補中益気湯とは?効果や副作用は?不妊にも効くの?

監修医師 漢方専門医・内科医 入江 祥史
入江 祥史 日本東洋医学会認定漢方専門医・日本内科学会認定総合内科専門医。医学博士。1991年、大阪大学医学部卒。慶應義塾大学病院漢方クリニック医長、証クリニック吉祥寺院長などを経て、2017年、入江漢方内科クリ... 監修記事一覧へ

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)という漢方薬をご存じでしょうか。体調がゆらぎやすい女性であれば、耳にしたことがあるかもしれませんね。男性にとっては、漢方薬自体にあまり馴染みがないものですが、なかには男性の体調を整えてくれる漢方薬や、男性不妊に効果が見込める漢方薬もあるんですよ。そこで今回は、女性不妊にも男性不妊にも効果が見込めるといわれる補中益気湯について、その副作用や飲み方などについてご紹介します。

補中益気湯とは?

漢方薬

補中益気湯は、古来より中国に伝わる漢方薬です。補中益気湯は、1247年、中国が元の時代につくられた医学書「内外傷弁惑論」に掲載されています(※1)。

補中益気湯は、胃腸の働きを促して、疲労回復をはかり元気をつける漢方薬で、以下の10種類の生薬が配合されています。

● 黄耆(オウギ)
● 人参(ニンジン)
● 白朮(ビャクジュツ)
● 甘草(カンゾウ)
● 当帰(トウキ)
● 陳皮(チンピ)
● 升麻(ショウマ)
● 柴胡(サイコ)
● 大棗(タイソウ)
● 生姜(ショウガ)

補中益気湯は、厚生労働省が定める「一般用漢方製剤製造販売承認基準」に適合しており、病院などで処方してもらうことができます(※2)。また薬局などで購入することもできます。

補中益気湯にはどんな効果があるの?

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補中益気湯は、消化機能が衰え、倦怠感を覚える虚弱体質の人に向いています。特に、下記の症状に対して効果が見込めます(※3)。

● 微熱や就寝時の発汗を伴う、慢性化した風邪や、食欲不振、夏痩せ、疲労倦怠、病後の体力低下
● 内臓下垂(内臓が下がってしまうこと)
● 痔、脱肛(直腸の粘膜が肛門から外に出てしまうこと)
● 子宮下垂(子宮が下がってしまうこと)
● 肝疾患(慢性肝炎、肝硬変)、結核症
● ED(勃起障害)、半身不随
● 多汗症、アトピー性皮膚炎、褥瘡(じょくそう:床ずれ)

補中益気湯の飲み方は?

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病院で処方される補中益気湯は顆粒、薬局などで販売される補中益気湯は顆粒と錠剤があります。

1日2~3回、食前または食中に、水や白湯で服用します。顆粒タイプであれば、お湯に溶かして飲むのも良いでしょう。

なお市販の顆粒は一般的には2歳以上、錠剤は5歳以上から服用することができます(※4,5)。事前に、薬に付属している説明書等に書いてある詳しい飲み方をよく読むようにしましょう。

補中益気湯は不妊にも効果がある?

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補中益気湯は不妊にも効果があるといわれています。特に以下の症状に対して効果が見込まれます。

ED(勃起障害):男性不妊

EDとは、性行為の際に十分な勃起ができない、もしくは十分な勃起を維持できないことです。男性不妊の原因の一つで、心因性(精神的なストレスが原因である場合)、器質性(神経や血管の障害が原因である場合)などがあります。

ED患者が補中益気湯を12週間以上服用したところ、心因性、器質性ともに、効果が見られたケースがあったという報告があります(※6)。

精子運動率の低下:男性不妊

授精するには精子と卵子が出会わなければいけません。しかし精子の運動率が低いと、卵子と出会うことができず、不妊に繋がってしまう可能性があります。

しかし補中益気湯を服用することにより、精子運動速度と精子直進性(精子がまっすぐ進む確率)が向上し、精子数が増えることもあります。

また抗精子抗体(女性の体が精子を異物とみなし、排除しようとする免疫機能の異常)に対する、精子運動率の低下を抑える効果があることがわかっています(※7)。

なお、精子運動率は目視などで確認することはできません。気になる人は、泌尿器科や産婦人科(パートナーが不妊治療等で通っている場合)で精液検査を受けてください。

気虚の状態:女性不妊

女性の不妊に対しても補中益気湯が使われることもあります。疲れやすい、倦怠感がある、不正出血があるなどの症状があると、漢方では「気虚(体のエネルギーが不足している状態)」といわれます。

気虚の状態は、体内に血や水を巡らす機能や、出血を止める機能の低下を招きます。

補中益気湯は、この気虚による症状に対して有効で、女性不妊の一因である月経不順や不正出血などを改善する効果が期待できます。

補中益気湯は妊娠中にも服用できる?

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妊娠中は服用できる薬が大きく制限されてしまいます。しかし補中益気湯は妊娠期の諸症状に有効で、妊娠中も服用することができます。

特に汗を激しくかくような風邪や、脱肛の際には、補中益気湯が処方されることがあります(※8)。ただし特に妊娠中に補中益気湯を服用する際は、必ずあらかじめ、かかりつけの産婦人科で相談しましょう。

補中益気湯に副作用はある?

「漢方薬は西洋薬とは違い、副作用はない」と考えるのは間違いです。西洋薬ほど急激な副作用はありませんが、漢方薬にも副作用は存在するので服用の際は注意してください。

補中益気湯には、以下の副作用があるとされています(※4)。

● 発疹・発赤、肌のかゆみ
● 間質性肺炎:階段を上ったり、少しの激しい運動でも息切れがしたり息苦しくなる。空咳や発熱がみられる
● 肝機能障害:発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色の尿、全身のだるさ、食欲不振など

これらの症状が見られた場合には、服用を止めて医師の判断を仰ぎましょう。

補中益気湯で元気回復!男性不妊にも!

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補中益気湯は胃腸の働きを高めて疲労回復をはかる効果があるので、「最近疲れやすいな」と感じたときに服用できる漢方薬です。

さらに補中益気湯は、男性不妊に対する効果があり、妊娠中の女性も服用することもできます。赤ちゃんを望む夫婦は、その名を覚えておいて損はないでしょう。

ただし漢方薬は体質に合わない場合もあります。効果が出ないことも考えられるので、「絶対に効く」と期待しすぎないよう、日頃から健康的な生活を送るなど、薬にだけ頼らないようにしてくださいね。

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