おねしょの治療に薬は必要?薬の種類や効果的な治療方法とは?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

おねしょがなかなか治らない状態が続くと、「夜尿症」といって、治療の対象になることがあります。主に「5歳以上の子供が、3ヶ月以上連続で週に2回おねしょをする」といった場合に診断されますが(※1)、どのような治療をするのでしょうか。今回は、おねしょの効果的な治療方法をはじめ、治療に薬が必要なのか、使用する場合の薬の種類などをご紹介します。

おねしょが続く原因は?

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おねしょには、2つのタイプが存在します。

ひとつは、「一次性夜尿症」といって、日中の排尿コントロールができても、夜だけコントロールできない状態。もうひとつは、「二次性夜尿症」といって、一度おねしょが見られなくなったのに、再度おねしょが続くようになった状態です。

以下に、それぞれの主な原因をご紹介します(※1,2)。

一次性夜尿症の主な原因

・ 膀胱の容量が小さい
・ 過活動膀胱(尿が溜まると膀胱が勝手に収縮する)
・ 夜に抗利尿ホルモンが十分に分泌されず尿量が増える
・ 夜尿症の家族がいる(遺伝)
・ 便秘

二次性夜尿症の主な原因

・ 心理的要因(環境の変化・親の離婚・虐待など)

また、詳しく因果関係はわかっていませんが、アデノイド肥大や肥満などによって「睡眠時無呼吸症候群」がある子供は、明らかにおねしょの頻度が高いことがわかっています。

おねしょに治療は必要?

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幼児のおねしょは、成長過程で起こる生理的な現象で、悪いことではありません。夜のおしっこのコツを掴むのは、日中に比べて難しいこともあり、6歳くらいまでおねしょが続くこともあります。

ただし、冒頭で述べたように、「5歳以上の小児に3ヶ月以上連続で週に少なくとも2回、夜間に衣類やベッドが濡れるほどの量の排尿をすることがある」という場合は、夜尿症と診断され、治療の対象となることもあります(※1)。

夜尿症でも、必ずしも治療が必要というわけではなく、10歳くらいまでに自然に治っていくことがほとんどです。成人する前には、ほぼ全員が治るともいわれています。

治療の対象となるのは、夜尿症によって生活に支障をきたしたり、子供自身が精神的な負担を感じたりする場合です。

自己判断が難しいため、小学校に入ってもおねしょがなかなか治らない場合は、一度小児科や泌尿器科で診てもらうのをおすすめします。

おねしょの治療内容は?薬を使う?

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おねしょの治療には、主に「生活指導」「行動療法」「薬物療法」といった方法があります。まずは生活指導や行動療法を行い、それでも改善されなければ、原因を調べて薬物治療も行います。

病気などが原因にある場合は、その原因にあわせた治療を行うケースもあります。

「生活指導」「行動療法」「薬物療法」「原因に合わせた治療」の具体的な内容は、下記のとおりです(※1,2)。

生活指導の主な内容

生活指導は、子供の性格などにあわせ、下記のような内容を組み合わせて行います。

・ 就寝3~3時間半前の夕食では、水分を200ml以上摂らない
・ 睡眠前におしっこをし、膀胱を空にする
・ 子供自身がおねしょをしない決意をする
・ トイレトレーニンググッズなどを使用して、動機づけする
・ 午後4時以降に砂糖やカフェインを過剰摂取しない
・ 味の濃い食品を食べない
・ 入浴でしっかり体を温める
・ 冬は布団をしっかりかけて、冷えないようにする

行動療法の主な内容

行動療法では、主に「アラーム療法」と呼ばれる治療を行います。

これは、睡眠中の子供の下着や体、ベッドの上に、おねしょをしたら鳴るシート状のアラームを敷いて行います。おねしょをしたら、子供が目を覚ますようにすることが目的です。

アラーム療法を8~12週間行うと、おねしょを防ぐ成功率が75~95%になるといわれています。

薬物投与の主な内容

夜間の尿量が多い場合は、尿量を調節する「抗利尿ホルモン」の内服薬を投与します。急な尿意を催す「過活動膀胱」が見られる場合は、膀胱の過剰な収縮を抑える「抗コリン薬」を投与して治療を行うこともあります。

過活動膀胱の場合、抗コリン薬の投与とともに、アラーム療法を併用するのが効果的です。

原因に合わせた治療

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

睡眠障害の1つである「睡眠時無呼吸症候群」がおねしょに関与している疑いがある場合、睡眠時無呼吸症候群の治療を行います。

例えば、睡眠時無呼吸症候群の原因となりやすい「アデノイド(咽頭扁桃)」の肥大がみられるときは、耳鼻咽喉科でアデノイド切除を行うことで、おねしょの改善が期待できます(※1)。

便秘が原因の場合

便秘が原因で夜尿症を引き起こすことも考えられていますが、はっきりとしたメカニズムは解明されていません。

仮説として、便の塊が膀胱後壁を圧迫し、排尿筋過活動を誘発することや、骨盤底筋群を収縮させて「排尿筋尿道括約筋協調不全」という病気を引き起こすなどが上げられます(※2)。

この場合は、日常生活のなかで排便を促したり、骨盤底筋を適度に緩める運動をしたりすることで、便秘とともにおねしょが改善されることもあります。

おねしょの治療に使う薬の種類や注意点は?

おねしょの治療で使う薬は、主に、尿量を調節するものと、膀胱の働きを助けるものです。西洋薬だけでなく、漢方薬が使用されることもあります。

どの薬も、使用前に医師から副作用などのリスクを聞き、よく理解してから使いましょう。

ここでは、おねしょに使用される西洋薬と漢方薬について詳しくご紹介します。

おねしょに使われる西洋薬

症状や子供の状態に応じて、下記のような西洋薬が使用されることもあります(※1)。

デスモプレシン酢酸塩

夜間の尿量を調節する「抗利尿ホルモン」に似た作用を持つ薬で、夜間の尿産量を少なくしてくれます。口の中で溶ける錠剤で、毎日寝る前に120~240μgを服用します。

デスモプレシン酢酸塩を使った40%の子供が効果を示しており、3~6ヶ月程続けて経過が良ければ、少しずつ薬を使用しないようにしていきます。

効果が見られないときは量を増やし、さらに長期で取り組む必要があります。

デスモプレシン酢酸塩を使った場合は、水中毒のリスクがあるので、投与の3時間前後の水分を控えましょう。

抗コリン剤

膀胱の働きをサポートする成分を含む薬です。「オキシブチン5mg」、または「トルテロジン2mg」などの薬名で処方されます。

寝る前に服用することで、膀胱痙攣を抑えたり、膀胱を大きくしたりするのに有効です。効果が見られないときは、2倍の量まで増量ができるので、経過をみながら量を調節していきます。

おねしょに使われる漢方薬

おねしょに効果的な漢方薬は、下記のとおりです(※3)。

漢方薬はドラッグストアなどでも購入できますが、体質によって合うものと、合わないものがあるので、自己判断せず、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

頻尿・多尿のほか、冷え・便秘・下痢などの症状の改善が見込めます。

比較的体力がなく、疲れやすい体質の子供に向いています。

黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)

小建中湯に、体のエネルギーを補う作用や止汗の作用がある生薬「黄耆(オウギ)」を加えた漢方で、夜尿症・寝汗・腹痛・発疹などの症状の改善が見込めます。

体力がなく、疲れやすい体質の子供に向いています。

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)

夜尿量・頻尿・膀胱神経症のほか、腰痛や腰冷感などの症状の改善が見込めます。

消化器系を温める作用があり、下半身が冷えやすく、尿量が多い体質の子供に向いています。

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)

夜尿症・糖尿病・風邪などの熱性疾患の症状の改善が見込めます。

口の渇きに作用するため、むやみに水を飲んでしまうような子供に効果的です。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

精神不安が原因の夜尿症・子供の夜驚症・不眠などの症状の改善が見込めます。

鎮静効果が強い牡蛎を加えた漢方なので、イライラなどの精神神経症状の緩和も期待できます。

おねしょの治療は薬の前に生活習慣の改善を

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子供がおねしょをすると、「夜中の片付けが大変」「昨日も洗濯したばかりなのに」と、ついイライラしてしまうこともありますよね。

しかし、子供を怒ることは逆効果。「おねしょをしてはいけない」というプレッシャーから、逆におねしょをしてしまうこともあるので、ママやパパは慎重に、優しく接してあげてください。

普段の生活習慣を見直しつつ、必要に応じて薬を使いながら、家族で協力して治療に取り組んでいきましょう。

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