hCG注射は、不妊治療では欠かせないホルモン剤のひとつです。タイミング指導で排卵を促したり、体外受精のために採卵したりするために使用されます。ただし、hCG注射を使ったあとは、妊娠検査薬が陽性反応を示してしまうことがあるので注意が必要です。今回はhCG注射後に妊娠検査薬を使えるのはいつからなのか、何日目まで陽性反応が出るのかなどをご説明します。
hCG注射とは?どんな効果があるの?
hCG注射は、妊娠した女性の体内で作られる「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンを、体内に注入して補うものです。
hCGは、卵巣に働きかけて黄体が壊れるのを防ぎ、妊娠を維持するのに不可欠な「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンの分泌を促す作用があります。
また、排卵前に大量分泌される「黄体形成ホルモン(LH)」と同じ作用を持つため、hCG注射の投与から約36時間後に排卵を起こさせることができます(※1)。
このように、hCG注射は、プロゲステロンの分泌促進や排卵誘発を目的として、不妊治療で使われることがあります。
hCG注射後、妊娠検査薬の陽性反応が出る理由は?
hCG注射を打ったあと、たとえ妊娠が成立していない場合でも、妊娠検査薬を試すと陽性反応が出てしまうことがあります。それはなぜでしょうか?
妊娠すると体内でhCGが分泌され、徐々に量が増えていきます。この性質を利用して、妊娠検査薬ではhCGの分泌量を基準に陽性・陰性の判定を行います。
市販の妊娠検査薬は、尿中のhCG値が50mIU/ml以上の場合、陽性反応が出るものがほとんどです。さらに感度が高い「早期妊娠検査薬」であれば、25mIU/ml程度でも陽性反応を示します。
hCG注射を打つと、当然のことながら体内のhCG量が増加します。注射剤に含まれているのは、妊婦の尿や胎盤から抽出された天然のhCGであり、妊娠したときに分泌されるhCGと同じ成分です。
妊娠検査薬だけでは、注射によるhCGと妊娠によるhCGの識別ができません。そのため、hCG注射後しばらくは妊娠検査薬が反応してしまい、陽性反応が出ることがあるのです。
hCG注射後、妊娠検査薬はいつから正確に使える?
hCG注射を打った場合でも、時間の経過につれて体内のhCG量は減少していきます。製薬会社が出している添付文書によると、投与してから約6時間後にhCGの血中濃度がピークに達し、約30~32時間の半減期で、血中から消えてなくなります(※1)。
ただし、通常の治療では、1日おきに何回か繰り返し注射を打つことになるので、投与期間中の血中hCG濃度は除々に高まっていきます。
また、hCG注射にはいくつか種類があり、含まれるhCGの量や投与頻度が異なるうえ、個人の体質による違いもあるため、いつまで血中にhCGが残るのかは明確にわかりません。
hCG注射を終えた後、1〜2週間あけてから妊娠検査薬を使うのが目安ですが、いつから使っても良いかは医師に確認してください。正確な判定をするためには、産婦人科を受診して検査を受けましょう。
hCG注射後は妊娠検査薬のフライングに注意
hCG注射を打った後、しばらくの間は妊娠検査薬が陽性反応を示してしまうことは避けられません。hCG注射の種類にもよりますが、2週間程度置いてから妊娠検査薬を使うと安心です。
ただし、hCG値の減少幅は個人差があるものなので、最終的な妊娠判定は病院で受けましょう。
不妊治療に取り組んでいると、「一刻も早く妊娠検査薬を試したい」と考える人も多いかもしれませんが、誤判定で一喜一憂しなくて済むよう、hCG注射を打った後のフライング検査には気をつけてくださいね。