「小さなことでもついイライラしてしまう」という女性は意外と多いもの。特に、生理前や更年期などでホルモンバランスが変化しているときは、イライラを感じやすい傾向にあります。生理的な現象で仕方ないこととはいえ、できるだけ心穏やかに過ごしたいという人は、漢方薬を使ってみることをおすすめします。今回は、生理前や更年期などのイライラを解消する漢方薬の効果や効能、おすすめの種類をご紹介します。
女性のイライラはホルモンバランスのせい?
女性の体を保つのに欠かせない女性ホルモンは、月経周期に合わせて分泌量やバランスが変わります。それによって、「イライラを感じやすい時期」ができてしまいます。特に、下記のようなときはイライラを感じやすくなります。
生理前
生理前は、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」という女性ホルモンが減少し、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンが増加します。このとき分泌のバランスが乱れ、イライラを感じやすくなります。
また生理前は、心を落ち着ける作用がある脳内物質「セロトニン」の分泌量が低下することもわかっており、それによってイライラが生じやすくなるのではないかともいわれています。
生理前のイライラは「PMS(月経前症候群)」の症状のひとつです。PMSは、生理の3~10日前から症状があらわれ始め、生理が来ると緩和されるのが特徴です(※1)。なかには、生理中もイライラが続く人もいます。
更年期
閉経の前後を「更年期」といいます。この時期になると閉経に向けて卵巣の機能が低下するため、女性ホルモンの分泌が少なくなり、ホルモンバランスも乱れます。
また更年期は、子供の自立や親の介護、キャリアアップ、夫の定年退職など、社会的な環境や生活が変化しやすい時期でもあり、ストレスがたまりやすくなります。ホルモンバランスの乱れと、これらの要素が複雑に絡み合い、イライラを感じやすくなります。
ストレスがたまっている
月経周期とは関係ありませんが、ストレスがたまりすぎると、ホルモンバランスや自律神経が乱れ、イライラにつながります。生理前や更年期ではないのに常にイライラしてしまうという人は、日常的にストレスがたまりすぎているかもしれません。
放っておくと、体のバランスが崩れ、生理不順や無月経、また、自律神経失調症やうつ病などにもつながる可能性もあります。
イライラには漢方薬が効果的なの?
漢方医学では、「気・血・水(き・けつ・すい)」という3つの観点から人体をみます。不調は、この3つのどこかが滞った状態です。
症状は同じだったとしても、どこが滞っているかは人それぞれ異なります。そのため治療の際は、個人の体質や症状に合わせた漢方薬を服用します。
また漢方薬は、症状そのものに対して効くというよりは、体全体の調子やバランスを整えることで不調の改善を目指すものです。
そのため、漢方薬を使うと、個人の原因や体質にあう治療ができる他、イライラだけではなく、その裏にあるホルモンバランスや自律神経の乱れなどもじっくりと改善していくことができるのです。
生理前や更年期障害のイライラで処方される漢方の種類は?
ここからは、生理前や更年期のイライラに効果が期待できる主な漢方薬をご紹介します(※2)。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
比較的体力がない人に処方されます。イライラのほか、更年期障害の様々な症状や、冷え性、不眠、月経不順などにも効果が期待できます。
成分 | ボタンピ・シャクヤク・トウキ・サイコ・ハッカ・サンシシ・ビャクジュツまたはソウジュツ・ブクリョウ・カンゾウ・ショウキョウ |
桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう)
体力があり、活動的な人のイライラに対して処方されます。「血」の異常に働きかけて、イライラやのぼせ、生理痛を解消する作用があるといわれます。
成分 | ボタンピ・トウニン・ブクリョウ・シャクヤク・ケイヒ |
女神散(にょしんさん)
体力が平均的な人に処方されます。「気」を巡らせる漢方薬で、イライラや不眠などの精神的症状、更年期障害の諸症状、自律神経失調症などの治療に使われます。
成分 | トウキ・センキュウ・コウブシ・ソウジュツまたはビャクジュツ・ケイヒ・オウレン・オウゴン・ニンジン・ビンロウジ・チョウジ・モッコウ・カンゾウ |
抑肝散(よくかんさん)
神経の高ぶりを抑える漢方薬です。体力が比較的弱い人に処方されます。気持ちを安定させ、イライラやヒステリー、怒りっぽい状態を緩和してくれます。
成分 | センキュウ・トウキ・サイコ・ビャクジュツ・ブクリョウ・カンゾウ・チョウトウコウ |
四逆散(しぎゃくさん)
体力が平均的、または少し虚弱気味の人に効果が期待できます。肝の働きを整えることで、イライラやヒステリー抑うつ感などの精神症状を緩和します。
成分 | サイコ・キジツ・シャクヤク・カンゾウ |
イライラに効く漢方薬には副作用もある?
漢方薬は効果が穏やかで、比較的副作用が少ないものとされています。しかし、副作用が全くないというわけではありません。
体質や、他の薬との飲み合わせなどによっては、食欲不振や胃の不快感、軟便、下痢、夜間の多尿、不眠、にきびやアトピーの悪化などが起こることがあります(※2)。
漢方薬を服用して上記のような副作用が現れたら、医師や薬剤師に相談するようにしてください。
イライラの症状で漢方薬を処方してもらうには?
漢方薬は、漢方内科や漢方の取り扱いがある婦人科など、様々な病院で処方してもらうことができます。つらいイライラを感じたら、まずは婦人科や心療内科、漢方内科などを受診しましょう。
かかりつけの病院で漢方薬を扱っていない場合は、漢方薬を希望する旨を伝えて、他の病院や薬局を紹介してもらいましょう。
また、漢方薬はドラッグストアなどでも購入できますが、体質や症状にあわせて選ぶ必要があるので、最初に利用するときは病院で処方してもらうのが安心です。しばらく飲んで体質に合うことがわかったら、市販のものを購入してもいいかもしれません。
つらいイライラは漢方薬で解消しよう
イライラは自分でどうにもできず、自己嫌悪に陥ってしまうという人もいるのではないでしょうか。生理前や更年期のイライラならなおさらです。
イライラが出やすい人は我慢せず、早めに病院を受診して、漢方薬の助けを借りるようにしましょう。1人で抱え込まず、相談してみるだけでも楽になるかもしれませんよ。