体外受精で胚移植をしたあと、「安静に過ごした方が着床しやすいのかな」と思う女性も多いようですが、実際のところ、胚移植後の過ごし方は妊娠率に関係するのでしょうか?今回は、体外受精の胚移植後の過ごし方や日常生活で注意すべきポイントについてご説明します。
体外受精の胚移植後、当日の流れは?
体外受精では、排卵誘発、採卵・採精、受精・培養、胚移植という流れで治療が進んでいきます。胚は、カテーテルなどの医療器具を腟から挿入し、子宮内に移植されます。
胚移植を行ったあとは、病院で30分ほど安静にしておく必要があるので、移植当日は時間に余裕を持ってスケジュールを立てると良いでしょう。
当日は、激しい運動は禁止されていますが、それ以外は普段どおりの生活を送っても問題ありません。夫婦生活についても、特に制限されないことがほとんどです。
それでは、胚移植後、翌日以降はどのように過ごせばいいのでしょうか?次から詳しくご説明します。
体外受精の胚移植後の過ごし方:安静にするべき?
体外受精で胚移植をしたあと、「胚にダメージを与えてしまうのでは」「着床に影響が出るのでは」と心配し、体を動かすことを躊躇してしまう女性もいるかもしれません。
しかし、自然妊娠の場合と同じように、着床までの期間を安静に過ごす必要は特にありません。
アメリカ生殖学会(ASRM)の学会誌に発表された研究論文によると、体外受精の胚移植後に女性の体にセンサーをつけて日常生活の動きを調べたところ、生活での動きや運動の程度と妊娠率とのあいだに関連性は認められませんでした(※1)。
胚移植当日と同じく、激しい運動でない限りは、日常的に行っているウォーキングなどの適度な運動や夫婦生活を行っても良いとされています。
一般的に、胚移植から妊娠判定までには約2週間かかります。それまで気持ちが落ち着かないかもしれませんが、不安に思うあまりストレスを溜めこんでしまうとかえって良くないので、普段どおりの生活を心がけてくださいね。
体外受精の胚移植後の過ごし方:生活上の注意点は?
日常生活を普通に送るぶんには着床率に影響はありませんが、体外受精の胚移植後だけでなく、不妊治療中は下記のような生活習慣に気をつけることが大切です。
たばこを吸わない
喫煙によって、受精卵が子宮内膜以外のところに着床してしまう「異所性妊娠(子宮外妊娠)」や、早産・流産のリスクが高まります(※2)。
妊娠判定が出てからはもちろんのこと、できれば胚移植後から禁煙しましょう。
アルコール・カフェインを摂りすぎない
妊娠中にお酒を飲むと、生まれてくる赤ちゃんに「胎児性アルコール症候群」を引き起こし、発育の遅れなどが出る恐れがあります(※3)。胚移植後、まだ妊娠前の時期であっても、アルコールの摂取は控える方が安心です。
また、妊婦さんがカフェインを過剰摂取すると、お腹の赤ちゃんの発育に影響が出る可能性も指摘されています(※4)。コーヒーや紅茶などの飲みすぎには気をつけましょう。
バランスの良い食事を摂る
厚生労働省の『妊産婦のための食生活指針』では、妊娠前から主食・主菜・副菜を組み合わせ、栄養バランスの取れた食事を摂ることが推奨されています(※5)。
胚移植後に限った話ではありませんが、1日3食、規則正しい食生活を送りたいですね。
体調不良のときは病院へ
体外受精のために行った排卵誘発剤の投与によって、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」などの副作用が生じる可能性もあります(※6)。
胚移植後にお腹の張りや吐き気などの体調不良がある場合には、妊娠判定日を待たずに産婦人科を受診しましょう。
体外受精の胚移植後の過ごし方:笑うと妊娠率が上がる?
体外受精の胚移植後、先述のような健康的な生活を送ることに加えて、「できるだけ笑って過ごす」ことで妊娠率が高まるかもしれません。
2011年に発表されたイスラエルの学者の研究結果によると、体外受精を受けている女性たちを2つのグループに分けたところ、メディカルクラウン(病院を訪問するピエロ)がマジックなどの芸を披露したグループは、メディカルクラウンが関わらなかったグループに比べて、有意に妊娠率が高かった、ということがわかりました(※7)。
このような研究事例はまだ少なく、今後の発展が気になるところですが、たくさん笑うことがストレスの軽減につながり、少なからず妊娠率アップに貢献した、といえるかもしれませんね。
体外受精の胚移植後はリラックして過ごそう
体外受精の胚移植後の過ごし方は、普段どおりで構いません。「ちゃんと着床できるかな」「妊娠判定日まで待てない」と気になってしまうのは当然ですが、あまり神経質になりすぎてストレスを溜め込んでしまうのは避けたいですよね。
規則正しい食生活など、丁寧な暮らしを心がけることで精神的にも落ち着くかもしれません。お気に入りの音楽を聞いたり、ゆっくり湯船に浸かったりして、リラックスする時間を作ることも大切ですよ。不安な気持ちは自分ひとりで抱えこまず、パートナーやかかりつけの医師と相談しながら、ゆったり過ごしましょう。