妊娠検査薬の説明書やパッケージを見て、「hCG」という言葉を初めて知った人も多いかもしれません。妊娠検査薬の判定と深く関わるhCGの数値には、どんな意味があるのでしょうか。
そこで今回は、hCGとは何かをはじめ、着床後の数値の変化や妊娠判定に使われる基準値についてご説明します。
hCGとは?どんな働きがあるの?
「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」とは、妊娠が成立すると分泌されるホルモンの一種です(※1,2)。
hCGは着床後に作られはじめる胎盤の一部から分泌されます(※1)。そのため、妊娠していない女性や男性の体内では産生されません。
妊娠週数が進むにつれて、尿中や血液中のhCG濃度が高くなっていきます。市販の妊娠検査薬は、尿中のhCG濃度が基準値以上かを調べることで妊娠が成立したかを判定しています。
hCG値は着床後どう変化するの?
受精卵が着床して、胎盤が本格的に作られはじめる妊娠4週以降、hCGの分泌量はどんどん増え、尿中濃度は25~1,000IU/Lとなります(※1)。妊娠10週頃には20万IU/Lに達してピークを迎えます(※1)。
その後、分泌量は次第に少なくなっていきますが、妊娠15~40週の間も血中に含まれるhCG量は一定量が維持されます。出産を終えて胎盤が体外に出されるとhCG量は激減し、やがてゼロになります(※1)。
妊娠検査薬の判定に使われるhCGの基準値とは?
市販の妊娠検査薬の判定には尿中に含まれるhCGの量が利用されていて、50IU/Lを超えると陽性反応が出るものが一般的です(※3,4)。
hCGの分泌量には個人差があるものの、基本的には生理開始予定日から約1週間後には妊娠検査薬で妊娠を判定できるとされています。
これより前に検査をしてしまうと、尿中のhCG濃度が妊娠検査薬に反応する基準値に達しておらず、実際は妊娠しているのに陰性反応が出ることがあるため、使用時期には注意しましょう。
最近は、通常の妊娠検査薬よりもhCGを検出する感度の高い「早期妊娠検査薬」を使う人も増えています。
日本製の早期妊娠検査薬の場合、尿中のhCG濃度が25lU/Lで陽性反応を示し、生理予定日当日から検査が可能です(※5)。
海外製では、尿中のhCG濃度がさらに少なくても陽性反応を示すものや、生理6日前から検査可能なものもあります(※6)。
感度は生理6日前だと約78%と低めですが、4日前になると約99%となります(※6)。
hCG値が基準値を超えていても正常妊娠とは限らないの?
妊娠検査薬で陽性反応が出ると「hCGが基準値以上、尿の中に存在している」という状態を意味しますが、これだけでは正常な妊娠かどうかの判断はできません。
たとえば、子宮内膜以外の場所に着床してしまう「子宮外妊娠(異所性妊娠)」の場合もhCGは分泌されているため、妊娠検査薬は陽性反応を示します(※1)。
正常妊娠であれば、血中のhCG濃度が1,500~2,000IU/Lを超えると、お腹の赤ちゃんを包んでいる「胎嚢」という袋を子宮内に確認できるようになります(※1)。しかし、この数値を超えていても、エコー検査で子宮内に胎嚢が確認できない場合は子宮外妊娠が疑われます。
子宮外妊娠は早期発見・早期治療が大切なので、妊娠検査薬で陽性反応が出たら早めに産婦人科を受診しましょう。
hCG値はあくまでも妊娠判定の参考のひとつ
hCGのことを知ると、妊娠検査薬によって陽性反応が出る仕組みが理解しやすくなりますよね。ただしhCGの分泌量や増加ペースには個人差があるため、通常の妊娠検査薬を使うときは少なくとも生理開始予定日から1週間経ってから試してみましょう。
もし、不妊治療でhCG注射を行っている場合、投与後しばらくは体内のhCG量が増えるため、妊娠していなくても妊娠検査薬が陽性反応を示すこともあります。妊娠検査薬を使うタイミングによっては正しい結果が得られないので、使用時期については、かかりつけの医師に相談してくださいね。