不妊治療を受けている人の中には、「アリミデックス(アナストロゾール)」を処方されている方もいるかもしれません。実はこの薬、乳がんの患者さんに投与される治療剤の一つなのです。なぜ、乳がん治療薬が不妊治療にも使われるのでしょうか?今回はアリミデックスについて、排卵誘発を目的に使われる理由と効果、関節痛や脱毛など副作用に現れる症状などをご説明します。
アリミデックス(アナストロゾール)とは?
アリミデックスは、アストラゼネカ株式会社が販売するアナストロゾール錠です。もともとは、閉経後の乳がん治療のために使われている「アロマターゼ阻害剤」という種類の医薬品です。
乳がんは、女性ホルモンの一つ「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の作用によって乳腺細胞が増殖することで発生します。
アリミデックスを投与すると、エストロゲンの生成を助ける「アロマターゼ」という酵素の働きが抑えられ、エストロゲンの分泌を抑制できるため、結果として乳がんの増殖が抑えられます(※1)。
アリミデックス(アナストロゾール)で排卵誘発できる?
乳がんの治療薬として開発されたアリミデックスが、なぜ不妊治療でも使われることがあるのでしょうか?アロマターゼ阻害剤が、排卵誘発に影響するメカニズムについてはいくつか考えがありますが、ここでは卵胞刺激ホルモン(FSH)への影響について簡単にご説明します(※2)。
「卵胞形成ホルモン(FSH)」によって卵胞が刺激され、発育していきますが、エストロゲンにはFSHの分泌を抑制する作用があります。アリミデックスの作用でエストロゲンが抑制されると、FSHの産生が増えて卵胞が成長する、という仕組みです。
なお、アリミデックスは、日本ではあくまでも乳がんの治療薬として承認されているため、アリミデックスを排卵誘発剤として処方する場合は、保険適用外となるため、費用は全額患者負担です。
アリミデックスの添付文書にも、注意事項として「閉経前患者への使用は避けること」と書かれています(※3)。排卵誘発のためにアリミデックスを処方するかどうかは、医師によって異なるのが現状ですが、慎重な判断が必要になります。
アリミデックス(アナストロゾール)の副作用は?
アリミデックスには、乳がん治療や排卵誘発の効果がある一方で、様々な副作用もあるとされています。販売元による国内臨床試験の結果、アリミデックスを投与した患者のうち、10人に1人に副作用が見られました(※3)。
アリミデックスはエストロゲンを人為的に抑制するため、ほてりや頭痛、吐き気、食欲不振、肩こりといった更年期障害に似た症状が現れる場合があります。そのほか、生理ではないときに不正性器出血が見られた場合には、すぐに病院を受診して検査を受けましょう。
発生頻度は0.1%未満と稀ですが、重い皮膚・粘膜の障害やアナフィラキシー、血栓症や肝機能障害などが報告されています。アリミデックスを飲み始めて体調に変化を感じたら、服用後の定期検診などの際に必ず医師に相談をしましょう。
アリミデックス(アナストロゾール)で骨粗鬆症になる?
アリミデックスを投与することによって、骨粗鬆症や骨折が起こりやすくなります(※3)。これは、アリミデックスの作用で体内のエストロゲンが低下すると、カルシウムを吸収する力が落ち、骨が脆くなるためです(※1)。
アリミデックスを投与されたあとは、定期的に病院で検査を受け、骨密度などを測って定期的に骨の状態を観察することが望ましいでしょう。
アリミデックス(アナストロゾール)を適切に使いましょう
アリミデックスは、もともと閉経を迎えた乳がん患者のための治療薬ですが、エストロゲンを抑えるという作用から、不妊治療に使われることもあります。
日本国内では「排卵誘発薬剤」として保険が適用されるわけではないため、使うかどうかは医師の判断にもよりますが、処方された場合は用法・用量を守って正しく服用してください。
アリミデックスのほかにも、「クロミフェン」や「フェマーラ」「セキソビッド」など、排卵誘発の効果を持つ薬がいくつかあります。
どれも、排卵がうまくされないことによる不妊で悩んでいる人をサポートしてくれるもので、医師が症状などから判断して処方してくれますが、副作用に気をつけながら服用しましょう。