人工授精後の過ごし方について、「安静にしていたほうが妊娠確率が高いのでは?」と考える人も多いようです。ただ、どこまで気を使えばいいのかわからず、人工授精後の過ごし方を気にするあまり、かえってストレスを感じてしまうことも。そこで今回は、人工授精後の過ごし方が妊娠に影響するのか、どんな過ごし方がいいのか、性行為などの夫婦生活はどうしたらいいかなど、気をつけることをご紹介します。
そもそも人工授精とはどんな治療?
人工授精とは、男性から精子を採取し、女性の子宮内にカテーテルを利用して精子を直接注入して妊娠を目指す、不妊治療の一つです。タイミング法で妊娠しなかった場合や、男性不妊が原因となる不妊症の際に、人工授精が採用されます(※1)。
人工授精後の過ごし方で成功率が変わる?
人工授精は、精子を子宮内に直接注入する以外は、ほとんど自然妊娠と同じであるため、人工授精後の過ごし方で大きく妊娠率が変わることはありません。
受精して着床するまでの短期間で、何かをしたから妊娠率があがる、何かをしなかったから妊娠率が下がる、という劇的な影響がある行為は基本的にありません。
ただし、人工授精も自然妊娠も同じように、妊娠したかどうかに神経質になって、不則な生活やストレスが溜まってしまうとよくありません。人工授精後の過ごし方としては、無理に安静に過ごそうとせず、普段通りの生活を心がけることが大切です。
人工授精後の過ごし方で気をつけることは?
人工授精後の過ごし方として「ずっと横になっていたほうがいいのかな…」などと無理して安静にしようとする必要はありません。しかし、できるだけ「妊娠しやすい体作り」を心がけましょう。
なかなか即効性があるものではありませんが、生活習慣の改善で、妊娠しやすい体作りを目指すことは可能です。例えば次のようなことに取り組んでいきましょう(※1)。
冷え性対策
冷え性を放置してしまう女性も多いですが、「体の冷えは万病のもと」といわれるように、体調を悪化させやすい体質です。
特に、冷え性によって体内の血流が悪くなり、ホルモンが運ばれにくくなると、着床に必要な子宮内膜の成長に影響が出て、妊娠しにくい体になってしまうことも。
人工授精後も、寝るときは腹巻をする、足首を冷やさないように靴下を履く、体を温める飲み物を積極的に摂る、適度な運動を行うといった行動を心がけましょう。
栄養バランスを整える
着床しやすくして妊娠率を上げるという意味では、栄養バランスの取れた食生活で体の調子を整えることが大切です。また葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げるために、厚生労働省がサプリメントでの摂取を推奨しています(※2)。
人工授精後の食事にプラスして、葉酸サプリメントを摂取することをおすすめします。
ストレス発散に適度な運動
ストレスは体の血行を悪くし、妊娠するために必要なホルモンの分泌や、体内環境に影響を及ぼしてしまいます。ストレスの発散や血流の改善には、ウォーキングやストレッチといった適度な運動がおすすめです。
ただし、人工授精後は念のため激しい運動を控えて、心地よい疲労を感じる程度の運動を行うようにしましょう。
人工授精後の過ごし方、飲酒や喫煙はNG?
人工授精後の過ごし方で気をつけることはいくつかありますが、どれも一般的なものばかりです。たとえば、疲れ果てるほどの激しい運動は控える、酩酊するくらい飲酒しない、毎日夜更かしをしない、喫煙はしないといったことです。
妊娠に向けた注意点というよりも、健康的な体作りという視点で、生活習慣を変えてくださいね。
人工授精後の性行為は大丈夫?
人工授精後の夫婦生活として、性行為をしてよいのかも気になりますよね。
人工授精後の性行為については、医師によって意見が分かれるところです。夫婦生活を営むことが心の安定や癒しに繋がるという意見もあれば、性行為によって子宮収縮や感染症につながる可能性があるという意見もあります。
そのため人工授精後の性行為については、担当医師に指示を仰いだほうが良いでしょう。
人工授精後の腹痛や出血の症状は危険なの?
人工授精後、数日間は腹痛が起きたり、おりものに血が混じっていたりすることがあります。
程度が軽ければ問題ありませんが、出血量が多い、あるいは痛みが激しいときはすぐ病院に連絡しましょう。多量の出血や激しい腹痛は、精子を注入する際に腟内が傷ついた可能性があるからです。さらに、感染症にかかる可能性もゼロではありません。
また、人工授精から数日後の腹痛や出血は、着床によるものの可能性もあります。着床時の腹痛に医学的な根拠はありませんが、一般的には「着床痛」と呼ばれ、妊娠兆候の一つとして知られています。
同じく着床時に出血することは「着床出血」と呼ばれ、受精卵が子宮内膜に着床するときに子宮壁が傷つくことで出血すると考えられています。
ただし、着床痛も着床出血も起こらない人が多く、人工授精後に腹痛や出血が起きなくても妊娠していないということではないので、安心してください。
人工授精後に注射を打つこともある?
人工授精では、精子を注入するタイミングを排卵に合わせるため、排卵誘発剤が使用されることが多くあります。通常の生理周期に合わせて、内服薬や注射によって排卵を促します。
また、体の状態によっては、人工授精を行った後にさらに注射を打つ人もいます。このときに使用する注射の一つにhCG注射があり、黄体ホルモンの分泌を促して、子宮内膜を維持するように働きます。ほかに、黄体ホルモンを直接注射する方法もあります。
人工授精後の過ごし方は夫婦でリラックスを
人工授精後の過ごし方は、妊娠を期待している人にとってはとても気になるところだと思います。
しかし、人工授精後の過ごし方や気をつけることなどを気にしてストレスをためてしまうと、かえって体調を崩す原因となることも。不妊治療中は、ストレスをできるだけためず、規則正しい健康的な生活を心がけましょう。
「今度こそは」と考えすぎず、リラックスした生活を送ることも妊娠しやすい体作りに必要なことですよ。