女性特有の病気の一つに「子宮頸管ポリープ」があります。痛みなどの自覚症状があまりないため、婦人科検診などで初めて発見され、驚く女性も少なくありません。今回は、子宮頸管ポリープの原因や症状のほか、切除手術や妊娠への影響などについてご説明します。
子宮頸管ポリープとは?がんの可能性もあるの?
子宮頸管ポリープとは、子宮の入り口にあたる「子宮頸管」に赤みを帯びた突起(ポリープ)ができる病気です。数ミリ~数センチほどの大きさで、1つだけできることがほとんどですが、多数のポリープが子宮頸管に現れることもあります(※1)。
子宮頸管ポリープのほとんどが良性ですが、子宮内膜ポリープや子宮筋腫(粘膜下筋腫)、ごく稀にポリープ状の悪性腫瘍(子宮頸がん・子宮体がん)の可能性もあるので、原則として切除し、細胞組織を調べる検査を行います(※2)。
子宮頸管ポリープの原因は?
細菌による子宮頸部の炎症や、女性ホルモンの変化など様々な説がありますが、子宮頸管ポリープができる原因はまだはっきりしていません。そのため、現状では予防することが難しい病気です。
妊娠中の女性や、閉経前後の40~50代の人によく見られるものの、因果関係については明らかになっていません。
子宮頸管ポリープの症状は?出血があるの?
子宮頸管ポリープの細胞は繊細なので、少しの刺激で出血しやすく、性交や運動のあとに「不正出血」が見られることが多くあります。また、ポリープができるとおりものが増え、血液が混ざって下着につくこともあります。
痛みなどの症状がほとんどないため、不正出血が少量であればさほど気にしない人もいるかもしれません。しかし、特に閉経前後になると子宮がんなどの病気が増えるので、不正出血やおりものの異常があれば、すぐに婦人科を受診してください。
子宮頸管ポリープの治療法は?切除手術とは?
子宮頸管ポリープは切除治療が基本です。ポリープを根元から切る処置となり、切除されたポリープの細胞組織を調べ、良性か悪性かを診断します。
子宮頸管ポリープの切除手術は大きさによって異なり、小さいときは鉗子などの器具で腫瘍をカットします。このとき、個人差はありますが基本的に痛みは感じないため、麻酔もなく、外来で手術を受けることもできます。
ただし、子宮頸管ポリープの茎が太い場合など難易度が高いときには、入院して、麻酔をしながらメスやはさみなどを使って切除します。
子宮頸管ポリープの切除手術の費用は?
子宮頸管ポリープの手術費用は医療機関や内容によって多少異なりますが、健康保険が適用され、自己負担額は5,000円~10,000円ほどです。
抗菌薬が処方される場合や、入院が必要になる場合はまた別途費用がかかりますので、あらかじめ病院の窓口で確認しましょう。
子宮頸管ポリープが妊娠中に見つかったらどうするの?
子宮頸管ポリープは自覚症状がないため、妊婦健診で子宮頸管ポリープが見つかることもあります。また、妊娠中は出血しやすい状態なので、子宮頸管ポリープから出血することもあり、出血の原因が流産や早産のサインなのか、すぐに診断するのが難しい場合もあります。
なお、妊娠中の子宮頸管ポリープの切除については、肯定的な考え方と否定的な考え方の両方があるため、医師とよく相談して検討することが大切です。
子宮頸管ポリープがあると、出血や細菌感染が起こるリスクがあるほか、子宮頸管が開いてしまったり、「絨毛膜羊膜炎」が起こったりする要因にもなりうるため、ポリープ切除とあわせて抗菌薬の投与を行うケースもあります(※2)。
一方で、ポリープ切除が子宮内に影響を与え、流産や破水を招くリスクがある、という報告もあることから、妊娠中の子宮頸管ポリープは悪性が疑われない限り切除しない方が良い、という考えもあります(※2)。
ポリープの悪性が疑われる場合や、強い炎症を伴って感染を起こした場合を除き、原則として、妊娠中にポリープを切除しないケースが多くあります。ポリープがある妊婦さんが出血した場合は、止血剤の内服や、安静、張り止めの服用などの投与が行われます。
妊婦健診などで子宮頸管ポリープが見つかった場合は、ポリープ切除をした方がいいかどうか、またポリープ切除に伴いどんなリスクがあるのかについて、医師に相談したうえで、治療方針を決めましょう。
子宮頸管ポリープがあっても妊娠できるの?
子宮頸管ポリープがあると必ず不妊になるというわけではありません。しかし、性交を行うたびに出血するようになると性交自体が億劫になり、その結果妊娠しづらくなるという可能性はあります。
子宮頸管ポリープのほとんどは良性ですが、何も対処しないまま放置をしていて、実は子宮筋腫や子宮頸がんだった…ということになると、病気が進行して妊娠しづらくなったり、出産するときのリスクが高くなったりする恐れがあります。定期的に婦人科検診を受け、早期発見・早期治療につなげましょう。
なお、子宮の内側にできる「子宮内膜ポリープ」は、受精卵が着床しづらくなるため、不妊につながりやすい病気です。
子宮頸管ポリープは再発しやすいの?
子宮頸管ポリープは、切除しても再発することが多い病気です(※1)。そのため、1~2年に一度は婦人科で検診を受け、子宮頸管ポリープができていないかどうかを診てもらいましょう。
なお、出血や再発を防ぐため、ポリープを焼き切るレーザー療法(焼灼切除術)や、凍結療法を行うこともあります。詳しくは担当医に聞いてみてください。
子宮頸管ポリープの切除後はどうなる?
子宮頸管ポリープの切除手術を行ってから数日間は、少量の出血が見られることがあります。手術当日の入浴は避け、腟が傷つくような行為である性交も、数日は控えるようにしましょう。
比較的短時間で済む手術なので、あまり実感がないかもしれませんが、術後しばらくは体に負担をかけないようリラックスして過ごしてくださいね。
子宮頸管ポリープは早期発見して適切に治療を
婦人科検診や妊婦健診で「子宮頸管ポリープ」と診断されると、不安になってしまうかもしれませんが、悪性(がん)である可能性は非常に低い病気です。過度に心配せず、きちんと診断を受けたうえで自分に合った治療法を検討してください。