「いつの間にか陰部にしこりができていたけれど、これって大丈夫?」デリケートな部分なだけに、周りに相談しづらくて不安ですよね。病院に行くのは勇気がいるかもしれませんが、治療が必要な場合もあるので、放置するのは良くありません。今回は、女性の陰部にできるしこりについて、考えられる原因や対処法をご説明します。
陰部はしこりができやすいの?
女性の外陰部はヒダや重なった部分が多くケアが難しいうえに、生理、汗、尿や性行為の際の刺激などにより、小さな傷でも細菌感染を起こしやすい状態にあります。そのため、しこりができる女性も多いようです。
しこりの多くは良性のできものですが、なかには悪性腫瘍(がん)もあるので、デリケートゾーンの異変に気づいたら早めに病院で診てもらいましょう。
陰部のしこりの原因は?
陰部にできるしこりは、主に次の5つの原因が考えられます。
脂肪腫
陰部の外側にできるしこりの中で、最も多いのが脂肪腫です。痛みやかゆみはなく、押すとやわらかいという特徴があります。
40~50代で、肥満の女性に多い傾向がありますが、誰にでもできる可能性はあります(※1)。自然になくなることが多いので、多くの場合は経過観察となりますが、取り除きたい場合は外科手術によって除去します。
バルトリン腺嚢胞(のうほう)
「バルトリン腺」は、外陰部の腟の入口近くにある分泌腺で、性的に興奮したときに分泌液を出すことで性交をスムーズにする働きがあります。
このバルトリン腺が詰まってしまうと、しこりになります。歩いたり性交渉したりすると少し痛むこともありますが、しこりを押してもあまり痛みを感じません(※2)。
ただし、細菌感染が起きると、大きく腫れたり、強い痛みが生じたりすることがあります。
尖圭(せんけい)コンジローマ
性交渉を通じてヒトパピローマウイルスが感染する性感染症です。潜伏期間が3週間~3ヶ月と長いので、感染源が特定しづらく、広がりやすい傾向にあります(※2)。
先の尖った「いぼ」が外陰部や肛門の周りにできます。痛みやかゆみを感じる人もいますが、基本的に無自覚です。自然治癒は難しく、治っても再発する可能性もあります。
外陰潰瘍(かいよう)
性器ヘルペスなどが原因で、外陰部に小豆~大豆くらいの大きさの潰瘍ができることがあります。体調が悪いときに発症し、何度も再発を繰り返すことがあるので注意が必要です。
急性の場合は、最初のうちはかゆみと腫れだけで、痛みはあまりありません。しかし、潰瘍がひどくなると激痛が走り、排泄や歩行に支障をきたすこともあります。
外陰がん
外陰がんは、婦人科のがんの中では稀な病気で、外陰部に発生します。直接的な原因はわかっていませんが、ヒトパピローマウイルスの感染などが発生リスクとして考えられています(※3)。
初期症状として、外陰部の痛みやかゆみ、ただれのほか、おりものや不正出血が見られます。腫瘍が大きくなってくると、しこりに気づく人もいます。
他のがんと同じく、早期発見が重要なので、気になる症状があればすぐ診察を受けましょう。
陰部にしこりがあるときは、何科を受診したらいい?
陰部のしこり、痛みやかゆみに気づいたら、まずは婦人科を受診しましょう。
ただの脂肪腫なのか、それとも何らかの細菌に感染しているのか、がんの可能性があるのか、詳しい検査をして突き止めることで、早期治療につなげましょう。
市販の塗り薬を使用していても治らないときは、症状が悪化する恐れもあるので、自己判断での放置をせずに、早めに婦人科を受診しましょう。
陰部のしこりはどうやって治療するの?
陰部のしこりが脂肪腫と診断されれば、基本的には治療の必要はありません。その他のしこりについては、次のとおり治療方法が異なります(※2,3)。
バルトリン腺嚢胞
原因菌に合わせて、抗菌薬で治療します。嚢胞を切開して膿を出す処置を行うこともあります。
尖圭コンジローマ
基本的に、電気メスやレーザーでいぼを取り除きます。症状によっては塗り薬を使うこともありますが、注意するべき副作用もあるので、専門医のアドバイスが必要です。
外陰潰瘍
性器ヘルペスが原因の場合、抗ウイルス薬を使います。対症療法として、鎮痛薬や消炎剤、ステロイドを処方されることもあります。
外陰がん
外陰がんは、進行程度(ステージ)に合わせて手術や放射線療法、抗がん剤治療を行います。がんを切除したあと、形成外科手術で人工の外陰や腟を作ることも可能です。
陰部のしこりを再発させないためには?
前述のとおり、陰部のしこりには様々な種類があり、予防できないこともあります。しかし、細菌やウイルス感染を防ぎ、再発させないために普段からできることもいくつかあります。
まず、陰部を清潔に保つことが基本です。生理中はナプキンをこまめに交換し、性交渉を終えた後はデリケートゾーンをシャワーで洗い流すと良いでしょう。ただし、トイレのビデなどで腟の中を洗いすぎると逆効果なので、あくまでも適度に使ってください。
性感染症を防ぐためには、性交の最初から最後までコンドームを使用し、特定のパートナー以外とは性交渉をしないようにしましょう。万が一、自分が感染していた場合は、パートナーも感染している可能性が高いので、2人とも検査・治療を受けることが大切です。
陰部のしこりに気づいたら早めに婦人科受診を
陰部のしこりは、ただの脂肪腫であれば自然に治ることが多いですが、もしかすると何らかの病気が原因の可能性もあります。どんな病気も早期発見・早期治療が大切なので、しこり以外に特に症状がなくても、婦人科で診てもらいましょう。