妊娠中に風疹にかかると、お腹の赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気を発症することがあります。先天性風疹症候群は白内障や難聴、先天性心疾患などを起こす病気で、予防することが大切です。今回は先天性風疹症候群について、原因や症状、治療法、予防法などをご紹介します。
先天性風疹症候群(CRS)とは?原因は?
先天性風疹症候群(CRS)とは、妊娠中の女性が風疹にかかることで胎内感染し、生まれてくる赤ちゃんに先天性の障害が現れる病気のことです。
原因となる風疹ウイルスは、胎盤を通じて母体から赤ちゃんへ感染します。
妊娠初期であるほど先天性風疹症候群を発症する頻度が高く、典型的な症状が揃いやすいことがわかっています(※1)。
先天性風疹症候群の症状は?
先天性風疹症候群の症状として現れやすいのは、難聴や白内障、先天性心疾患ですが、このほかにも網膜症や肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球といった症状が現れることがあります(※2)。
厚生労働省によると、妊娠3ヶ月頃までに母体が風疹ウイルスに感染すると、目や心臓、耳に症状が現れやすく、それを過ぎて感染すると、難聴と網膜症が現れやすくなります。妊娠20週以降の感染では、「異常なし」が多いと報告されています(※3)。
先天性風疹症候群の診断方法は?
先天性風疹症候群は、新生児期に現れている症状の診断や風疹特異IgM抗体を調べるために、新生児や臍帯血からの血液検査をして診断されます(※4)。
先天性風疹症候群の治療法は?
先天性風疹症候群それ自体を治療する方法はなく、生まれてきた赤ちゃんに現れている症状に対して、それぞれ治療していくことになります。
一般的に、難聴が起こった場合は人工内耳の手術を行い、白内障に対しては、手術可能になった時点で、手術をして対処します。心疾患がある場合は、その内容により薬の内服治療や外科的手術などが行われます(※2)。
風疹ウイルスに感染した妊婦さんに対しては、発熱や発疹などへの対症療法が行われます。
先天性風疹症候群の予防法は?
先天性風疹症候群を予防するために、妊娠する前に風疹ウイルスへの抗体の有無を確認するか、予防接種を受けましょう。そして、接種後2ヶ月間は避妊する必要があります(※2)。
なかには、妊娠して初めて抗体がないことを知る人もいます。基本的に妊娠中は、風疹の予防接種を受けることができないので、妊娠中に抗体がないことが分かった場合は、風疹ウイルスに感染しないように、以下のことを心がける必要があります。
・人混みの多いところに出かけない
・外出時にマスクをする
・手洗いとうがいを徹底して行う
・風疹流行時はできるだけ外出を控える
また、周りの人が風疹にかかってしまうと、妊婦さんにうつってしまうリスクがあるため、パートナーや同居の家族にも風疹ウイルスへの抗体の有無を調べてもらい、抗体がなければ、予防接種を受けてもらいましょう。
先天性風疹症候群を予防する目的のワクチン接種や・抗体価検査に関して補助を出す自治体もありますよ。
風疹の流行状況にはアンテナを張っておき、もし少しでも流行っているようであれば、より細心の注意を払うようにしてくださいね。
先天性風疹症候群には落ち着いて対処を
1994年の予防接種法改正によって、小児への風疹ワクチンが定期接種になりました。流行を抑えることはできていますが、感染者がゼロになっているわけではありません。先天性風疹症候群になると、赤ちゃんに障害が現れる可能性があるため、まずは予防を心がけましょう。
しかし、妊娠中に風疹ウイルスに感染したとしても、必ず赤ちゃんが先天性風疹症候群になるというわけではないので、風疹が疑われる症状が見られるときは、慌てず、すぐに病院を受診してください。
赤ちゃんが先天性風疹症候群になっていると分かった場合は、どう対処していくかについて医師とよく話し合いましょう。分からないことや疑問に感じることがあれば、一人で抱え込まず、医師に随時尋ねることが大切です。