体外受精は、採取した卵子と精子を体外で人工的に受精させる方法ですが、受精がうまくいかないこともあります。体外受精で良い結果が出ない原因として、どのようなものが考えられるのでしょうか?今回は、体外受精で受精しない原因や、受精率を上げる方法、体外受精がうまくいかないときに検討される治療法についてご説明します。
体外受精の受精率が高い理由は?
タイミング法や人工授精でうまく行かなかった夫婦でも、体外受精にチャレンジすることで高い受精率が期待できます。
タイミング法や人工授精の場合、上のイラストのように、排卵された卵子が卵管の中に取りこまれ、そのタイミングに合わせて精子が女性の体内に入り、腟から子宮、卵管へと進んでいく…という長いプロセスを経て受精が起こります。
しかし、体外受精の場合は、そのプロセスをたどることなく、精子と卵子を出会わせることができるため、受精率が高くなります。
特に、卵管に障害があって卵子をうまく取りこめない「ピックアップ障害」があったり、精子の数や運動率が少なかったりする場合は、体外受精が有効と考えられます(※1)。
体外受精でも受精しないことがあるの?
先述のとおり、体外受精をすると高い確率で受精が起きますが、うまく受精できないケースも10~20%ほどあります(※2)。それはなぜなのでしょうか?
体外受精を行う際は、採卵した卵子と培養液を入れたシャーレに、できるだけ元気のいい精子を複数入れます。そうすると、精子が一斉に卵子の周りに集まり、そのうちの1匹の精子だけが卵子を囲っている「透明帯」を突破して中に入ることで、受精が成功します。
つまり、体外受精では「精子を卵子の近くに集める」ところまではできますが、そのあと精子と卵子がひとつになれるかどうかは、精子と卵子の能力にかかっているため、どちらかに不具合があると、受精できないこともあるというわけです。
体外受精で受精しない理由は?
男性と、女性どちらかに次のような障害があると、体外受精を行っても受精できないことがあります(※1,3)。
なお、受精しない理由がはっきりせず、「何らかの受精障害がある」としかいえない場合もあります。
男性側の障害
● 運動率の高い元気な精子が極端に少ない
● 精子に奇形が見られる
● 精子に卵子の透明帯を通過する力がない
女性側の要因
● 精子を受けつけない抗精子抗体がある
体外受精の受精率を上げるには?
前述のとおり、体外受精で受精がうまく行かない場合、そもそも精子や卵子に障害がある可能性が高いため、なかなか普段の生活だけで改善することは難しいかもしれません。
しかし、できるだけ精子や卵子の質を良い状態に保つためには、健康的な生活を送るよう心がけることが大切です。
一般的に、体内で「活性酸素(過酸化水素)」が増えすぎると、精子も卵子も酸化ストレスによるダメージを受けてしまうと考えられています(※4,5)。
活性酸素の発生を抑えるためには、次のようなことに気をつけて過ごしましょう。
● しっかりと睡眠をとる
● 適度な運動をする
● ストレスを溜めない
● 喫煙・過度の飲酒をしない
● ビタミンA・C・Eを摂る
体外受精で受精しないときはどうする?
日本産科婦人科学会の報告によると、1回目の体外受精で受精がうまく行かなかった場合、2回目の体外受精も受精障害が起きる確率は40%です(※2)。
そのため一般的には、体外受精で良い結果が出なかった場合、顕微授精への切り替えを検討します。
顕微授精の場合、ガラス管を卵子に刺して、1匹の精子を直接注入するため、体外受精よりもさらに高い受精率が期待できます(※1)。
体外受精で受精しないなら顕微授精も検討を
タイミング法や人工授精で妊娠するのが難しい夫婦にとって、体外受精は高い確率での受精が期待できます。ただし、体外受精でも受精できないケースもあるので、その場合はパートナーや医師と相談のうえ、顕微授精を検討するのも一つの方法です。
体外受精にしても顕微授精にしても、経済的負担がかかるものですし、年齢が上がるとともに受精したあとの妊娠率は低くなっていきます。不妊治療をいつまで続けるのか、どの段階までチャレンジするのかについて、夫婦でじっくり話し合っておきたいですね。