女性の体はデリケートなので、ちょっとした体調や環境の変化で生理周期がずれることはよくあります。ただし、生理の遅れが頻繁に起こり、生理周期が長い状態が続くと「稀発(きはつ)月経」と診断され、治療が必要になることも。今回は、生理周期が長いときの対処法や、稀発月経の治療法、妊娠への影響などをご説明します。
生理周期が長いとは?どれくらい?
正常な生理周期は25~38日です。周期によって日数にずれがあるときも、この範囲のなかで6日以内のずれであれば正常な範囲とされています(※1)。
ただし、環境の変化や体調不良、ストレスなどがあると、生理周期が長くなることもあります。この場合、「生理がいつもより遅れている」と感じます。
生理の遅れが一時的なものであれば、大きな心配はいりませんが、1~2ヶ月ほど様子を見てみても生理周期が長い状態が続く場合は、原因を突き止めるためにも婦人科を受診することをおすすめします。
稀発月経とは?
「稀発月経」とは、生理周期が正常な範囲を超えて、39日以上3ヶ月未満のサイクルで繰り返される状態を指します(※1)。
さらに3ヶ月以上生理が来なくなると、「無月経」と診断されます。無月経の場合、排卵がうまく行かない排卵障害が起きていることが多いため、婦人科で血液検査などをして原因を調べる必要があります(※1)。
生理と生理のあいだの期間が39日以上空くことが何度か続いたら、できるだけ早く原因を知り、適切な治療を始めるためにも、婦人科を受診しましょう。
稀発月経の原因は?生理周期が長いと病気?
毎月の生理周期は、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモンがバランス良く分泌されることによってコントロールされています。
稀発月経のように、生理周期が長い状態が続いている場合、次のような原因によってホルモンバランスが崩れていることが主な原因であると考えられます(※1)。
過度のストレスや体重減少
生理周期を作り出しているエストロゲンとプロゲステロンは、脳の下垂体から分泌される2つのゴナドトロピン(LHとFSH)の作用によって分泌されます。
そして、ゴナドトロピンの分泌は、脳の視床下部からの指令によって調節されています。
しかし、視床下部は過度のストレスや体重減少によって負荷がかかると、自律神経や食欲中枢をコントロールできなくなるなど、機能障害を起こしてしまいます。
視床下部がうまく機能しなくなると、ホルモン分泌の指令も正しく出せなくなり、その結果、エストロゲンとプロゲステロンの分泌バランスが乱れ、稀発月経が起こることがあります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」とは、何らかの原因で卵胞の発育が妨げられてしまい、十分に発育しきっていない多くの卵胞が、排卵できないままになってしまう病気です。
この病気があると、稀発月経や無月経のほか、生理のような出血はあるものの排卵が起こらない「無排卵周期症(無排卵月経)」を引き起こすことがあります。
そのほかの病気
婦人科の検査でPCOSなどの婦人科系疾患が見つからなかった場合、まれではありますが、甲状腺機能障害や糖代謝異常、膠原病などの病気が、稀発月経の原因になっていることもあります。
稀発月経の治療法は?
稀発月経の治療をするためには、まず血液検査などでホルモン値を調べ、原因を特定することが必要になります。また、基礎体温をつけることで、排卵がきちんと起こっているかどうかを見ることもあります。
その結果、きちんと排卵していることがわかれば、特に治療を行わずに経過観察になることもあります。
排卵がうまく起こっていなかったり、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」があるとわかったりした場合には、低用量ピル(経口避妊薬)を服用し、生理を規則的に起こさせることで、生理周期を人工的に整える治療を行います。
ただし、ピルを飲んでいるあいだは妊娠しないため、妊娠を希望する場合にはクロミッドなどの排卵誘発剤で排卵を促し、稀発月経の改善を目指すことになります。
生理周期が長いときの対処法は?
前述のとおり、稀発月経が起きる原因によっては治療が必要なこともあります。
しかし、生理周期が長いのが「過度なストレスや体重減少」による一時的なものであると考えられる場合、生活習慣の見直しによって改善できることもあります。
体調が悪いときは無理せずゆっくり休むなど、身体的・精神的ストレスがかかりすぎないよう、生活リズムを調整しましょう。適度な運動や十分な睡眠、こまめなストレス発散を心がけることで、少しずつホルモンバランスを整えることが大切です。
また、厳しい食事制限をしたり、短期間で急激に体重を落としたりするようなダイエットは避けましょう。栄養バランスの取れた食事と、適度な運動を中心に、無理なく体型を維持することが大切です。
生理周期が長いと妊娠に影響がある?
稀発月経の状態でも、規則的に排卵が起こっているのであれば、妊娠・出産することは可能です。
ただし、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など排卵がうまく起こっていない場合は、排卵障害を治さない限りは妊娠しにくくなってしまいます。先述のとおり、排卵誘発剤などを服用し、排卵を促して生理周期を整えることが大切です。
なお、3ヶ月以上生理がこない「無月経」の状態になり、そのまま放置してしまうと、卵巣の機能が低下して40歳未満で閉経を迎える「早発閉経」につながる恐れもあります(※2)。
閉経してしまうと、ずっと排卵が起こらなくなるので、将来的に妊娠することが難しくなります。また、骨粗鬆症や動脈硬化症など、閉経後の症状にも悩まされることが多くなります。
生理の遅れが数ヶ月続くときには、無月経や早発閉経になる前に、できるだけ早く婦人科を受診して適切な対処をしてくださいね。
生理周期が長いときは、放っておかないで
毎月の生理を煩わしく感じる女性も多いかもしれませんが、生理周期が長いのを「あまり生理がこなくて楽だから」とそのままにしておくと、将来の妊娠・出産が難しくなってしまうこともあります。婦人科で検査を受けて、原因にあった治療をなるべく早く始めましょう。
生理周期に異常がないか、排卵がきちんと起きているかを把握するためには、基礎体温を日々記録することもおすすめします。自分の体のリズムを知って、健康的な生活を送るのに役立ててみてくださいね。