不妊治療に臨む人にとって、排卵のタイミングを正確に把握することが大事ですよね。このとき重要な目安になるのが、「LHサージ」と呼ばれる現象です。LHサージが起こるタイミングをつかむことができれば、排卵日を予測することができ、妊娠率を高めることにつながります。そこで今回は、LHサージとはどんな現象か、排卵が起きる時間やタイミングについてご紹介します。
LHサージとは?排卵との関係は?

LHサージとは、簡単に言うと「排卵を起こすホルモン分泌の波」のことです。女性の体内では、排卵までに次のようなホルモン分泌の変化が起こります(※1)。
まず、脳の視床下部から「ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)」が分泌されます。このホルモンには、「黄体形成ホルモン(黄体化ホルモン:LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」という、2つの性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌を促進させる役割があります。
ゴナドトロピン放出ホルモンは、卵巣の中の卵胞が発育する「卵胞期」の後半になると、分泌量が増えていきます。そして、「排卵期」に入ってゴナドトロピン放出ホルモンによる刺激が強まると、脳下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が大量に分泌されます。
この現象を「LHサージ」と呼びます。
排卵は黄体形成ホルモン(LH)の指令によって起きるため、LHサージを検知することでおおよその排卵の時間を予測できます。なお、「サージ(surge)」は「波が押し寄せること、急に高まること」を意味します。
LHサージは排卵検査薬で検知できるの?

LHサージの開始から約36~40時間後、ピークを迎えてから約10~12時間後に排卵が起きるとされています(※2)。
排卵検査薬は、LHサージで尿の中に排出された黄体形成ホルモン(LH)の数値を検出するものです。そのため排卵検査薬が陽性反応を示したタイミングで夫婦生活を持つと、妊娠する可能性が高くなります。
日本産科婦人科学会によると、排卵検査薬で尿中のLHをより正確に検知するには、朝夕2回の検査が望ましいとされています(※3)。
ただし、黄体形成ホルモン(LH)は排卵以外のときに数値が上昇することもあるため、排卵日以外でも排卵検査薬が陽性を示す可能性もあります。そのため、排卵検査薬の結果が100%確実と言い切れるわけではないということは覚えておきましょう。
LHサージがあったのに排卵しないことはある?

LHサージが確認できても、「黄体化未破裂卵胞症候群(LUFS)」が原因で、そのあと排卵が起こらないケースも稀にあります。
黄体化未破裂卵胞症候群は、卵胞が成熟したにもかかわらず、なんらかの原因で排卵ができなくなる病気です。
卵巣の表面が嚢胞やほかの臓器と癒着していたりすると、卵胞破裂が妨げられます。そうすると、卵胞は排卵しないまま「黄体化未破裂卵胞」へと変化してしまいます(※1)。
黄体化未破裂卵胞の状態であっても、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンは分泌されるので、基礎体温は上昇します。そのため、基礎体温の記録をつけていると「排卵した」と勘違いしてしまうこともあるようです。
このように、LHサージだけでは確実に排卵があったかどうか判断できないこともあるので、次にご説明するとおり、様々な検査方法を組み合わせるのが確実と言えます。
LHサージ以外で排卵日を予測するには?
すでにご説明したとおり、LHサージが続くのは数時間なので、タイミングをうまく捉えて排卵検査薬で検知するのが難しく、検知できたとしても確実に排卵を確かめられない可能性もあります。
そのため、LHサージのほかに、次に挙げる要素もあわせてチェックすると、より正確に排卵日を予測することができます。
基礎体温
排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)には体温を上昇させる作用があります。毎朝、目を覚ましたタイミングで基礎体温を記録することで、低温期から高温期に切り替わるタイミングが排卵日付近である、と予測できます。
子宮頚管粘液
子宮口から子宮内までをつなぐ「子宮頚管」は、排卵日前後になると透明で柔らかい粘液で満たされます。この粘液を採取し、顕微鏡で見ると、シダ葉状の結晶が観察されます。
この特徴を利用した「子宮頚管粘液検査」を婦人科で受け、排卵を予測することもできます。
卵胞の大きさ
婦人科の「卵胞モニタリング」という検査では、腟内に器具を入れて超音波で卵胞の大きさを測ることで、ある程度排卵日がわかります。
卵胞の大きさは、1日あたり約2mmずつ大きくなり、排卵前日には約22mmになります(※4)。その大きさになるタイミングを予測して、数日前から性交を行うことで、妊娠の確率を高めることができます。
LHサージは排卵日を予測するひとつのヒント

今回説明したように、LHサージは排卵前に黄体形成ホルモン(LH)の分泌が急増する現象です。排卵検査薬を利用することでLHの数値を測り、排卵のタイミングを予測することができます。
妊活中や不妊治療中で、なるべく正確に排卵日を特定したいという人は、LHサージだけでなく、基礎体温や子宮頚管粘液、卵胞の大きさについてもあわせてチェックするとより確実です。検査についての詳細は、婦人科で相談してみてくださいね。