先天的な染色体異常の疾患のひとつに「21トリソミー」があります。別名である「ダウン症候群」という呼び名のほうが有名かもしれません。21トリソミーはどの赤ちゃんにも起きる可能性があるのですが、その実態についてあまり知られていないのが現状です。今回は21トリソミーについて、原因や症状、診断方法、治療法などをご紹介します。
21トリソミーとは?
細胞内には、遺伝情報を伝達する染色体という物質が存在します。1つの細胞内に46本の染色体があり、2対で23組に分かれているのが通常ですが、この23組の中で染色体の数が1本多くなっている状態を「トリソミー」といいます。
23組のうち、21番目の染色体が3本になっているのが21トリソミーで、「ダウン症候群」とも呼ばれています。ダウン症候群という名前は、ダウン症について最初に報告したイギリスのジョン・ラングドン・ハイドン・ダウン博士に由来しています。
21トリソミーは、全出生児の約800人に1人の割合で発症するといわれます。しかし、母親の出産年齢が上がるほど発症率も上がり、母体の年齢が20歳の場合は発症率が約2,000分の1であるのに対して、出産年齢が40歳だと発症率は約100分の1になります(※1)。
21トリソミーの原因は?
21トリソミーは染色体の数が1本多い染色体異常によって起きますが、何が染色体異常を引き起こすかについては、はっきりしたことは分かっていません。
前述のとおり、母体の年齢が上がるほど21トリソミーの発症率が高まることから、精子や卵子の老化と関係があるのではないかとも考えられています。
21トリソミーの症状や特徴は?
21トリソミーの子供には、発育過程で、以下のような症状や身体的特徴が見られます(※1,2,3)。
新生児期に見られる症状
・あまり泣かない
・体が柔らかく、ふにゃふにゃしている
・おとなしい
・母乳やミルクの飲みが悪い
成長過程で見られる身体的特徴
・起伏がなく丸い顔立ち
・後頭部が平べったい
・目がつり上がっている
・鼻が低い
・手の指が短い
・耳が小さい
・耳が変形している
・目と目の間隔が開いている
この他、言語機能や認知機能の発達の遅れや、白内障や斜視などの症状が見られることもあります。
21トリソミーの診断方法は?
21トリソミーの赤ちゃんは、出生時点でも、身体的特徴を見るだけで判別できることが多いです。医師が21トリソミーの疑いがあると判断した場合は、遺伝子検査によって確定診断を行います。
なお、生まれてくる赤ちゃんが21トリソミーかどうかは、出生前でも、母体の血液や羊水の検査によって高い確率で推定することができます。
21トリソミーに治療法はあるの?
21トリソミーを根本的に治療する方法はありません。
ただし、21トリソミーになっていると、先天性心疾患や先天性白内障などの病気を持って生まれてくることがあり、先天的な病気がある場合は、その治療を行います。
21トリソミーの子供は免疫力が低かったり、言語や認知の発達が遅れたりするので、親身に対応してくれるかかりつけの医師を見つけたり、教育機関と連携をとりながら、特殊教育を早めに始めたりするなどのケアを行うことが大切です。
21トリソミーの平均寿命は?
21トリソミーの子供の平均寿命は、1949年では12歳ほどでしたが、医療技術の発達のおかげもあり、最近では平均寿命が60歳くらいになっています(※4)。
一方で、将来子供が自立できるかどうかについて、心配になるママやパパもいるかと思います。ダウン症の子供をサポートしてくれる特別支援学校や職業訓練の場などは増えており、一人で生活したり、結婚したりしているダウン症の人もいます。
早いうちから子供に合った教育環境を整え、子供の成長をサポートしていきましょう。
21トリソミーもひとつの個性
21トリソミーの子供は発育が遅れることが多いため、不安にかられることもあるかもしれません。
ただ、ママやパパが元気をなくしていると、子供にまで不安な気持ちが伝わってしまうことも。21トリソミーもひとつの個性だと捉え、その個性を大切にしてあげてください。
ママやパパが笑顔でいることが、子供の笑顔につながります。