不妊治療中に医師から人工授精をすすめられたとき、「痛みがあるのでは?」「リスクは高くないの?」と心配する女性も多いようです。実際のところはどうなのでしょうか?今回は、人工授精のどの段階で痛みを感じることがあるのか、薬の副作用など気をつけたいリスクはどんなものかをご説明します。
人工授精(AIH)とは?
一般的に、不妊治療はまずタイミング法からスタートし、次のステップとして人工授精(AIH)が検討されることが多くあります。
人工授精は、男性の精子を採取し、その精子を人工的に女性の子宮内に注入して妊娠を目指す方法です。精子の数や運動率に問題があったり、女性の子宮頸管粘液がうまく分泌されていなかったりする場合、人工授精によって妊娠率が上がることが期待できます(※1)。
年齢などにもよりますが、通常は、3~6周期ほど人工授精を実施して妊娠しない場合は、体外受精や顕微授精に切り替えることを検討します(※2)。
人工授精の痛みやリスクは?
人工授精は、痛みがほとんどない治療とされていますが、感じ方には個人差があり、次のような場面で痛みを感じる人もいます。
カテーテル挿入による痛み
精子を子宮内に注入するために、カテーテルという器具を腟から挿入する必要があります。そのときに、子宮の入口が狭かったりするとカテーテルが入りづらく、圧迫されているような痛みを感じる人もいます。
また、カテーテルと子宮頸管がこすれることで、少量の出血が見られることも。そのため、人工授精当日は念のため生理用品を持参するよう医師から指示される場合もあります。
子宮の収縮による痛み
人工授精には、精液を原液のまま子宮に注入する方法と、精液を洗浄して動きの良い精子を選別した後で注入する方法があります。
原液のまま注入するときには、精液に含まれるプロスタグランジンという成分が子宮の収縮を引き起こし、腹痛が生じることがあります(※1)。このプロスタグランジンは、生理痛や陣痛の原因のひとつとも考えられています。
洗浄後であればプロスタグランジンは取り除かれているため、子宮の収縮に伴う痛みを感じないことが多いようです。
子宮内感染のリスク
人工授精の処置において、まれに子宮内に炎症が起こることもあるので、予防的に抗生剤を内服することも多くあります。
人工授精が終わって帰宅したあとでも、腹痛などの体調不良を感じたときには、そのまま放置せず、治療を受けた病院に連絡しましょう。
人工授精の痛みをやわらげるには?
インターネットなどで、人工授精を経験した先輩ママの声を見聞きして、「人工授精が痛かったらどうしよう」と不安に思っている人もいるかもしれません。
しかし、「ノセボ効果」といって、思いこみで余計に痛みを感じてしまうケースもあるので、あまり心配しすぎない方がよいかもしれません。痛みを感じない人も多いので、気楽に捉えておきましょう。
また、人工授精を受けるときに緊張のあまり体に力が入りすぎると、カテーテルが腟内に入っていきづらく、痛みを感じる可能性もあります。目を閉じて深呼吸するなど、できるだけリラックスしてみてくださいね。
人工授精は薬の副作用で痛みがある?
人工授精を行う前に、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、排卵を促すことがあります。これは、複数の卵胞発育を促進することで、より質の良い卵子を得て、妊娠率を高めるためです。
排卵誘発剤を使用すると、副作用として、卵巣が過度に刺激されて腫れてしまう「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」が起きることもあります(※2)。
排卵誘発後に、お腹の張りや痛みを感じたり、吐き気や嘔吐、呼吸困難などの症状が現れたりしたときは、すぐにかかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
人工授精のリスクを気にしすぎないで
人工授精は、精子を人工的に子宮内に注入する以外は、自然妊娠に近い方法といえます。そうはいっても、痛みやリスクが気になる人もいるかもしれませんが、不安なことがあれば産婦人科の医師に相談して、できるだけリラックスして人工授精に臨めるといいですね。
なお、自然妊娠と同じく、不妊治療による妊娠の確率も年齢が上がるにつれて低くなっていくため、不妊の原因や年齢によっては早めに体外受精・顕微授精への切り替えを検討する必要があります。今後の治療方針についても、家族や医師と相談しておきましょう。