点頭てんかん(ウエスト症候群)とは?症状に現れる特徴は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

「点頭てんかん」という病気をご存じですか?これはけいれん発作を繰り返す「てんかん」のひとつなのですが、よく知られているてんかんとは異なる発作が起きるため、点頭てんかんだとは気づかずに、治療が遅れることがあります。今回は点頭てんかんの原因や症状、診断方法、治療法、予後などをご紹介します。

点頭てんかん(ウエスト症候群)とは?

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点頭てんかんとは、生後3~11ヶ月頃の赤ちゃんに発症するてんかんの一種です。点頭てんかんの発見者である医師の名前をとって「ウエスト症候群」と呼ばれることもあります。

「点頭」とはうなずくことを意味しており、その症状に、頭を下に垂らし、縦に動かしてうなずくような仕草をするという特徴があります。

難病情報センターによると、日本には約4000人の点頭てんかん患者がいるとされています(※1)。

点頭てんかんの原因は?

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点頭てんかんを引き起こす原因はさまざまあると考えられています。その約80%は、出生前あるいは出生直後に起こった脳障害が原因と推定されています。ほかにも染色体異常症、先天奇形症候群、脳血管障害、結節性硬化症、新生児仮死などが原因として挙げられます(※1,2)。

検査をしても異常が見られず、原因を特定しにくいケースもあります。

点頭てんかんの症状は?

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点頭てんかんの症状としては、目を覚ましているときにいきなり頭を前にカクンカクンと倒したり、両手両足を曲げたりといった動作を5~30秒続け、これを繰り返すことが特徴です。この繰り返しは、1日に何度も起きます(※3)。

また、発作が起こる前後で、赤ちゃんが不機嫌になったり、それまでできていた首すわりやお座りができなくなったりすることがあります(※1)。

点頭てんかんの症状と見分けがつきにくいものとして、モロー反射があります。モロー反射は、大きな音などの急な刺激に反応して、手足をビクッとさせ、抱きつこうとする動作を見せる原始反射です。

動きだけで、点頭てんかんとモロー反射を見分けるのは難しいこともあるため、発作の前後で不機嫌になっていないか、笑わなくなっていないか、お座りができなくなっていないかなど、発達が後退しているかどうかをチェックしてみるといいかもしれません。

ただし、素人判断にはリスクがあるので、点頭てんかんの疑いがあるときは、動画を撮ってできるだけ早く小児科医師に診てもらいましょう。

点頭てんかんの診断方法は?

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現れている症状だけで点頭てんかんかどうかを判断するのは難しく、一般的に脳波の検査を行ったうえで診断されます。

点頭てんかんの場合、脳波を検査すると、ヒプスアリスミアという大きな不整波が現れるのが特徴です。多くは生後3〜11ヶ月に発症し、ヒプスアリスミア、点頭てんかんの症状、精神運動発達の遅れや後退が見られれば、点頭てんかんと診断されます(※4)。

点頭てんかんの原因を調べるために、頭部のCT検査やMRI検査、染色体検査、代謝異常検査などを行うこともあります(※4)。

点頭てんかんの治療法や予後は?

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点頭てんかんの治療法には、抗てんかん薬やビタミンB6の投与、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)治療などがあります。抗てんかん薬による治療は約20~40%、ACTH治療は約50~80%の確率で発作を抑制できるとされています(※1)。

ただし、点頭てんかんの発作は約50%の確率で長期的に持続し、知的・運動の予後は不良である傾向があります(※2)。「薬を使っても発作が治まらない状態が続く」など病院が掲げる条件を満たしている場合、近年は専門施設での新薬による治療が行われることもあります(※5)。

それぞれの治療法にメリットとデメリットがあるので、医師とよく話し合いながら、どの治療法が赤ちゃんにとって最適かを考えていきましょう。

点頭てんかんは早期発見を心がけて

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点頭てんかんは先天的な原因で起きたり、原因が分からず起きたりするため、予防が困難です。しかし、できるだけ早めに点頭てんかんに気づき、早期に治療を施してあげることで予後を良好なものにできる可能性があります。

どんなに些細なことでも、「あれ?」と思うような動きを赤ちゃんがしていたら、その動きを動画で撮影したり、細かく記録したりして、病院を受診するようにしてください。

赤ちゃんの異変にいち早く気づけるよう、日頃から赤ちゃんの様子をしっかり観察していきたいですね。

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