出生後から退院するまでに、生まれたばかりの赤ちゃんはいくつかの検査を受けます。その検査のひとつにビリルビン値測定があり、「高ビリルビン血症」という病気になっているかどうかを診断する目的で行われます。ビリルビンという言葉は、耳慣れないのでピンと来ない人も多いと思いますが、新生児にとって重要な検査です。今回は高ビリルビン血症について、原因や症状、診断法、治療法をご紹介します。
新生児に起こる高ビリルビン血症とは?
高ビリルビン血症とは、血液中のビリルビンという黄色い色素が分解されず、血液中での値が高くなった状態を指します。ビリルビンは、赤血球に含まれるヘモグロビンが分解されたときにできます。
本来ビリルビンは、肝臓に運ばれて便や尿と一緒に体外に排出されるのですが、量が多いときや、後で詳しく説明するような原因によって、排出がうまくいかない場合、自然と高ビリルビン血症になってしまいます。
そうすると、血液中の黄色い色素であるビリルビンが多くなり、肌や白目が黄色っぽくなる「黄疸」という症状が現れます。
新生児が高ビリルビン血症になる原因は?
肺が使えない胎児はより多くの酸素を運ぶために、血液中の赤血球の数が大人に比べて多いうえ、大人の赤血球とは少し異なる特性を持っています。
しかし、出生後に肺を使って呼吸を始めると、胎児特有の赤血球から大人の赤血球に変化するため、たくさんあった赤血球は必要がなくなり、徐々に分解されます。
このときに大量のビリルビンが生成されますが、新生児の肝臓は未熟なため、大量のビリルビンを効率的に処理できず、一時的にビリルビン値が高くなってしまうのです。高ビリルビン血症は、この生理的な原因で起こることがほとんどです。
生理的な原因以外では、多血症や低出生体重児、感染症といった病的な原因でビリルビン値が高くなる場合があります。明らかな黄疸が強いのに治療が遅れてしまうと神経学的な後遺症が残ることがあるので、適切な治療が大切です。
新生児の高ビリルビン血症の症状は?
新生児が高ビリルビン血症になると、黄疸が出てきます。黄疸はまず顔面に現れ、ビリルビン値が上昇するにつれて、体の下の方へ広がっていきます。
血液中のビリルビン値がかなり上昇して、脳にまで影響が及ぶと、脳障害が起きる可能性があります。
高ビリルビン血症が引き起こす脳障害のことを核黄疸といい、新生児が核黄疸になると、嗜眠(放っておくと眠り、強い刺激を与えないと目覚めない状態)やけいれん、黒目が下まぶたに入り込む落葉現象、母乳をあまり飲まなくなる、目があわなくなるなどの症状を見せます。
核黄疸がさらに進行すると、神経過敏や筋肉硬直、ひきつけ、発熱といった症状が現れます(※1)。核黄疸の疑いがあるときは、すぐに病院を受診してください。
新生児の高ビリルビン血症の診断方法は?
高ビリルビン血症の診断は、一般的には生後4~5日までに、光線による測定あるいは血液で判断されます。
生後間もないうちに、新生児の黄疸レベルをチェックすることが大切なので、多くは退院前に新生児のビリルビン値測定が行われます。
新生児の高ビリルビン血症の治療法は?光線療法ってなに?
高ビリルビン血症の症状が軽度であれば、特別な治療を行う必要はありません。頻繁に授乳を行い排便を促せば、ビリルビン値は生後4~5日をピークに下がっていきます。
症状が中程度であれば、青白色の人工的な光を当てる光線療法が行われます。ビリルビンは光をあてると、肝臓と腎臓によって排出されやすくなる形態に変わるという性質を持っているため(※1)、光を赤ちゃんに浴びせれば、ビリルビン値を下げることができるのです。
光線療法では、赤ちゃんを裸にして遮光用のアイマスクをつけ、保育器の中でビリルビン値を下げるための蛍光灯の光を浴びせます。
光線療法でも症状が改善されないときは、抗体が多く含まれる「ガンマグロブリン」の投与や、体中の血を取り替える交換輸血が、NICUで行われます。
新生児が高ビリルビン血症になっても落ち着いて対処を
生理的な黄疸は、ほとんどの新生児がなるものなので、赤ちゃんの黄疸が出たからといって心配しすぎないでください。
赤ちゃんがぐったりしていることが多くなった、母乳やミルクをあまり飲まなくなったなどの症状が現れ、核黄疸の可能性があるときは、すぐに医師に診てもらいましょう。新生児の体に起こる変化に落ち着いて対処するためにも、日頃から赤ちゃんの様子を観察する習慣をつけていけるといいですね。