麻疹(はしか)に妊婦は注意!妊娠中に予防接種を受けられる?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

麻疹というと子供の感染が心配されがちですが、感染力が強いため大人も注意が必要な病気です。とくに妊婦が感染すると流産や早産を引き起こすことがあるので、現在妊娠中の人は不安になるかもしれませんね。そこで今回は、麻疹に感染しないために妊娠中の女性が注意すべきこと、そして妊娠中に予防接種を打てるのかなどについて紹介します。

麻疹とは?症状は?

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麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。発症すると、発疹や咳、発熱などの症状が出ます。また、別の細菌やウイルスによる合併症を引き起こし、重症化することがあるため注意が必要な病気です。

麻疹ウイルスは空気感染や飛沫感染、接触感染によって人から人へとうつります。感染すると、10〜12日間の潜伏期間を経て発症します。

麻疹を発症すると、まず38℃前後の発熱が2〜4日続きます。同時に咳や鼻水、喉の痛み、結膜炎のような症状、頬の裏側あたりに小さな白い斑点(コプリック斑)が現れます。

熱はいったん下がりますが、半日程度で今度は39℃以上に上がります。それに伴い、耳の後ろや首などに発疹が現れ、それが次第に全身へと広がっていきます。

このほかにも合併症を伴うことがあり、肺炎や脳炎、中耳炎を発症する人もいます(※1)。

麻疹の妊婦への影響は?

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では、妊娠中に麻疹に感染すると、どんな影響があるのでしょうか?

妊娠中の女性が麻疹に感染すると、早産や自然流産、低体重時出産の可能性が高まるといわれています。そのため、麻疹は風疹や水疱瘡など同様、妊娠や出産の際に注意すべき感染症といえます。

ただし、風疹や水疱瘡などとは違い、麻疹が原因でお腹の赤ちゃんが先天的な病気や異常を持って生まれてくることはほとんどありません(※2)。

麻疹に妊婦が感染したらどうすべき?

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妊娠中に麻疹に感染してしまったら、まず医療機関に妊娠中であることを伝えて相談してください。

麻疹には特別な治療法や薬がないため、発熱や咳などを和らげるための対症療法が中心となります。

ただし、重症化した場合にはヒト免疫グロブリンという薬を注射して治療することも可能です。麻疹ウイルスに感染してから6日以内にヒト免疫グロブリンを注射すると、体内で一時的に免疫が作られます。その結果、麻疹の発症予防や症状を軽減させることが可能です。

しかし、ヒト免疫グロブリンは妊婦への安全性が保証されていないため、この薬の有効性が麻疹の危険性を上回ったときのみしか使用できません(※3)。

仮に注射したとしても、注射後5ヶ月で免疫が消えてしまうため、ヒト免疫グロブリンによる治療を受けた場合はその5ヶ月後に麻疹ワクチンの接種をしたほうがいいとされています(※2)。

なお後述するように、妊娠中は予防接種を受けられないため、いつ麻疹ワクチンを受けたらよいのかは医師に相談してください。

麻疹の予防接種は妊婦も受けられる?

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麻疹ワクチンの予防接種は、麻疹に対するもっとも有効な予防法です。ワクチンを1回接種することで約95%、2回接種すればほぼ100%の人が麻疹に対する免疫を獲得できるとされています(※1)。

しかし、妊娠がわかっている場合は、胎児に何らかの影響が生じる可能性があるため予防接種ができません。そのため、妊娠を望む女性で麻疹の抗体を持っていない場合は、妊娠前に予防接種を受けておくことがおすすめです。

ただし麻疹のワクチンを接種したあと、60日間は避妊を行う必要があるのでタイミングには注意してください(※4)。

もし妊娠していると知らずにワクチン接種をしたとしても、それを理由に中絶をする必要はないとされているので、「妊娠していると知らずにワクチンを接種してしまった」という人も、不安になりすぎる必要はありません(※5)。妊娠中にワクチンを接種したことを医師に伝え、判断を仰いでくださいね。

なお、大人になってからの麻疹のワクチンは任意接種です。費用は自己負担となり、医療機関や自治体によっても異なります(※6)。現在は、自治体によっては先天性風疹症候群の予防目的でMRワクチンを接種するので、これを利用する方法もあります。

麻疹の妊娠中にできる感染対策は?

麻疹ウイルスは感染経路が多いうえに感染力がとても強いウイルスで、マスクで予防することはできません(※7)。1人の患者がいたら12〜14人の人が感染するといわれており、感染すると90%以上の確率で発症します。

妊娠中は予防接種を受けることができないので、麻疹流行時にはなるべく外出を避けたり、人混みに近づかないようにすることが重要です(※4)。パートナーの男性が麻疹にかかり、妊婦さんにうつす可能性も考えられるので、パートナーに予防接種を受けてもらうようにしましょう。

麻疹は妊娠中・妊娠前の予防が大切

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妊娠中は感染に気をつけるべき病気が多くて不安になってしまったり、行動を制限されたりして不便に思うことも多いですよね。しかし、どれもこれも生まれてくる赤ちゃんの健康を守るために大切なこと。

もし妊娠中に麻疹の抗体を持っていないことが明らかになったのであれば、パートナーと協力しながら予防しましょう。またもし妊娠前に麻疹の抗体を持っていないことがわかったら、早めに予防接種を受けておきましょう。

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