温経湯(うんけいとう)という漢方薬をご存じですか?もしかすると、薬局で販売されているのを見たことがある、という人も多いかもしれません。温経湯は比較的よく処方される漢方薬で、特に女性特有の様々な症状に効果があるとされています。今回は、温経湯とはどんな漢方薬なのか、また不妊に効果があるのか、さらにその副作用や、「飲むと太るらしい」という噂の検証まで、様々な角度からご紹介します。
温経湯とは?
温経湯は、中国に古くから伝わる漢方薬で、西暦200~210年頃につくられた医学書「金匱要略」に掲載されています(※1)。
温経湯は、体力が低下した冷え症の人で、手足のほてりや唇が乾燥しやすいなどの症状がある人に対して効果が期待できます。
温経湯には、以下の生薬が含まれています(※2)。
● 麦門冬(バクモンドウ)
● 半夏(ハンゲ)
● 当帰(トウキ)
● 甘草(カンゾウ)
● 桂皮(ケイヒ)
● 芍薬(シャクヤク)
● 川芎(センキュウ)
● 人参(ニンジン)
● 牡丹皮(ボタンピ)
● 呉茱萸(ゴシュユ)
● 生姜(ショウキョウ)
● 阿膠(アキョウ)
温経湯は、厚生労働省が定める「一般用漢方製剤製造販売承認基準」に適合しており、病院などで処方してもらうことができます(※3)。また薬局などで購入することもできます。
温経湯の効果は?
温経湯は、下記のような症状の改善に効果が見込めます(※2)。
● 月経不順、月経過多、月経困難、更年期障害、不妊症、不正性器出血、おりもの(帯下)
● 肌荒れ、手荒れ、湿疹、しもやけ
● のぼせ、腹痛、下痢、足腰の冷え
● 不眠、神経症
温経湯は、夕方になると熱が出たり、唇や肌が乾燥しやすかったり、月経不順を体質としてもっている人に効果が見込めます。
また、手のひらに汗をかきやすい、多汗症の人に対しても、温経湯が用いられることがあります。
温経湯は不妊にも効果がある?
温経湯は、不妊に悩む女性に対して、産婦人科から処方されることがあります。それは前述の通り、月経不順や月経困難など、月経に関するトラブルを改善してくれる効果が見込めるためです。
温経湯は、特に漢方でいう以下の状態に効果があります(※2)。
● 血虚(けっきょ):血を作る能力が低下したり、血を過剰に消耗することで血が不足する状態のこと。月経不順や、月経後の症状悪化が見られます。
● 陰虚(いんきょ):血虚がさらに進んだ状態で、月経異常、無月経、のぼせ、ほてり、口の渇きなどが見られます。
● 瘀血(おけつ):血の流れが滞った状態で、月経困難症、月経不順、冷え症などの症状が見られます。
温経湯は、血を正常に作り、血を正常に巡るための手助けとなり、女性の月経に関する諸症状を改善してくれます。これが、女性の不妊に効果があるとされる理由です。
温経湯の副作用は?
西洋薬と比べると症状は穏やかなことが多いものの、漢方薬にも副作用があります。以下のような副作用が見られたら、医師または薬剤師に相談しましょう(※4)。
● 発疹、発赤、かゆみ、じんましん
● 食欲不振、胃部不快感、悪心(吐き気)、下痢
なかには、以下のような重症に至ることもあります。これらの症状があらわれたら、温経湯の使用を止め、すぐに医師の診療を受けましょう(※4)。
● 偽アルドステロン症(尿の量が減る、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる)
● ミオパチー(体がだるく手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる)
温経湯は飲むと太るの?
温経湯を飲むと、体重が増えてしまう…という人もいるようですが、それは本当なのでしょうか?
温経湯に含まれる甘草には、体内に塩分や水を貯める性質があります。
その副作用として起こる偽アルドステロン症により、顔や手足のむくみが太ったように感じられることがあります。また水を貯めたことにより、実際に体重が増えてしまうこともあります(※5)。
ただし温経湯に含まれる甘草は、他の漢方薬と比べてそれほど多いということではなく、その影響は軽微です。
また、温経湯を飲んで体調が良くなったため、食欲が増して体重も増えてしまった…という可能性もあります。ただしこれも、温経湯に限らず漢方薬全般に言えることです。
温経湯は冷え症に悩む女性の味方!
温経湯は、血をつくり、巡らせる機能を高めることで、月経不順など女性特有の症状を改善してくれる効果が期待できます。
薬局でも手軽に購入できる温経湯は、とてもありがたい存在ですよね。しかし副作用もあるので、他に薬を服用している際などは特に注意し、薬剤師に相談してから服用しましょう。
また妊娠を望む際や妊娠中も、事前に必ず医師や薬剤師に相談してから服用してくださいね。