完全母乳育児のメリット・デメリット!時期は?混合から完母の移行方法は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

赤ちゃんを母乳だけで育てることを「完全母乳育児」といい、略して「完母」と呼ぶこともあります。母乳育児は赤ちゃんやママにとって様々なメリットがあるので、できるのであれば完全母乳育児がおすすめです。しかし赤ちゃんの体重やママの体のことを考えながら、こだわりすぎないことも大切です。

今回は、完全母乳育児のメリットやデメリットをはじめ、混合育児から完全母乳育児への移行方法なども含めて詳しくご紹介します。

完全母乳育児のメリットは?

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母乳には赤ちゃんの成長に必要な栄養や免疫成分がバランスよく含まれています。そのため、母乳育児をすることで、赤ちゃんの良好な発達や発育が促進され、SIDS(乳幼児突然死症候群)を含む多くの急性・慢性疾患のリスクが低下するといわれています(※1)。

ほかにも、完全母乳育児にすることにより、以下のようなメリットがあります。

赤ちゃんにとってのメリット

完全母乳育児をすることで、急性中耳炎や喘息、アトピー性皮膚炎、胃腸炎などの病気のリスクは、混合母乳育児やミルクを使用する場合よりも低くなります。

また、授乳のたびにママに密着することでスキンシップをとることができ、安心感が得られるのも完全母乳育児のメリットです。

ママにとってのメリット

赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激でオキシトシンというホルモンが分泌され、そのホルモンの影響で子宮の収縮が早まるため、産後の子宮回復が早くなります。乳がんや子宮内膜がんのリスクが下がる可能性があるという研究結果もあります(※2)。

日常生活の面から見ると、完全母乳育児の場合はミルク代がかからないため経済的負担が軽くなったり、調乳の手間が省けたりします。外出時の荷物が少なくて済むのもメリットですね。

また、母乳だけで育てた場合、1日あたり約500キロカロリーのエネルギ-消費になるとされているので、産後の体重コントロールの手助けにもなりますよ。

完全母乳育児のデメリットは?

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完全母乳育児には良いことがたくさんありますが、ママにとって大変なこともあります。ここでは、完全母乳育児で心配になりがちなことを対策とともにご紹介します。

飲んでいる量がわからない

完全母乳育児の場合は赤ちゃんが飲んでいる量がはっきりとはわからないため、十分に飲めているか心配になります。

母乳が足りているかどうかは、赤ちゃんの機嫌と体重増加を見て判断します。家で体重を測ることができない場合は、赤ちゃんのおしっこやうんちの回数をチェックしましょう。新生児は、1日で色の薄いおしっこを6回以上、うんちを3~8回していれば、母乳が足りていると判断していいとされています。

心配な場合は、医師や助産師さんに相談してみましょう。赤ちゃんの体重が増えず、母乳が足りていないようなら、ミルクを足すこともあります。

ママがなかなか休めない

母乳は消化が早いため、昼夜問わず頻繁に授乳することでママが疲れてしまうことがあります。

ママがなかなか休めないときの対策としては、あらかじめ搾乳しておいた母乳を哺乳瓶で飲ませるようにするといいでしょう。ママ以外の人でも授乳してあげられるので、その間少し休むことができます。

乳腺炎などのトラブルが起きる

母乳育児をしていると、乳口や乳管が詰まって乳腺炎になったり、授乳回数が多いために乳首が傷ついて痛くなったりと、様々なトラブルに見舞われることもあります。

乳腺炎予防のためには、日々のケアが大切です。水分摂取や保湿などに気を配ってみてください。食事と母乳の関係性については医学的にはっきりとした調査報告がされていないので、食べ物を制限しすぎる必要はありません(※3)。バランスよく摂りましょう。

乳首のトラブルは、赤ちゃんの吸い方に問題がある場合があります。授乳するときの姿勢を見直したり、赤ちゃんがママの乳首だけではなく乳輪まで深くくわえられているかなどを確認したりしてみてくださいね。

完全母乳育児ができるのは、いつからいつまで?

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完全母乳育児はいつからできて、いつまでに終わらせればいいのかは、ルールや正解はありません。

実際には、産後すぐから2週間くらいで母乳の量がしっかりと出始め、産後1ヶ月以内で完全母乳育児になるママが多いようです。一方で、最初は母乳の量が足りずしばらく混合育児をするママもたくさんいます。

授乳回数を増やすことで少しずつ母乳が出るように工夫しながら、産後3~4ヶ月頃から完全母乳育児になる人もいます。個人差が大きいのであまり心配しすぎないでくださいね。

いつまで母乳をあげるのかについても、母乳が出るか、赤ちゃんが欲しがるか、ママが与えたいかなどで時期には差があります。

WHOのガイダンスでは生後6ヶ月まで完全母乳育児を行い、2歳以降まで補完食(離乳食)とともに母乳を与えることを推奨しています(※4)。

一方、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、「いつまで」とは明記せず、ママや赤ちゃんの状況に合わせるようにとしています(※5)。

甘えん坊にならないか心配になるママもいますが、赤ちゃんが欲しがるまで母乳をあげたというママが多いようですよ。

混合母乳育児から完全母乳育児にいつ移行できるの?

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混合母乳育児から完全母乳育児への移行時期は個人差があります。産後すぐは母乳の出が少なくても、赤ちゃんが上手におっぱいを吸ってくれるようになれば、徐々に母乳の量が増えていきます。その後、完全母乳育児に切り替えていけるといいですね。

母乳が足りずに赤ちゃんの体重がなかなか増えなかったり、ママが体調を崩してしまったりした場合は、無理せずミルクと母乳の両方を飲ませる混合母乳育児にしましょう。

混合から完全母乳育児に移行するコツは?

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混合育児から完全母乳育児へ移行するには、母乳の量を増やす必要があります。母乳の量を増やすためには、母乳を出して乳腺を刺激することが大切です。最低でも1日10回程度は赤ちゃんに吸ってもらうことで、分泌量が増えていくとされています。

生後1~2ヶ月の赤ちゃんは筋肉がまだ発達していないため、母乳をうまく吸えないことがよくあります。特に、体重が小さめの赤ちゃんや口を上手く開けず浅飲みになっている赤ちゃんは、出産した病院や母乳外来などで吸い方を診てもらうといいでしょう。

吸わせ方の工夫や搾乳などをして、うまく母乳が出るようにコツコツと対応していくことが完全母乳育児へ移行するためには大切ですよ。

完全母乳育児にこだわり過ぎないで

混合母乳育児やミルク育児をしているママのなかには、完全母乳育児ができないことに後ろめたさや罪悪感があるママもいるかもしれません。今回ご紹介したように母乳育児にはたくさんのメリットがありますが、こだわり過ぎるとストレスが溜まり、育児にも悪影響が出る可能性があります。

母乳の出方や体調、家庭の事情や環境には個人差があるものなので、無理せず、ママと赤ちゃんが笑顔でいられるベストな授乳方法を選んでくださいね。

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