初期の妊娠判定に「hCG値」というものが使われます。妊娠検査薬の陽性反応と深く関わるhCG値とは、何の数値を表すものなのでしょうか。そこで今回は、hCGとは何か、妊娠判定に使われる基準値、着床後の変化についてご説明します。
hCGとは?どんな働きがあるの?
「hCG(Human chorionic gonadotropin)」とは体内で分泌されるホルモンの一種で、「ヒト絨毛性ゴナドトロピン」とも呼ばれます。
hCGは、妊娠すると赤ちゃんとママをつなぐ胎盤の一部である「絨毛」の細胞で作られます。そのため、妊娠していない女性や、男性の体内では産生されません。
hCGの分泌量は受精卵が着床して妊娠が成立すると増えていき、妊娠週数が進むにつれて尿中や血液中のhCG濃度が高くなっていきます。妊娠検査薬はこの仕組みを利用し、尿中のhCG濃度を調べることで妊娠が成立したかどうかを判定しています。
また、hCGは卵巣にある黄体を刺激し、「プロゲステロン」と「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌を促します。この2つの女性ホルモンは、出産に向けて女性の体の状態を変化させる働きがあるので、hCGが分泌されることで妊娠を維持することができるのです。
hCG値は着床後どう変化するの?
先述のように、受精卵が着床するとhCGが分泌され始め、尿中hCG濃度は急激に上昇し始めます。
妊娠4週以降になると、尿中hCG値は25~1,000IU/Lまで増え、妊娠8~10週頃になると20万IU/Lに達してピークを迎えます(※1)。この時期になるとプロゲステロンが作られる場所が卵巣から胎盤に移るので、卵巣の黄体を刺激する必要がなくなります。その結果、hCGの分泌量は除々に少なくなっていくのです。
妊娠15~40週の間は、一定の血中hCG濃度が維持されますが、出産を迎えて胎盤が体外に出されると、hCG量は激減し、やがてゼロになります(※1)。
妊娠判定に使われるhCG値の基準値とは?
先述のように、受精卵が着床するとhCGが分泌されるため、妊娠検査薬の陽性判定にはこのhCG値が利用されています。
市販の妊娠検査薬は、尿中のhCG値が50IU/Lを超えると陽性反応が出るものが一般的です。hCGの分泌量は、受精卵の成長スピードなどによって個人差はあるものの、基本的には生理開始予定日から1週間後には妊娠検査薬で妊娠を判定できるとされています。
これより前に検査をしてしまうと、hCGの分泌量が基準値に達しておらず、本当は妊娠しているのに陰性反応が出てしまうことがあるので、使用する時期に注意しましょう。
最近は、通常の妊娠検査薬よりもhCG感度の高い「早期妊娠検査薬」も販売されています。これは尿中のhCG値が25lU/L程度でも陽性反応を示すものですが、通常の妊娠検査薬と比べて正確性が落ちるという点には気をつけてくださいね。
hCG値が基準値を超えていても、正常妊娠とは限らない?
妊娠検査薬で陽性反応が出ると、「妊娠した!」とうれしくなる人も多いと思いますが、これだけでは正常な妊娠かどうかの判断はできません。妊娠検査薬はあくまでも「hCGが一定量以上、尿の中に存在している」という状態を検出するものであり、それ以上のことは分からないからです。
たとえば、子宮内膜以外の場所に着床してしまう「異所性妊娠(子宮外妊娠)」の場合でもhCGは分泌されているため、妊娠検査薬は陽性反応を示します。
通常、正常妊娠であれば、血中hCG量が1,500~2,000IU/Lを超えると、お腹の赤ちゃんを包んでいる「胎嚢」という袋を子宮内に確認できるようになります(※1)。しかし、この数値を超えていても、エコー検査で子宮内に胎嚢が確認できない場合、子宮外妊娠が疑われます。
日本では、超音波検査により子宮内に胎嚢が確認できた時点で「妊娠した」と確定します。そのため、妊娠検査薬で陽性反応が出ただけでは妊娠しているとは言い切れないのです。
もしも子宮外妊娠をしている場合には早期発見・早期治療が大切なので、妊娠検査薬で陽性反応が出たら、産婦人科を受診して超音波検査を受けましょう。
hCG値は妊娠判定の一つの参考に
hCGは、妊娠してはじめて産生・分泌されるホルモンで、妊娠検査薬によって判定を行うための材料になります。生理開始予定日あたりで陽性反応が出る人もいますが、尿中hCG値の増加ペースには個人差があるため、少なくとも生理開始予定日から1週間置いてから検査薬を試してみてくださいね。
なお、不妊治療でhCG注射を使っている場合、投与後しばらくは体内のhCG量が増えるため、妊娠していなくても妊娠検査薬が陽性反応を示すこともあります。この場合もやはり、早くに検査をすると正しい結果が得られないので、使う時期に気をつけましょう。