予定日より早く生まれた未熟児の赤ちゃんは、臓器の成長が不十分なため、病気になるリスクが高くなります。眼球の成長が未熟であることが原因で起こる「未熟児網膜症」もそのひとつ。今回は、失明の可能性もある未熟児網膜症について、原因や症状、治療法、予後に後遺症が残るかをご紹介します。
未熟児網膜症とは?
赤ちゃんの眼は、妊娠3週目頃から形成され始め、7週目頃には眼球の形がほぼ完成します。そして、光の刺激を脳に伝える網膜や視神経も同時期に作られますが、網膜に栄養を送る血管は妊娠16~17週以降に発達し始め、妊娠36週頃に完成します。
赤ちゃんがママのお腹にいる期間が短いと、網膜の血管が完成する前に生まれるため、網膜の血管の成長は途中で止まってしまいます。途中で成長が止まった血管は枝分かれしたり、新たな血管ができたりと異常な発育をする可能性があり、その結果、網膜剥離を起こして視力の低下や失明を引き起こしてしまうことも。
この病気のことを、未熟児網膜症といいます。1,500グラム未満で生まれた赤ちゃんの約10%が発症し、妊娠28週未満で生まれた赤ちゃんの発症率は50%以上の発症とされております(※1)。
未熟児網膜症の症状は?
未熟児網膜症は、進行の仕方で2種類に分類されます。徐々に進行する「Ⅰ型」と一気に進行する「Ⅱ型」です。産まれてから検査をするまでは、どちらのタイプかは判断できません。
Ⅰ型
症状の進行はゆっくりで、自然に治る子供もいます。症状の進行具合によって5段階に分けて、治療の必要性を判断します。
2段階目までは自然治癒の可能性があるので経過観察になりますが、3段階目に入ると網膜剥離の恐れがあるため、治療が検討されます。治療は、基本的にレーザー治療(網膜光凝固術)を行います。
もし4~5段階目になってしまうと、網膜剥離を起こしてしまっているため、強膜輪状締結術や硝子体手術といった手術を行います。
Ⅱ型
急激に症状が進行し、網膜剥離を引き起こして失明する可能性が高いタイプです。放置しておくと危険なため、Ⅱ型と診断されたらすぐに治療が行われます。赤ちゃんがお腹にいる期間が短いとなりやすく、出生体重が低ければ低いほどⅡ型に該当する確率が高くなります。
未熟児網膜症の検査方法は?
未熟児網膜症の診断には、眼底検査が行われます。眼底検査とは、特別な器具を用いて眼球の奥にある血管、網膜、視神経を調べる検査のことです。
眼底検査によって、未熟児網膜症の有無や進行具合が確認できます。一般的に数分で終わり、痛みもありません。未熟児網膜症のⅠ型1段階目だと診断された場合は、定期的にこの検査を受けることになります。
未熟児網膜症の治療法は?
治療が必要とされた場合、Ⅰ型でもⅡ型でも、まずはレーザー治療(網膜光凝固術)を行います。血管が異常な成長をすると網膜剥離を起こす可能性が高まるので、血管が伸びていない部分の網膜をレーザーで焼いてしまうのです。
1回で終わらず、繰り返して行うこともあります。レーザー治療でも症状が進行する場合には、強膜輪状締結術や硝子体手術を行い、眼球そのものを手術することも。
強膜輪状締結術は、眼球にベルトを巻く手術で、硝子体手術は硝子体というゼリー状の組織を切除する手術のことです。どちらとも、剝がれている網膜の部分が元に戻る効果を期待できます。
未熟児網膜症の予後と後遺症は?
未熟児網膜症になっても自然に治った場合は、視力の心配をする必要はないかもしれません。ただし、視力の程度によってはレーザー治療の検討が必要な場合もあり、視力の回復については、個人差があるので注意が必要です。
日常生活に困らない程度の視力にはなれる場合が多いですが、近視になりやすく、子供の頃から眼鏡が必要になる可能性も。網膜剥離が起こったり、網膜の中心部である黄斑にまで影響が出たりすれば、さらに重度の視力障害に至ることもあります。
また、未熟児網膜症になるぐらい赤ちゃんが早くに生まれると、ピントが合いにくい乱視や両眼の視線が合わない斜視になるリスクが生じます。
未熟児網膜症は長期的に見守っていこう
予定日よりも2ヶ月程度以上早く生まれた場合、未熟児網膜症になる可能性が高まります。もし我が子が未熟児網膜症になったら、「将来、大丈夫かな」と不安な気持ちになるかと思いますが、自然に治ることも多いので(※2)、過度に心配すぎないでください。
赤ちゃんが低体重で産まれた場合には、医師とも相談しながら、目の状態をしっかりとチェックするようにしましょう。治療を受けて症状が落ち着いたとしても、のちのち学童期に症状が悪化することもあるので、長期的に経過を見守るようにしてあげてください。