「乳がん」は、女性にとって身近で気になる病気だと思います。乳がんになるリスクを少しでも減らしたい、と思う女性は多いのではないでしょうか。「授乳をしていると乳がんのリスクが減る」と聞いたことがある人もいるかもしれません。そこで今回は、乳がんのリスクと、授乳をすることで乳がんの発症率が低くなるのかをご紹介します。
乳がんとは?
乳房は、母乳を作る「乳腺」と脂肪などから構成されています。乳がんとは、乳腺を構成する「乳管」あるいは「小葉」の細胞から発生する悪性の腫瘍のことを言い、女性が最もかかりやすいがんです。
乳がんは30代後半から徐々にかかりやすくなり、患者数は40歳代後半から50歳代にかけてがピークです(※1)。
乳がんは、他のがんと比べて比較的進行が遅く、早く発見できれば、5年生存率は90%以上と言われています(※2)。そのため、定期的にチェックすることで早期に発見することが大切です。
授乳中のしこりは乳がんなの?乳腺炎との違いはなに?
授乳中、胸にしこりのようなものがあると、「乳がんなのかな?」と心配になるかもしれません。しかし授乳中のしこりは、乳がんではなく乳腺炎によるものの可能性が高いでしょう。
乳腺炎とは、母乳を外へ運ぶ管である「乳腺」に母乳が溜まってしこりができ、炎症を起こした状態をいいます。
乳腺炎になっている場合、しこりだけでなく、乳房の痛み、腫れ、発熱といった症状があり、「赤ちゃんに授乳をするとなんだか乳房がチクチク痛む」というのは乳腺炎の前兆です。
乳がんの場合、乳房の痛みや発熱といった症状は基本的にないので、こうした症状がある場合は乳腺炎だと考えられます。
また、乳腺炎と乳がんのしこりには下記のような違いがあります。判別が難しいこともあるので、違和感を覚えた場合は早めに病院を受診しましょう。
乳腺炎のしこりの特徴
乳腺炎でできるしこりは、押したりつまんだりすると動く、弾力性がある、場所によって固かったり柔らかかったりするという特徴があります。
また、しこりを押すと痛みがある場合も、乳腺炎のしこりである可能性が高いです。
乳がんのしこりの特徴
乳がんのしこりは、押しても動かず石のようにゴツゴツしています。触った感じは、「こんにゃくの下に豆を置いて触ったような感触」と表現されます。しこりを押しても、特に痛みはありません。
授乳していると乳がんの発症率は低くなる?
授乳と乳がんの発症の関連を研究した報告は多数あり、授乳経験のある女性は、授乳経験のない女性よりも発症リスクが低いことが明らかになっています(※1)。
しかしこれはあくまでも発症リスクの話なので、授乳経験があるからといって乳がんにならないわけではありませんし、授乳経験がないからといって、必ず乳がんになるわけでもありません。
ですから、授乳中でも、乳がんを早期に発見するためにセルフチェックや乳がんの検診を定期的に行うことをおすすめします。
授乳中に乳がんの検査はできる?
乳房に違和感を覚えて検査をしたいけれど、授乳中は乳がんの検査ができないのではないか、と心配になるかもしれません。ですが、授乳中であっても、乳がんの検査を行うことは可能です。
乳がんの検査には、マンモグラフィと超音波検査の2種類があります。
マンモグラフィで写真を撮ると、乳腺と乳がんが白く写り、脂肪は黒く写ります(※1)。授乳中は乳腺がよく発達していて白く写る部分が多くなるため、マンモグラフィでは乳がんを発見することが難しい可能性が高いようです。
そのため、授乳中は超音波検査をする方が乳がんを発見しやすいと言えます。検査の際は医師に授乳中であることを伝え、より確実に乳がんかどうかを判断できる検査を受けるようにしてくださいね。
授乳中も乳がんの検診を忘れずに
乳がんは、先述のように早期発見がポイントとなります。授乳をしている女性の乳がん発症率は低いですが、あくまでもリスクが低いということであって必ずしも乳がんが発症しないというわけではありません。
30歳代後半から乳がんのリスクは徐々に高まっていくので、定期的にセルフチェックを行い、検診を受けるようにしましょう。
また、少しでも乳房に違和感を覚えたら、授乳中であっても早めに医療機関を受診してください。まずはかかりつけの産婦人科に相談するといいかもしれません。たとえその違和感が乳がんではなく乳腺炎によるものであったとしても、しっかりと対処してもらえますよ。
もしマンモグラフィーやエコーなどの精密検査が必要で、かかりつけの産婦人科で行えない場合には、乳腺外科を受診すると良いですよ。