慢性気管支炎とは?原因や症状、治療法は?薬で完治する?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

慢性気管支炎は、中高年の大人によく見られる病気で、子供がかかることは稀です。しかし、周りの大人がたばこを吸っていたりすると、受動喫煙により子供が影響を受ける恐れもあるので、家族に喫煙者がいる場合は特に、きちんと知っておきたい病気です。

慢性気管支炎とは?

イラスト 肺・気管支 小児気管支炎

喉から左右の肺へと気管が枝分かれしている部分のことを「気管支」といい、ここに炎症が起きるのが気管支炎です。空気の通り道が炎症を起こすと咳や痰が出始め、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった苦しそうな呼吸をするようになります。

この気管支炎が突発的に現れたものを「急性気管支炎」、慢性化したものを「慢性気管支炎」と呼んで区別します。慢性気管支炎は50~60歳の中高年によく見られる病気ですが、子供に現れる可能性もゼロではありません。

それでは、慢性気管支炎と急性気管支炎では具体的に何が違うのでしょうか?次から具体的に見ていきましょう。

慢性気管支炎の原因は?

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急性気管支炎は、インフルエンザウイルスやライノウイルスといったウイルスや、肺炎球菌やマイコプラズマなどの細菌が気管支に感染することで発症します。

一方、慢性気管支炎は、ウイルスや細菌感染によるものではなく、空気中の有害物質などで肺に慢性の炎症が起こることで、気道が狭まることが主な原因です。

たとえば、急性気管支炎や喘息などの病気を繰り返したり、排気ガスなどによる大気汚染や喫煙の影響で喉が傷つけられたりして、炎症が慢性化すると考えられています。

慢性気管支炎と肺気腫を合わせて「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」といい、COPDの発症原因の80~90%を占めるのがたばこです。10年以上の喫煙歴がある人、1日何十本もたばこを吸う人は、COPDの発症リスクが高いということがわかっています(※1)。

日本禁煙学会によると、受動喫煙症の診断基準に気管支炎を挙げており、一緒に住んでいる大人がヘビースモーカーの場合、子供が受動喫煙により慢性気管支炎を発症する可能性もあります(※2)。

慢性気管支炎の症状は?

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急性気管支炎であれば、発熱や喉の痛み、頭痛や鼻炎などの風邪症状のあとに、強い咳や痰が現れますが、正しく治療すれば1週間ほどで症状は治まります。

一方、「咳と痰が、主に冬に3ヶ月以上ほぼ毎日続く状態が2年以上連続していて、それがほかの病気によるものではない」ときに、慢性気管支炎と診断されます(※3)。

慢性気管支炎が進行すると、気道の壁が厚くなり、内部が狭くなるので、階段の昇り降りなどちょっとした動作で息切れするようになります。

息切れ・咳・痰が長く続く場合は、慢性気管支炎にかかっている恐れがあるので、内科か呼吸器科を受診してみましょう。

慢性気管支炎の治療法は?薬で完治する?

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慢性気管支炎の場合、急性気管支炎のように原因ウイルスを退治すれば完治する、というわけではありません。症状が悪化して肺胞が壊れてしまうと、治療薬などで完全に治すことはできないので、対症療法で症状をやわらげるのが治療の基本です。

たばこが原因と考えられる場合、すぐに禁煙をすることが重要となります。子供が慢性気管支炎にかかることは稀ですが、周りの大人が禁煙をし、子供がたばこの煙を吸わないように注意してあげましょう。生活空間の空気を綺麗に保つため、部屋に空気清浄機を置くのも一つの方法です。

薬物療法として、痰を切りやすくする去痰薬や、気管を広げて呼吸しやすくする気管支拡張薬などを服用・吸入します。痰が黄色くなり、熱が出た場合には抗菌薬を処方されることもあります(※3)。

そのほか、息切れや呼吸困難感などの苦しい症状が出ている場合、運動療法を中心とした呼吸リハビリテーションを行いながら、運動能力や呼吸機能の低下を食い止めることが大切です。

慢性気管支炎の発症リスクを減らしましょう

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慢性気管支炎は、喫煙者の約2割に発症することから、「たばこ病」と呼ばれることもあります(※1)。長年の喫煙者やヘビースモーカーに見られやすい病気で、子供がかかることはあまり多くありませんが、周りの大人がたばこを吸っていたり、住んでいる場所の大気汚染がひどかったりするとで、子供にとっても発症リスクとなります。

子供の健康が守られるかどうかは、パパとママ次第。もし息切れや咳、痰などの症状が見られたときは、悪化する前に病院を受診し、生活環境の改善に努めましょう。

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