筋腫分娩とは?原因や症状、治療法は?手術が必要なの?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

筋腫分娩という病名を聞いたことはありますか?「分娩」という名前がついていますが、「出産」とは関係のない婦人科系疾患です。出血や痛みなどの症状が現れるため、早く対処したい病気の一つです。今回は筋腫分娩の原因や症状、治療法についてご説明します。

筋腫分娩とは?

本 ノート

筋腫分娩とは子宮筋腫の一つで、子宮の内側にできる「粘膜下筋腫」が大きくなって茎のようなものが伸び、筋腫の重みで子宮頸管や腟の中にまで出てしまった状態を指します。子宮の外に出ている様子が出産のように見えるため、「筋腫分娩」と呼ばれています。

筋腫分娩を放置しておくと、筋腫がどんどん突出して大きくなるだけでなく、出血や腹痛などが見られることがあります。そのため比較的小さい筋腫でも手術を行うケースが多い疾患です。

筋腫分娩の原因は?

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子宮筋腫が発症し、筋腫分娩の状態になる原因は、まだはっきりと解明されていません。

しかし、初潮前の女性には子宮筋腫は見られず、また、閉経後には筋腫が小さくなることから、「エストロゲン」という女性ホルモンが子宮筋腫の発育に関係しているのではないか、と考えられています(※1)。

筋腫分娩の症状は?

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筋腫が大きくなると、子宮の中が引き伸ばされて広くなります。そのため、月経時の出血が過剰になる「過多月経」や、月経期間が長くなる「過長月経」をきたしやすく、それが原因でひどい貧血になることもあります(※1)。

筋腫がさらに大きくなると、子宮の入口を圧迫し、陣痛のような鈍い痛みを感じることもあります。また、人によってはおりものが増えることもあり、感染や壊死が起こるとおりものに膿(うみ)や血が混ざることもあります(※1)。

子宮筋腫があっても自然妊娠できるケースはあります。ただし、腟内に筋腫が出ている筋腫分娩の場合、性交渉がしにくくなったり、精子が子宮内にスムーズに侵入されなくなったりして、妊娠の妨げになることがあります。

一般的に、子宮筋腫があると流産・早産リスクがやや高まるということがわかっています(※1)。妊娠を目指している方は放置せずに、医師と治療の相談をしてください。

筋腫分娩の診断方法は?

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筋腫分娩を含む「粘膜下筋腫」の場合、内診では子宮が大きくなっていること以外の所見がないことが多く、いくつかの検査を組み合わせて診断する必要があります。

筋腫分娩の場合は、「腟鏡診(ちつきょうしん)」という方法が行われ、腟に器具を挿入して子宮頸管から筋腫が突出しているかどうかを目視します。また、CTやMRI、子宮卵管造影法、子宮鏡検査などの検査は、粘膜下筋腫の診断に有効とされています(※1)。

検査は入院せずに1日で済むことがほとんどですが、詳しい結果が出るまでに数日かかることもあります。

筋腫分娩の治療法は?

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子宮筋腫そのものは良性の腫瘍なので、必ず手術で摘出しなければいけないわけではありません。症状や大きさなどによって経過観察か手術かを決めます。

患者に自覚症状がなく、筋腫が小さい場合は、特に治療する必要はありません。しかし、数ヶ月ごとに必ず検診を受け、筋腫が大きくなっていないか、貧血などの症状がないかなどをチェックしてもらいましょう(※1)。

筋腫分娩の手術方法は?

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筋腫が急速に大きくなっている、悪性の疑いがある、過多月経などの症状が重い、筋腫が不妊の原因と考えられる、といった場合には、手術による治療を検討します(※1)。

筋腫分娩の手術方法には主に次の2種類があります。それぞれ、今後の妊娠希望なども含めて医師と相談の上、慎重に選択することになります。

1. 子宮筋腫核出術

筋腫だけを取り除く方法で、手術後にも妊娠が可能になります。しかし、再発の可能性が残ることや手術中の出血量が多くなる危険性もあります。

筋腫分娩の場合、腟から筋腫を摘出する「腟式子宮筋腫核出術」や、腟から子宮鏡を入れて核出する「子宮鏡下手術」が行われます。

2. 子宮全摘出術

筋腫が大きく、部分的に取り除くことができないときには、「子宮全摘出術」により子宮ごと取り出さなければならないこともあります。

再発の心配はなくなりますが、自然妊娠できなくなるため、妊娠の希望があるかどうかが手術選択の際に重要になります。

筋腫分娩の治療法に、薬物療法もあるの?

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子宮筋腫の成長を抑えたい場合には薬物療法も検討されます。たとえば合成ホルモン剤を使ってエストロゲンの分泌を抑え、閉経に似た状態をつくり出す「偽閉経療法(GnRHアゴニスト)」が取られることがあります。

しかし、筋腫分娩の場合は、基本的に薬物療法は行われません。主な治療法は手術だと考えてください。

筋腫分娩の症状があれば、すぐに病院へ

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筋腫分娩は、重症の貧血や感染症を起こすリスクがあるため、早期発見・早期治療が重要です。月経血や不正出血の量が増えてきた、下腹部がうずくように痛い、といった自覚症状が出たら、我慢せずにすぐ婦人科医に相談してください。

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