妊娠を考えている女性や妊婦さんにとっては馴染みの深い「葉酸」。妊娠前から妊娠中に葉酸を適切に摂取することで、生まれてくる赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクが低減するといわれています。そんな葉酸を男性が摂取すると、どのような効果があるのでしょうか。今回は、男性の葉酸摂取について、その効果や1日の推奨摂取量、葉酸サプリのメリットをご紹介します。
そもそも葉酸とは?
葉酸はビタミンB群の一つで、水溶性ビタミンの仲間です(※1)。葉酸を含む代表的な食品には、ブロッコリー、ほうれん草、モロヘイヤ、いちご、レバーなどがあります。
葉酸には、下記のような効果・効能があるといわれています。
赤血球を作り出す
葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作る働きをします。葉酸が足りないと正常な赤血球を作れなくなり、貧血になってしまいます(※1)。
細胞の新生を助ける
葉酸には、細胞新生に必要な核酸(DNA、RNA)を作る働きがあります(※1)。
胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らす
妊娠中の女性が、妊娠初期に葉酸を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが軽減します(※2)。
厚生労働省も、妊娠を考えている女性に対して、妊娠する1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、葉酸を摂取することを推奨しています(※3)。
葉酸は男性にも効果がある?精子の質を高めるの?
妊娠前後に摂取することが推奨されている葉酸ですが、男性にはどのような効果があるのでしょうか?
男性の葉酸摂取に関する研究は、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の調査が有名です。
この研究によると、葉酸を充分に摂取している男性の精子は、そうでない男性の精子と比べて、染色体異常の確率が約20%低いことが明らかになっています(※4)。
精子に染色体異常があると、精子の形成や成熟が上手く行かなくなることもあり、不妊につながる可能性があります。
実際、不妊の約50%は男性側にも原因があるといわれており(※5)、葉酸を摂取することで、男性不妊のリスクを下げられる可能性があると考えてもいいでしょう。
ただし、不妊には様々な原因があるため、男性が葉酸を摂取するだけで必ず妊娠率が高まるわけではありません。
男性は葉酸をどれくらい摂取したらいいの?
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」では、18〜69歳の男性は、葉酸を1日240μg摂取するように推奨しています(※6)。
同じく厚生労働省発表の「平成25年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、男性の1日の葉酸摂取平均値は20〜29歳で238μg、30〜39歳で264μgという結果が出ています(※7)。
これらのデータを見ると、推奨値と摂取平均値はほぼ同じですが、あくまで平均なので、1日の葉酸推奨摂取量を満たしていない男性もいると推察されます。特にパートナーと共に妊娠を考えている男性は、摂取量を意識するようにしましょう。
男性にも葉酸サプリがおすすめ
葉酸には、「天然葉酸」と「合成葉酸」の2種類があります。
天然葉酸は食品から摂取できますが、水に弱く調理の過程で成分が失われやすいという特徴があり、妊娠中に推奨されているのは、サプリメントから摂取できる合成葉酸です(※3)。
そのため男性も、サプリから合成葉酸を摂取したほうが効率的でしょう。
しかし、天然葉酸に全く効果がないわけではありません。葉酸サプリメントを摂取しながら、葉酸が多く含まれる食材や食品を食べることも意識していきましょう。
男性が葉酸を取りすぎると副作用は出る?
葉酸は、通常の食事で過剰摂取になることはないといわれていますが、サプリによって摂取し過ぎた場合、男女問わず発熱や神経障害を発症することがあります(※1)。
男性の葉酸摂取の耐容上限量(取り過ぎにならない値)は900〜1000μgなので、サプリに含まれる葉酸の量を確認して、適正量を守るようにしましょう(※6)。
男性も葉酸サプリを効果的に摂取しよう
男性が葉酸を摂取することで、精子の染色体異常を低減させ、不妊の原因を減らす効果も期待できるとされています。普段の食生活の中で、推奨量の葉酸を継続的に摂取することは難しいため、葉酸サプリを上手に活用しましょう。
妊活に取り組んでいるカップルは、パートナーと一緒に葉酸を取ることで、よりいい関係が築けるようになるかもしれません。葉酸を適切に摂取しながら、健康的な生活を送っていけるといいですね。
※1 新星出版社『図版オールカラー 栄養成分の事典』pp.66,67
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント -神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」
※3 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領」
※4 UC Berkeley News「Folate intake linked to genetic abnormalities in sperm, says new study」
※5 一般社団法人 日本生殖医学会 『Q7.不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?』