一般的に、流産を2~3回繰り返すようであれば、何らかの原因がある可能性もあるため、不育症検査を勧められることがあります。原因が特定できない不育症も多いですが、検査と治療を進めることで出産できる女性も多いので、まずは検査を受けてみるのも良いかもしれません。今回は、不育症検査の内容や項目、費用、検査を受けるタイミングについてご説明します。
不育症でも出産できる?
日本産科婦人科学会の定義によると、不育症とは「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、妊娠は成立するが流産や早産を繰り返して生児を得られない状態」をいいます(※1)。
流産を2回繰り返すことを「反復流産」、3回以上繰り返すことを「習慣流産」と呼び、不育症とほぼ同じ意味で使われます。ただし、不育症は流産だけではなく、妊娠22週以降の「死産」や生後1週間以内の「新生児死亡」も含み、より広い意味で使われることもあります(※1)。
不育症の場合、何度か妊娠は成立しているので、妊娠が難しい「不妊症」とは分けて考えられますが、不妊症と不育症をあわせ持っている女性も少なくありません(※2)。
厚生労働省では不育症研究を進めており、治療が必要になることはありますが、不育症の女性でも80%以上の人が出産できるとされています(※2)。
不育症検査でわかるリスク因子とは?
不育症の原因は様々ありますが、厚生労働省不育症班の研究によると、原因不明であるケースが65.3%と報告されています(※2)。このケースの大半は、胎児の染色体異常が連続で起こり、偶然が重なったことで起こっている不育症だと考えられています。
一方不妊症検査を行うことで原因が明らかになったケースでは、次のようなものが挙げられます(※2)。
不育症のリスク因子
● 子宮の形の異常
● 甲状腺の異常
● 夫婦どちらか、もしくは両方の染色体異常
● 免疫異常(抗リン脂質抗体症候群など)
また、特にリスク因子がなくても、流産を複数回繰り返した女性は、「自分が悪いのではないか」といった精神的ストレスを感じてしまい、それが流産や死産の要因になることがあります(※2)。
厚生労働省の研究班によると、リスク因子がある場合もない場合も、産婦人科の医師などによるカウンセリングを受けた方がストレスが改善し、次の妊娠率が高いという報告があります(※2)。
妊娠してもなかなか出産に至らず悩んでいる場合は、まず不育症のカウンセリングや検査だけでも受けてみることで、良い結果を得られることもあるかもしれません。
不育症検査の内容や項目は?
産婦人科で問診を受けたあと、状況に応じて次のような不育症検査が実施されます(※2)。
子宮形態検査
● 子宮卵管造影検査
● 超音波検査
● 子宮鏡検査
● 骨盤MRI検査
これらの検査で生まれつき子宮の形に異常があるとわかった場合、子宮鏡手術などが必要となることもあります。
血液検査
● 内分泌検査(甲状腺のホルモン検査)
● 糖尿病検査
● 抗リン脂質抗体検査
● 夫婦染色体検査
血液検査で甲状腺機能の異常や糖尿病リスクがあると診断された場合、治療によって体調をコントロールし、正常になってから妊娠することが望ましいとされます。
また、夫婦どちらかに染色体異常が見つかった場合は、専門医による十分な遺伝カウンセリングを受けたうえで、今後の治療方針について検討することになります。
不育症検査の費用は?
前述のとおり、不育症検査には様々な種類があります。抗リン脂質抗体検査のうち一部、保険が適用されないものもありますが、基本的にはどの検査も保険適用の範囲内です(※2)。
検査費用は、医療機関や検査項目によって幅がありますが、例として子宮卵管造影検査が約4,000円、染色体検査以外の血液検査は合わせて約2~3万円、染色体検査は夫婦2人で約4~5万円が相場のようです。
どの検査を受けるべきかは人によって異なるので、費用も含めてかかりつけの医師に相談しましょう。
不育症検査のタイミングや時期はいつ?
流産を2回以上繰り返した場合、産婦人科の医師から不育症の検査をすすめられることがあります。
ただし、流産後に不育症検査を行う場合、ホルモン値がある程度落ち着くまで待つ必要があります。
また、女性が受ける不育症検査には、子宮卵管造影検査など、生理周期のなかで受ける時期が決まっているものもあります。
そのため、詳しい検査時期については、産後に生理が再開してから医師に相談してみましょう。
不育症検査の結果に応じた対策を
不育症検査の結果、流産を繰り返す原因が特定できた場合、それに合わせた治療を受けることで、出産できるようになることもあります。
特に年齢が高い場合、できるだけ早く対策を講じた方が妊娠・出産率が高まるので、検査についてかかりつけの産婦人科で相談してみると良いかもしれません。
ただし不育症の多くは、胎児の染色体異常を偶然繰り返しただけのケースで、両親ともに特にリスク因子がないこともわかっています。検査で「原因不明」という結果が出た場合、余計に不安になってしまう人もいるかもしれませんが、「特に心配する要素はないということなんだな」と考え、できるだけ落ち着いて次の妊娠に臨めるといいですね。