他の勉強は問題ないのに、字を読むことや文字を覚えることだけができない…。もし子供がそんな症状をもっていたら、ディスレクシア(読字障害)の可能性があります。聞きなれない言葉かもしれませんが、ディスレクシアとは何が原因で、どんな症状があるのか、またどう対処すればいいのかについてご説明します。
ディスレクシア(読字障害)とは?
ディスレクシア(dyslexia)とは、日本語では読字障害と表現します。学習障害のひとつで、必要な知能や意欲があるのに、思う通りに文章を読むことができない状態のことをいいます。
ディスレクシアは、学習障害(LD:learning disability)の中で最もよく見られる症状で、学習障害と診断される子供の80%以上がディスレクシアの症状を持つといわれます(※1)。
勘違いされがちですが、学習障害=知的障害ではありません。学習障害は発達障害のひとつで、「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」の能力のうち、特定のものだけが習得できなかったり、うまく使えない状態のことをいいます。
ディスレクシアには、以下のような特徴があります。
● ひとつひとつの単語を読み取ったり理解するのが難しい
● 口ごもったり発音を間違えたりする
● 文章を音読するときスムーズに読めない
● アラビア数字と読み方が一致しない(例:「7」を「なな」と理解できない)
知的発達に遅れはないものの、「読む」または「書く」が著しく困難な子供の割合は、日本の公立小中学校の通常学級で2.4%という調査結果があります(※2)。
つまり平均すると、クラスに1人くらいの割合でディスレクシアの可能性がある子供がいるということになります。
またアメリカなどではその割合はもっと高く、医療施設や学校での読字障害の割合は5~10%といわれています(※1)。
ディスレクシアの原因は?
ディスレクシアは 後天的になるものではなく、先天的なものです。ディスレクシアになる原因は、聴覚や視覚に関わる器官のどこかに障害があるものとする説もありますが、現時点ではまだ解明されていません。
ただし読字障害のある親や兄弟を持つ子供が、読字障害である可能性が高いということはわかっています(※1)。
ディスレクシアはどう診断する?症状は?
前述したとおり、学習障害の特徴は、特定の分野だけが著しく苦手であることです。ディスレクシアは、読むことができない状態のことで、聞く・計算する・推論するといったほかの能力には問題はありません。
ただし、読むことが難しいだけでなく、それに起因して話す・書くという分野においても困難があることもあります。
ディスレクシアだけの診断チェックシートはありませんが、学習障害全体の調査票が作成されているので、その中で「読む」の部分に限って以下にご紹介します。
<読む>
● 平仮名や片仮名などの文字を読む際に、たどり読みになる。
● 頻繁に使う語でも、間違えて読む。(例:「せいかつ」→「せかつ」、「とおまわり」→「とおわまり」と読む)
● 促音や拗音などの特殊音節を読み間違える。(例:「がっこう」を「がこう」、「せんしゅう」を「せんしょう」と読み間違える)
● 初めて出てきた語や、普段あまり使わない語などを読み間違える。
● 文中の語句や行を抜かしたり、または繰り返して読む。
● 適切でない(意味の通らない)ところで区切って読む。
● 音読が遅い。
● 音読する際、形態的に似た文字を読み間違える。(例:「き」を「さ」、「入」を「人」と読み間違える)
● 音読する際、助詞を読み間違える。(例:「学校へ行きました」を「学校を行きました」と読み間違える)
● 勝手読みがある。(例:「いきました」を「いました」と読む)
● 漢字がなかなか覚えられない。
● 意味的に関連のある漢字と読み誤る。(例:町を「むら」、入るを「でる」と読む)
● 黙読が苦手である。
● 音読はできても、内容を理解していないことがある。
引用:国立特別支援教育総合研究所「学習障害調査票の作成と予備調査」(※3)
上記のチェックリストだけでディスレクシアかどうかがわかるわけではありませんが、当てはまる項目が多かったらその可能性を疑った方が良いかもしれません。
ただし学校や幼稚園などで勉強を始めなければわからない項目が多く、上記のリストでは未就学児がディスレクシアかどうかの判定は難しいのが実情です。
しかし幼少期でも、「聞いたことは理解できるけれど文字を覚えて書くのは苦手」「本を読んでもらうのは好きだけど自分で声に出して読むのは嫌がる」といった行動があれば、読字障害の可能性があるといえます。
気になる場合は、各市町村の窓口や発達障害者支援センターに相談してみるといいでしょう。
ディスレクシアと診断されたら?
ディスレクシアに限らず学習障害は、風邪のように治る病気ではなく、その子ならではの特性である、という理解が必要になります。
ママやパパは、子供がどうやって生涯を通して障害に適応するか、という見通しをして、学校や医師とともに取り組むことが大切です。
読みの正確性を高める具体的な手法としては、未就学児や小学生の段階では、発音と文字との連動性をできるだけ細かく伝えることなどが有効とされています。
ディスレクシアの子供を学校でどう支援する?
学習障害があっても多くの子供は通常の学級に在籍していますが、学校や先生が子供の読字障害の特徴を理解して指導してもらうことが必要です(※4)。
学校では板書の仕方やノートの取り方など、子供の特徴に応じて工夫をすることで、苦手な部分をカバーすることが可能になります。
またスペルチェック機能付きのノートパソコンや、録音図書(本の内容を音読して録音したもの)を使うことも有効とされています(※1)。
ディスレクシア(読字障害)にはきちんと向き合うことが大切
読む能力だけが欠如しているのが、ディスレクシアの特徴です。逆にいえば、それ以外の能力はしっかりと持っています。
できるだけ小さなころからディスレクシアときちんと向き合って対処すれば、欠如した能力にこだわらず、他にできる分野を伸ばしてあげることも十分可能です。
幼少期にディスレクシアと診断を受けても、大人になり医学、法律、報道や執筆などの職業において成功している人もいます(※1)。不安になりすぎることなく向き合うことが大切ですよ。