体外受精や顕微授精によって体外での受精が成功したら、できた受精卵(胚)を女性の子宮の中へ戻して妊娠を目指します。これを「胚移植」といい、採卵した周期内ですぐに移植する「新鮮胚移植」と、受精卵を凍結保存して別の周期で使う「凍結胚移植」の2つの方法があります。今回は新鮮胚移植について、方法や移植後の着床時期、着床の判定日や妊娠率をご紹介します。
新鮮胚移植とは?
体外受精や顕微授精を行う場合、最初に卵子を取り出すための採卵が必要です。採卵後、体外で精子と受精させて培養し、子宮に戻すという流れになります。このとき、1回の生理周期の中で採卵から胚移植までを行うのが「新鮮胚移植」です。
新鮮胚移植以外には、採卵して受精させた受精卵(胚)を一時的に凍らせて保存し、別の周期で移植する「凍結胚移植」という方法があります。
新鮮胚移植を行ったあと、残った胚を凍結保存する場合と、新鮮胚移植は行わずにすべての胚を凍結しておく場合があります。
胚移植は、受精卵の状態や質、移植する子宮の状態で着床率が左右されます。また、胚移植の方法や方針は病院によって異なる部分もあるので、医師と相談しながら検討することになります。
新鮮胚移植の着床率は?妊娠する確率は低いの?
新鮮胚移植も凍結胚移植も、受精後に培養した胚を子宮内に戻すという方法は同じですが、着床率(妊娠率)は異なります。
日本産科婦人科学会の2012年のデータによると、新鮮胚移植の妊娠率は、移植あたり約20%強で、凍結胚移植は約35%弱です(※1)。
新鮮胚移植の妊娠率が凍結胚移植よりも低くなっているのは、同じ周期での移植の場合、受精卵を受け入れる子宮環境が整っていないこともあるためだと考えられています。
たとえば、採卵のためにクロミッドなどの排卵誘発剤などを使っていた場合、薬の副作用で子宮内膜が薄くなってしまうこともあります(※2)。
受精卵が無事に着床し、妊娠が継続するには子宮内膜が厚く保たれている必要があるので、子宮の状態によっては、新鮮胚移植よりも凍結胚移植が選択されることもあります。
また、凍結胚移植の場合、質の良い胚を選んで保存しておくことが多いため、数値として見たときに着床率が高くなっている、という可能性もあります。
新鮮胚移植のメリットはあるの?
着床率だけを比較すると、新鮮胚移植よりも凍結胚移植のほうが優れていると感じるかもしれませんが、新鮮胚移植にもメリットはあります。
胚凍結・溶解のダメージがない
新鮮胚移植の場合、胚を凍結したり溶解したりしないため、胚が受けるダメージが少なくて済むというメリットがあります。近年では医療技術が進んでいるとはいえ、凍結・溶解による胚のダメージがゼロとはいえません。
金銭的負担が少ない
新鮮胚移植は凍結胚移植と比べて、金銭的な負担が少なくて済みます。凍結胚移植だと、胚の凍結や溶解操作にそれぞれ費用がかかり、胚を保存しておくのにも費用がかかります。新鮮胚移植の場合、採卵から胚移植まで同じ周期の中で行うため、通院の回数も少なくなります。
ただし、1周期だけで採卵と受精卵の培養、着床が成功するとは限らないので、何周期もチャレンジする場合は、それだけ時間的・金銭的な負担がかかります。
新鮮胚移植後の着床時期は?判定日はいつ頃?
新鮮胚移植後に着床が確認できるのは、移植して約3~5日後、採卵からは約7~10日後が一般的な目安です。病院でほぼ確実に着床の有無が確認できる「判定日」は、移植のおよそ2週間後です。
それより前にフライングで妊娠検査薬を使ったとしても、正確な結果がわからない場合があります。「早く結果を知りたい」と気持ちが焦るかもしれませんが、確実な判定を得られるタイミングまでは落ち着いて待ちましょう。
新鮮胚移植後の症状は?妊娠したかわかる?
新鮮胚を移植した後には、人によって様々な症状が現れる場合があります。症状としては、微熱やだるさ、眠気、下腹部の痛み、おりものの量や色の変化などが挙げられます。
しかし、胚移植をしたあとに必ず出るというわけでもありませんし、これらの症状から妊娠を判断することは難しいといえます。
ただ、判定日近くになって現れる体調の変化は、受精卵が着床したことによる「着床出血」や「妊娠超初期症状」の可能性が考えられます。たとえば微量の出血や胸の張り・痛みが見られる人もいれば、味覚・嗅覚の変化を感じる人もいます。
新鮮胚移植後は焦らずに着床を待ちましょう
新鮮胚移植をした後は、着床してくれるのを待つしかありません。胚移植後に神経質になりすぎると、心身にストレスがかかってしまうので、なるべくリラックスして判定日を待ちましょう。
普通に日常生活を送っていれば、胚移植後の着床率にあまり影響はないとされますが、胚移植後の過ごし方として心がけたいことについては、下の関連記事を参考にしてくださいね。