胚盤胞とは?受精卵のグレードで着床率が違うの?

監修医師 産婦人科医 永瀬 絵里
永瀬 絵里 産婦人科専門医。2001年、東海大学医学部卒業。神奈川県内の病院で産婦人科医としての経験を積み、現在は厚木市の塩塚産婦人科勤務。3児の母。「なんでも気軽に相談できる地元の医師」を目指して日々診療を行っ... 監修記事一覧へ

体外受精や顕微授精で妊娠するためには、受精卵の体外での成長が不可欠です。最近では、受精卵が「胚盤胞」という状態になるまで培養し、女性の子宮に胚移植する方法が主流になってきています。今回は、不妊治療を検討しているか、いま取り組んでいる人が気になる胚盤胞について、受精してからの日数や、グレードと着床率の関係などについて、詳しくご説明します。

胚盤胞とは?

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そもそも胚盤胞とはどのような状態をいうのでしょうか?

まず、精子と卵子が出会って受精すると受精卵が生まれ、そのあと細胞分裂を繰り返します。最初は1つの細胞だった受精卵は、受精2日後には細胞が4分割され、3日後には8分割と、倍々で増えていきます。

細胞分裂で分かれた細胞は、その後互いにくっつき始めて、受精4日後に「桑実胚」、受精5日後には「胚盤胞」へと変化します。胚盤胞は、外側を覆う「外細胞膜」という膜や、胎児の元になる「内細胞塊」で構成されます。

細胞分裂を繰り返しながら卵管の中を進んでいた受精卵は、桑実胚の状態で子宮にたどり着き、胚盤胞の状態で子宮内膜に着床することで妊娠が成立します。つまり、受精卵が着床できる状態に変化した姿が胚盤胞です。

胚盤胞は何日目に移植するの?

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体外受精や顕微授精では、体外で精子と卵子を受精させて受精卵を作り、それを子宮に戻して妊娠を待ちます。受精後2~3日ほど体外で培養した受精卵(胚)を子宮に戻すことを「初期胚移植」と呼びます。

近年は、医療技術の進歩により、初期胚よりもさらに成長が進んだ状態まで受精卵を培養させてから胚移植できるようになりました。受精卵を4~5日ほど培養して、桑実胚を子宮に戻すのが「桑実胚移植」、受精から5~6日後に胚盤胞の状態で移植するのは「胚盤胞移植」です。

胚盤胞を移植するメリットは?

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体外受精・顕微授精において、受精卵を胚盤胞になるまで培養してから胚移植するメリットは、主に2つあります。

良質な胚を選定できる

初期胚の時点では、胚の良し悪しを見極めることができず、順調に成長するかどうかは移植してみないとわかりません。

しかし、もし体外受精などで複数の胚が得られて、胚盤胞まで順調に培養することができれば、子宮に戻す良質な胚を選別することができます。

初期胚よりも着床率が高い

一般的に、初期胚よりは桑実胚、桑実胚よりも胚盤胞というように、受精卵の成長が進んでいる状態で移植するほど、胚移植1回あたりの着床率(妊娠率)は高くなります(※1)。

胚盤胞移植の場合、胚盤胞の状態まではすでに細胞分裂しているので、移植後に子宮の中で自力で成長する期間が短くて済みます。

サンプル数の多い統計データはあまりありませんが、ある病院の臨床成績によると、約52%という胚盤胞移植の着床率も報告されています(※2)。

胚盤胞移植のリスクは?

注意

ほかの胚移植方法と比べて着床率が高いなど、妊娠したい人にとってメリットの大きい胚盤胞移植ですが、次に挙げるような難点やリスクがあることにも留意しておきましょう(※1)。

胚盤胞まで育つ確率が低い

そもそも、受精卵が胚盤胞まで到達する確率は30~50%とあまり高くないため、いくつか培養した受精卵のうち1個も胚盤胞まで育たず、胚移植自体がキャンセルとなってしまうこともあります。

もしかすると、その受精卵が胚盤胞になるまで待たず、初期胚や桑実胚の段階で子宮に戻していたらうまく着床していたかもしれません。培養液よりも子宮の中の方が、受精卵が育つのに適した環境である場合もあるためです。

こういった理由から、「胚盤胞移植1回あたりの着床率」は比較的高いものの、「採卵1回あたりの着床率」で見ると、初期胚移植とあまり変わらないという見解もあります。

多胎妊娠が起こりやすい

2008年、日本産科婦人科学会は「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする」という見解を出し(※3)、近年では双子や三つ子などの多胎率は着実に減少しています。

しかし、胚盤胞まで受精卵を培養して胚移植すると、一卵性双胎が3%程度起こるというデータもあります。多胎妊娠は早産や低出生体重児などのリスクが高まる可能性もあるので、注意が必要です。

胚盤胞にはグレードがある?着床率が違う?

胚盤胞のグレード

受精卵には、成長段階に応じて「グレード」があり、胚盤胞のグレード分類には「Gardner分類」が主に使われています。胚盤胞の中の空間で液体が溜まっている「胞胚腔」、胎児の元となる細胞の「内細胞塊」、そして胎盤に変化する「外細胞塊」、それぞれの状態を下記のとおり分類します(※1)。

1. 胞胚腔の広がり具合によって、1~6段階に分類
2. 内細胞塊の形と細胞数をA~Cに分類
3. 外細胞塊の形と細胞数をA~Cに分類

これら3つの数字とアルファベットを合わせて「3AA」「4BC」というように表記します。数字が大きいほど成長段階が進んでおり、アルファベットはAが一番良い状態です。

たとえば同じグレード4の胚盤胞でも「4AB」なら「内細胞塊の状態が良く(A)、外細胞塊の状態が普通(B)」、「4BA」なら「内細胞塊の状態が普通(B)で外細胞塊の状態が良い(A)」ということを意味しています。

グレードが高く、状態も良い胚盤胞ほど着床率は高くなります。胚盤胞の質を判断したうえで、できるだけ良質なものを子宮に戻すことが、着床率(妊娠率)アップにつながります。

胚盤胞の長所と短所を理解しましょう

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体外受精・顕微授精において、胚盤胞移植は着床率が比較的高い胚移植の方法です。ただし、受精卵が胚盤胞まで育つかわからない・多胎妊娠のリスクがあるなどの難点もあるので、メリットとデメリットの両方を考慮したうえで、自分に合った方法を選びましょう。

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