体外受精の妊娠率は?成功率を上げる方法はある?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

タイミング法や人工授精から「体外受精(IVF)」に切り替えるか悩んでいる夫婦にとって、妊娠率は気になるところ。また、より成功率を上げるためにできるだけのことはしておきたいですよね。今回は、体外受精の年齢別の妊娠率や、成功率が上がる治療法・生活習慣についてご説明します。

体外受精による妊娠率は?

カップル 計算

日本産科婦人科学会の発表によると、2015年に日本国内で42万4,151件の体外受精が行われ、1回の胚移植あたりの妊娠率は、約16.8%でした(※1)。

ただし、体外受精の妊娠率は胚移植の方法や受ける人の年齢などによっても異なるため、この数字はあくまでも平均だと考えてください。

また、これは「体外受精後、胚が着床した確率」です。体外受精によって妊娠したあとに流産・死産となったケースを除くと、実際に赤ちゃんが生まれた確率(生産率)は約12.0%となります(※1)。

体外受精で生まれている赤ちゃんの数は?

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前述の日本産科婦人科学会による発表によると、2015年に日本国内で実施された体外受精によって、過去最多の5万1,001人の赤ちゃんが生まれました(※1)。

これは、同年生まれの赤ちゃん全体のうち、19人に1人が体外受精で生まれたという計算になります。この子たちが小学校に上がるときには、各クラスに1~2人は体外受精で生まれた生徒がいる、といえます。

なお、日本国内ではじめて体外受精児が誕生した1983年以来、累計で48万2,627人の赤ちゃんが体外受精によって生まれています(※1)。

体外受精の成功率は30代と40代で違う?

修正版 年齢別の生殖補助医療(ART)の成績

体外受精や顕微授精のように、体外で受精を行い、胚を子宮のなかに移植する技術を「生殖補助医療(ART)」といいます。

上のグラフは、ARTによる妊娠率と生産率、流産率を年齢別に示したものです(※2)。

まず、胚移植1回あたりの妊娠率を比べると、30歳(39.8%)と35歳(36.1%)のあいだで約4%下がり、40歳(24.5%)になるとさらに約12%低くなることがわかります。

また、実際に赤ちゃんが生まれる確率も、30歳で20.3%、35歳で17.2%、40歳で8.3%とどんどん低くなっていきます。

逆に流産率は、30歳だと17.3%であるのに対し、40歳では33.7%と、2倍近く上昇することがわかります。

このように、年齢が上がるとともに体外受精の妊娠率が下がり、流産率が上がるのは、加齢による卵子の老化が主な原因です。ただし、不妊の原因が女性だけにあるとは限らず、男性の精子数や運動能力の少なさが要因であることもあります。

いずれにせよ、年齢が高くなるほど体外受精の成功率は低くなるので、何度かタイミング法や人工授精を試しても妊娠が叶わない場合、女性の年齢によっては、なるべく早く体外受精に切り替えるよう産婦人科医から勧められることもあります。

体外受精の成功率が高い治療法とは?

体外受精 培養 受精卵 胚盤胞 顕微授精

近年では、次に挙げるような医療技術が進歩し、以前に比べて体外受精の妊娠率が上がっています。

個人の状況によって選べる治療法は異なりますが、より高い妊娠率を目指すため、パートナーや医師とよく相談することをおすすめします。

胚盤胞移植

胚盤胞移植とは、体外受精によってできた受精卵を5~6日かけて「胚盤胞」という段階まで培養したうえで、子宮内に移植する方法です。

胚盤胞は、受精卵を2~3日培養させてできる「初期胚」の状態よりも、着床の準備が整った状態なので、移植したときの着床率(妊娠率)がより高くなります。

なお、胚盤胞は成長度合いによってグレードが分けられ、グレードが高い方がさらに成功率が高まります。ただし、移植に適したタイミングは胚盤胞のグレードだけでなく、子宮内のコンディションなどによっても異なるため、医師とよく相談して決めましょう。

凍結胚移植

凍結技術が進んだことにより、培養した胚をそのまま子宮に戻さず、一時的に凍結保存し、別の周期に移植することが可能になりました。これを「凍結胚移植」といいます。

これにより、子宮内膜の状態やホルモンバランスなどを整えてから、より着床しやすいタイミングを見計らって移植ができるため、成功率は高くなります。

なお、先述のとおり、2015年に行なわれた体外受精全体の妊娠率は約16.8%でしたが、凍結胚移植のみに絞って見てみると、妊娠率は約33.2%です(※1)。

体外受精の成功率とコストについて

お金 医療費 費用 お札 病院

体外受精にかかる費用の目安は、1周期あたり40~50万円程度です。ただし、治療を受ける医療機関や選択する治療法などによっても違います。

たとえば、初期胚まで培養させるのか、それとも胚盤胞の段階まで成長を待つのかによって、培養費が異なることがあります。また、凍結胚移植を選ぶ場合、胚の凍結・保管・融解(解凍)費用が必要となります。

体外受精にチャレンジするからには、できるだけ高い成功率を目指したいところではありますが、それなりにコストがかかる治療法でもあるので、パートナーともよく相談したうえで、産婦人科医と一緒に自分たちに合った治療法を選びましょう。

体外受精の成功率を上げるには?

野菜

先述のとおり、体外受精の成功率が下がる主な原因は、加齢による卵子の老化です。これは自然の摂理であり、今のところ卵子を若返らせることはできないとされています。

ただし、卵子の老化のスピードを遅くするための対策はできると考えられています。具体的には、卵子の老化を加速させる活性酸素が体内で発生するのをなるべく抑えることと、動脈硬化症を予防することです(※3)。

そのためにも、日常生活のなかで、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの良い食生活と、適度な運動を心がけ、健康な体づくりに取り組みたいですね。

体外受精の妊娠率は年齢と健康がカギ

女性 リラックス 健康

医療技術の進歩のおかげもあって、以前と比べると体外受精の妊娠率は上がっていきます。ただし、年齢が上がるとともに妊娠率が下がっていくのは、自然妊娠の場合と同じです。

より成功率が高まるよう、パートナーや医師と治療法をよく吟味するだけでなく、より授かりやすい体づくりのために、健康的な生活習慣を心がけたいですね。

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