マグセントとは?切迫早産への効果や副作用、胎児への影響は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

切迫早産になった場合、赤ちゃんが早く生まれてしまうのを防ぐために、子宮収縮抑制薬を使うことがあります。様々な種類の薬があるなかで、「マグセント」は、ウテメリンなどの薬で十分な効果が見られない場合に使われますが、副作用もあるので注意が必要です。今回は、マグセントの効果や副作用、胎児への影響についてご紹介します。

マグセントとは?

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マグセントとは、切迫早産の妊婦に対して投与し、子宮収縮を抑えるための薬です。妊娠22週以降の切迫早産に使われますが、他の子宮収縮抑制剤に比べて強い作用をもっているため、基本的には、ウテメリンやリトドリンなど、「リトドリン塩酸塩」を主成分とする他の薬で子宮収縮が抑制できない、と判断されてからマグセントが使用されます。

また、リトドリン塩酸塩の副作用が強く出てしまうなど、ウテメリンやリトドリンの投与が制限される場合に、代替薬としてマグセントが使われることもあります。

マグセントの製造販売元によると、原則として「妊娠35週以下または推定胎児体重2,500g未満の切迫早産」のケースで使用することが望ましい、とされています(※1)。

マグセントの効果は?

マグセントの主成分は硫酸マグネシウムです。元々、硫酸マグネシウムは妊娠高血圧症候群の人に見られる「子癇(しかん)発作」の抑制や予防のために使われてきました。

それと同時に、子宮収縮の抑制効果もあることがわかっており、妊娠22週以降に切迫早産と診断された場合に、治療薬として応用されるようになりました。

マグセントの製造販売元によると、切迫早産の患者を対象とした国内臨床試験の結果、投与開始から8時間で83.5%のケースで改善が見られています(※1)。

マグセントの用法・用量は?

点滴

マグセントは、瓶の中に無色透明な液体の状態で入っており、静脈内への点滴投与が基本です。

一般的な使い方としては、まず40mlを20分以上かけて点滴で投与したあと、毎時間10mlずつポンプを使って継続的に投与します。もし子宮収縮が抑制されない場合には、毎時間5mlずつ量を増やして、最大20mlまで調節しながら様子を見ます(※1)。

なお、点滴投与中は、血中マグネシウム濃度を慎重にモニタリングしながら、副作用に注意して使うことが大切です。

マグセントの副作用は?

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マグセントは切迫早産に対して高い効果を発揮しますが、副作用が現れるリスクもあります。国内の臨床試験によると、マグセントを投与したケースのうち約7割でなんらかの副作用が現れています(※1)。

マグネシウムの作用によって、熱っぽい感じがする、口が乾く、顔などの皮膚が赤くなる、倦怠感が出る、といった症状が頻繁に見られます。

そのほか、発症率は高くありませんが、マグネシウム中毒による呼吸困難、心電図異常、心肺停止、呼吸不全、横紋筋融解症、肺水腫などの重い副作用が現れることもあるので注意が必要です。

もし痛みを我慢できない場合や体に違和感がある場合は、すぐに担当医師に相談してください。点滴の量を減らすなど、対処を検討してもらいましょう。

マグセントは胎児に影響がある?

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マグセントは、生まれてくる赤ちゃんの予後に影響があるという報告もされています。妊娠中にマグセントを母体に投与することで、胎児には胎動低下、新生児には心不全、高カリウム血症、低カルシウム血症などが見られることがあります(※1)。

マグネシウムイオンは、胎盤を通り抜けてしまいます。マグセントを分娩前の24時間以内に投与した場合は、赤ちゃんが高マグネシウム血症による呼吸障害や筋緊張低下などを起こすリスクがあるので、生後24~48時間は医師による監視を行います。

マグセントは切迫早産に効果がある治療薬

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マグセントは、切迫早産に対して効果がある一方で、副作用に悩まされる可能性もある薬です。子宮収縮を抑えるために必要な処置ではありますが、症状が辛い場合は、担当医に相談しましょう。

マグセントを点滴投与するときは、産後の新生児に万が一のことがあったときに備えて、十分な医療体制が確保されることになっています。切迫早産になるとママ自身も不安だと思いますが、医師や生まれてくる赤ちゃんのことを信じて、落ち着いて治療に臨んでください。

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