脳下垂体から分泌されて卵巣を刺激するホルモンには、「LH(黄体形成ホルモン)」と「FSH(卵胞刺激ホルモン)」の2つがあります。黄体形成ホルモンも、卵胞刺激ホルモンと同じく、血液検査において基準値を外れると月経異常や不妊症の可能性が疑われます。今回は、LH(黄体形成ホルモン)の作用や、基準値よりも高い・低いときに診断される病気についてご説明します。
LH(黄体形成ホルモン)とは?どんな作用があるの?
LH(黄体形成ホルモン)は、「ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)」のひとつです。LH(黄体形成ホルモン)には、排卵を促し、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンの分泌を促進する作用があります(※1)。
脳下垂体から分泌されたLH(黄体形成ホルモン)は卵巣に送られ、排卵を促します。この働きによって卵巣から排出された卵胞は「黄体」という組織を形成し、プロゲステロンを分泌します。プロゲステロンによって子宮内膜の厚さが維持され、受精卵が着床しやすい環境を整えます。
このように、LH(黄体形成ホルモン)はプロゲステロンの分泌に大きく関わることから、「黄体化ホルモン」とも呼ばれています。なお、同じく脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)の作用によって、卵胞は成熟していきます。
この2つのホルモンが正常に分泌されることで排卵が起きる仕組みになっています。
LH(黄体形成ホルモン)は、どのように分泌されるの?
脳下垂体でLHの生成・分泌を促すホルモンを、「GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)」といいます。ゴナドトロピン放出ホルモンの分泌量は、生理周期を通じて次のように変化し、それによってLHの分泌が調節されています(※1)。
卵胞期
生理が起こったあと、卵巣にある卵胞が発育するにしたがって、エストロゲンが分泌されます。エストロゲンの働きにより、受精卵が着床しやすいように子宮内膜が厚くなります。
「卵胞期」の後期になるほどゴナドトロピン放出ホルモンの分泌量が増えます。これによりLH(黄体形成ホルモン)の分泌も増加していきます。
排卵期
「排卵期」に入ると、ゴナドトロピン放出ホルモンによる刺激が強まり、LH(黄体形成ホルモン)が一時的に大量放出されます。この現象を「LHサージ」と呼び、このときに排卵が起こります。
黄体期
「黄体期」になると、LH(黄体形成ホルモン)による刺激で、排卵を終えた卵胞が「黄体」という組織になります。黄体から分泌されたプロゲステロンは、子宮内膜を充実させ、その状態を維持します。
ゴナドトロピン放出ホルモンの分泌量がだんだんと小さくなっていくにつれて、LH(黄体形成ホルモン)の分泌も減少します。
LH(黄体形成ホルモン)の基準値は?
先ほど触れたとおり、排卵期にはLH(黄体形成ホルモン)の濃度が急激に上がります。このメカニズムを利用して、排卵後に血液中のホルモン濃度を測定すれば、女性の体が妊娠可能な状態であるかどうかを調べることができます。
LH(黄体形成ホルモン)の数値は、婦人科の女性ホルモン検査を受けることで測ることができます。基準値は測定キットによって異なり、下表の数値は、日本産科婦人科学会が示す「スパック-S」による基礎分泌測定値です(※2)。
LH(黄体形成ホルモン) (mIU/mL) |
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卵胞期 | 1.8~7.0 |
排卵期 | 5.6~34.9 |
黄体期 | 1.0~7.8 |
閉経後 | 6.7~38.0 |
LH(黄体形成ホルモン)が低いとき、高いときは病気の可能性がある?
LH(黄体形成ホルモン)が基準値の範囲から外れている場合、下記の可能性が考えられます(※2)。
LH(黄体形成ホルモン)の数値が高い
LH値が高い場合、卵巣が原因の排卵障害がある可能性があります。また、早発閉経などが原因で卵巣機能が低下しているケースも考えられます。
また、FSH(卵胞刺激ホルモン)の数値が正常にもかかわらず、LH値が高い場合、「多嚢胞性卵巣症候群」が疑われます。
LH(黄体形成ホルモン)の数値が低い
LH値が基準値より低い場合、視床下部や下垂体機能の低下による月経異常(無月経、無排卵)が見られる可能性があります。
LH(黄体形成ホルモン)を調べるときは、婦人科へ
LH(黄体形成ホルモン)は、排卵と女性ホルモンの分泌を促し、妊娠しやすい体を作るために不可欠なものです。普段から生理不順で悩まされている人は、もしかするとLHの数値が基準値よりも高かったり低かったりすることが原因かもしれません。
また、不妊に悩んでいる人は、原因が排卵障害にあるとわかれば、生活習慣の改善や排卵誘発剤の使用によって排卵を起こしやすくする方法もあります。自分の体の状態にあった不妊治療をできるだけ早く開始するためにも、ホルモン検査について婦人科で相談してみてくださいね。