子供の間で流行する感染症はいろいろありますが、「流行性耳下腺炎」もそのうちの一つ。「おたふく風邪」とも呼ばれる流行性耳下腺炎は、軽い症状で済むこともありますが、危険な合併症を起こす恐れもあるので、注意して対処する必要があります。今回は流行性耳下腺炎について、原因や症状、治療法、予防法などをご紹介します。
流行性耳下腺炎とは?原因は?
流行性耳下腺炎とは、耳の下にある唾液を分泌する腺「耳下腺」が炎症を起こして、腫れあがる病気です。左右両方の耳下腺が腫れて、おたふくのお面のような外見になることから、「おたふく風邪」とも呼ばれます。
流行性耳下腺炎はムンプスウイルスに感染することで、発症します。2~9歳の子供がかかりやすく、春から夏にかけて発症する傾向にあります(※1)。
ムンプスウイルスは、接触感染もしくは飛沫感染によって子供たちの間で流行することがありますが、一度感染すれば、生涯にわたって免疫ができることが多いです。
流行性耳下腺炎にかかると、合併症として無菌性髄膜炎、稀ではありますが精巣炎・卵巣炎、難聴を起こすことがあるので、注意して対処しなければいけません。
流行性耳下腺炎の症状は?
ムンプスウイルスに感染すると、2~3週間ほどの潜伏期間を経て、片側あるいは両側の耳の下が腫れあがり、触れると痛みを感じます。片側だけ腫れた場合、約半数は数日後に反対側も腫れます(※1)。
腫れが起きる1〜2日前から、倦怠感や頭痛、腹痛などの症状が現れ、腫れや痛みは発症から3日目頃にピークを迎え、その後3~7日ほどで治まっていきます(※2)。また、耳下腺が腫れていると口を開けたり、物を噛んだりするときに痛みを伴うため、食欲がなくなることも。
38~39度くらいの熱が出たり、頭痛や倦怠感が現れたりする場合もありますが、大人も含めて、30%程度は症状が全く出ない不顕性感染です(※2)。
流行性耳下腺炎の診断方法は?
流行性耳下腺炎にかかると、合併症として無菌性髄膜炎や難聴などを起こしてしまうことがあるので、流行性耳下腺炎の疑いがあるときは、必ず病院を受診するようにしましょう。
特に、熱が下がらず、ひどい頭痛や嘔吐を伴うときは髄膜炎や脳炎を起こしている恐れがあるため、急いで小児科を受診してください。
病院では、基本的に問診や視診、触診によって流行性耳下腺炎の診断をします。確定診断を下すために血液検査を行うこともできますが、結果が出るまでに1~2週間ほどかかるため、あまり取られる方法ではありません。
流行性耳下腺炎の治療法や自宅ケア方法は?
流行性耳下腺炎の特効薬はなく、強い痛みが出ていれば鎮痛剤を処方するなど、対症療法を行うのが一般的です。
自宅では安静にし、子供が嫌がらければ、冷たいタオルや氷水で患部を冷やしてあげましょう。
また、腫れている間は、口を開けたり噛んだりするときに痛みが生じるので、食事は噛まずに飲めるスープや味噌汁、豆腐料理、ゼリーなどがおすすめです。硬い食材を与える際は、飲み込みやすいように、柔らかく調理しておきましょう。
流行性耳下腺炎で登園や登校はできる?
ムンプスウイルスは、発症の数日前から発症後10日くらいは人に感染する恐れがあります(※1)。そのため、流行性耳下腺炎は、学校保健安全法によって第二種感染症に指定されており、出席停止期間が定められています。
具体的には、「耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」という基準があるので、腫れが完全に治まるまでは保育園や幼稚園、学校には通えません(※3)。
通い始めるタイミングについては、医師と相談して決めましょう。
流行性耳下腺炎の予防法は?
流行性耳下腺炎の予防には、ワクチンの予防接種が有効です。
1歳以上の子供であれば任意で受けられるので、集団生活が始まる前には受けておきましょう。日本小児科学会は、免疫をしっかりつけるために、ワクチン接種を2回行うことを勧めており、1回目を生後12〜15ヶ月、2回目の接種を5~6歳の間として推奨しています(※4)。
流行性耳下腺炎の予防接種は任意接種扱いになるので、費用は自己負担です。1回あたりの予防接種は4,000~6,000円ほどかかりますが、自治体によっては助成金が出るので、接種する前に確認してみてください。
予防接種後は、耳下腺が軽く腫れたり、発熱したりする副反応がまれに見られますが、基本的には数日で自然に治まります。副反応よりも流行性耳下腺炎の合併症のほうが危険なので、予防接種は受けるようにしましょう。
流行性耳下腺炎は予防接種で防ごう
予防接種を受けていれば、流行性耳下腺炎は防げる病気です。予防接種のスケジュールをしっかり組んで、忘れずに受けるようにしましょう。
また、ママやパパのなかには流行性耳下腺炎の免疫がない人もいます。家庭内で感染者が出ると、免疫がない人同士で感染が拡大する可能性があるので、家族全員が流行性耳下腺炎に対して免疫を持っているかを、医療機関で検査しておくと安心ですよ。