子宮内膜症や子宮筋腫によって、ひどい生理痛などに悩まされている人で、「ミレーナ」の装着を検討している人もいるのではないでしょうか。日本では2014年に月経困難症と過多月経の治療薬として保険が適用されるようになり、少しずつ知られるようになってきました。そこで今回は、ミレーナの副作用について、どのような症状が出るのかご説明します。
ミレーナとは?
「ミレーナ」とは子宮内避妊システム(IUS)のことで、2007年に発売が開始され、2014年からは「月経困難症」と「過多月経」の治療薬として保険が適用されるようになりました(※1)。
現在、過多月経の治療薬として国内外の治療指針で推奨されていて、世界で広く使用されています。
ミレーナは子宮内に装着する避妊具です
ミレーナから持続的に放出される「黄体ホルモン」が子宮に作用し、子宮内膜を薄い状態で保つことで生理の回数を減らしたり、経血量を少なくしたりします。
またミレーナは、子宮内膜に作用して妊娠の成立を妨げたり、子宮の入り口の粘液の状態を変えることで、精子が子宮の中に進入するのを妨げたりします。
ミレーナは、経口避妊薬やコンドームよりも高い避妊効果がありますが、避妊目的で処方を希望する場合は保険が適用されません(※1,2)。
ミレーナの費用は?
医師の診察によって過多月経と診断されてミレーナを装着する場合は、初診料などを含め11,000〜15,000円程度かかることが多いようです。
避妊目的でミレーナを装着する場合は保険が適用されないため、初診料を含め50,000円程度かかるようです。
費用は病院によって異なるので、事前に確認しておくと安心ですね。
ミレーナを使えない人はいる?
ミレーナは一度装着すると複数年に渡って効果が持続するものなので、使うことができない人もいます。
具体的には、性器がん(外陰がん、腟がんなど)の人、黄体ホルモン依存性腫瘍の人、子宮に異常がある人、カンジダ症を除く性器感染症がある人などは使えません(※3)。
他にも細かく条件があるので、事前の診察ではこれまでの病歴などを正しく報告する必要があります。詳しくは医師に確認しましょう。
ミレーナの装着時に気をつけることは?
ミレーナは子宮内に直接装着するため、挿入時に痛みを感じたり出血したりすることがあります。そのほか、悪臭のするおりものが出たり、腰痛が現れたりすることもあります(※3,4)。
これらの症状がひどい場合や、症状が長引く場合は、すみやかに婦人科を受診してください。
ミレーナで出血が止まらないことがある?
個人差はありますが、ミレーナを装着してから数ヶ月間は、多くの女性に生理のタイミング以外で出血が見られます。
しかし、黄体ホルモンの作用によって次第に子宮内膜が薄くなり、生理の回数や経血量が減っていけば、やがて出血は治るのが一般的です。いつまで経っても出血が治らない場合は、婦人科を受診してください。
ミレーナの副作用は?腹痛はある?
ミレーナを装着すると、下記の副作用が見られることがあります(※1,3)。
● 生理の出血日数が長くなる
● 生理周期の変化
● 卵巣のう胞(ホルモン変化による一時的なもの)
● ミレーナを取り除いた後の出血
● 生理のタイミング以外での出血
● ミレーナが抜け落ちてしまう
● ミレーナが子宮壁に入り込んでしまう
● 腹痛
とくに腹痛がみられた場合は、下記の病気を発症している可能性があり、注意が必要です(※3,4)。
骨盤内炎症性疾患
ミレーナの挿入によって感染症を引き起こし、骨盤内で炎症が起きます。腹痛に加えて、37度台の発熱、悪臭のおりもの、不正出血がみられます。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
受精卵が子宮以外の場所に妊娠することを異所性妊娠といいます。下腹部の痛みに加え、気を失ったり、不正出血がみられたりします。
卵巣嚢胞破裂(らんそうのうほうはれつ)
嚢胞ができたとしても、通常2〜3ヶ月で自然に消失しますが、まれにそのまま残り、破裂することがあります。破裂すると、下腹部の痛みや腹部の張った感じが続いたり、腰痛がみられたりします。
そのほか、おりものの異常、急な出血、性交痛が見られたら、すみやかに婦人科を受診してください。
ミレーナの副作用で太る?
「低用量経口避妊薬を服用すると、むくみが出たり太ったりする」と言われていることから、「ミレーナを装着すると太るのでは?」と心配している人もいるようです。
しかし実際は、経口避妊薬と体重の増加に因果関係は認められていませんし、ミレーナを装着することで体重が増えるという報告もありません(※1,3,5)。
「ミレーナの副作用で太るかも」という心配はいりませんよ。
ミレーナは副作用を正しく理解して使おう
子宮筋腫や子宮腺筋症などがあって過多月経の状態になると、毎月の生理が憂うつですよね。過多月経の症状を抑えるためにピルを服用している人もいると思いますが、飲み忘れの心配や、血栓などの副作用のリスクもあります。
ミレーナにも副作用がありますが、装着してしまえば、複数年に渡って効果が期待できるメリットもあります。
ミレーナはすべての人が装着できるわけではありませんが、過多月経に悩む人は、治療法のひとつとして医師に相談してみてもよいですね。