診のときなどに確認することができます。もし検査によって異常が疑われる場合は、採血を行った医療機関にすぐに連絡が入ります(※2)。

代謝異常の疑いがあるときは、専門の医療機関で精密検査を受けることになります。

先天性代謝異常の精密検査とは?再検査とは違う?

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先天性代謝異常の精密検査と混同しやすいものに、再検査があります。

精密検査は、代謝異常の可能性があるとき、正確な診断をするために専門機関で行う検査のことです。一方、再検査は、最初の検査では正常であると確実に判断できないときに、念のために、採血した医療機関でもう一度行う検査のことです(※2)。どちらの検査を受けるかの判断は、検査値の異常レベルによって振り分けられます。

また、精密検査を受けるからといって、必ず先天性代謝異常であるとは限らず、精密検査を受けて異常がないと分かることもあります。

先天性代謝異常検査で早期発見を

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先天性代謝異常は、現時点では根本的な治療法があるわけではなく、生涯付き合っていく必要のある病気です。

ただし、新生児期に代謝異常を発見して、治療用ミルクの使用など適切な治療を行っていくことで、発症の予防、治療につながります(※3)。早期に発見して治療することで、知能障害や発達障害を予防する目的もあります。

赤ちゃんの健やかな成長のためにも、先天性代謝異常検査はきちんと受けることをおすすめします。

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