20~30代の若い女性で患者数が増えている「子宮頸がん」。子宮頸がんで亡くなる人は、年間で約3,500人いるといわれます(※1)。早期発見できれば比較的治療しやすく、予後も良好ながんですが、発見が遅れると妊娠や出産の機会まで奪い、命を脅かす可能性もあります。今回は、子宮頸がんの治療について、手術や抗がん剤、放射線治療などの方法や、術後の過ごし方などをご説明します。
子宮頸がんとは?
子宮頸がんは、子宮の入り口の「子宮頸部」にできる悪性の腫瘍で、主に「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染が原因で発症します。
HPVにはいくつか種類があり、そのうちの「ハイリスク型ウイルス」への感染は、子宮頚部のがん化にやや注意が必要です。発症すると少しずつ時間をかけてがん細胞が増殖しますが、他のがんに比べて進行が早くないので、早期発見・早期治療が可能です。
しかし、HPVへの感染だけでは自覚症状がほとんど現れないため、1~2年に1回のペースで定期的に子宮がん検診を受けていないと発見が遅れ、病状を悪化させてしまう可能性があります。
子宮頸がんの治療方法はどうやって選ばれる?
子宮頸がんになる細胞は、最初の段階では「異形成(前がん状態)」と呼ばれる、正常な細胞とは異なる形をしています。この段階で発見できれば、がん細胞化する前に治療ができます。
子宮頸がんを発症してしまった場合は、がんの進行の程度や、患者の年齢、妊娠希望の有無、感染症の有無などを総合的に考慮して治療方法を選択します。
子宮頸がんの進行状況は下表のとおりⅠ~Ⅳ期に分類され、それぞれに合わせた治療法を行います(※2,3)。
子宮頸がんのステージ
ステージ | がんの状態 |
Ⅰ期 | 子宮頸部にのみとどまっている |
Ⅱ期 | 子宮頸部を越えて広がっているが、骨盤壁または腟壁の下3分の1には達してない |
Ⅲ期 | 骨盤壁まで達し、腫瘍と骨盤壁との間にがんでない部分がない。または腟壁への広がりが下3分の1まで達している |
Ⅳ期 | 小骨盤腔を越えて広がるか、膀胱・直腸の粘膜にも広がっている |
子宮頸がんのステージⅠ・Ⅱの治療法は?
子宮頸がんの進行がⅠ~Ⅱ期の初期段階であれば、手術による切除が治療方法のメインになります。
円錐切除術
初期段階の子宮頸がんの治療法として最もよく行われる手術で、がん細胞のある子宮の入口部分(頸部)を円錐状に切除します。レーザーや高周波のメスを使う手術で、所要時間は10~20分程度です。
子宮の大部分が温存されますが、子宮頸管が狭くなったり、子宮口の癒着が起きることがあります(※3)。また子宮頸管が短くなることで、流産・早産になりやすくなることもあります。
子宮全摘出術
円錐切除術では病変を取りきれないほど大きく広がってしまった場合は、子宮の全摘出手術が行われます。
がんのステージが軽ければ子宮だけを摘出する「単純子宮全摘出術」、ステージが進んでいれば子宮の周囲の組織(卵巣やリンパ節、膣の一部など)も一緒に摘出する「広汎子宮全摘出術」が選択されます。
放射線療法・抗がん剤などの化学療法
手術と並ぶ主な治療に、放射線療法があります。膣内・子宮腔内から直接患部に放射線を当てる「腔内照射」と、転移の可能性がある骨盤のリンパ節も含めて体外から当てる「外部照射」を併用することで、高い効果が得られます。
病状によっては、放射線療法と同時に抗がん剤による化学療法を行うことで治療効果が得られることがあります。病状や年齢、持病などから、これらの適している治療が検討されます。
ただし、放射線療法も抗がん剤も様々な副作用が見られることがあり、治療期間や治療の種類も含めて医師とよく話し合う必要があります。
子宮頸がんのステージⅢ・Ⅳの治療方法は?
子宮頸がんがステージⅢ・Ⅳまで進行すると、手術が行われることはなく、放射線療法と抗がん剤による治療が併せて行われることがほとんどです。
また、再発や転移をした場合は、放射線治療が行われます。
子宮頸がんの手術後の過ごし方は?
子宮頸がんの治療後も、医師が体調を確認するために、定期的に通院して検査を受けます。経過観察のための通院の頻度は、病状や治療後の経過によって異なります。
一般的に、治療後1~2年目は1~3ヶ月ごと、3~6年目は3ヶ月~半年ごと、それ以降は1年ごとに通院して、再発がないか、体調に異常はないかなどの検査をします。場合によっては、外来で放射線治療や化学療法を継続することもあります(※4)。
手術後については、食生活や運動などの制限は特にないことがほとんどですが、体の回復に合わせて無理のない生活を送るようにしてください。
子宮頸がんは、若い女性が発症することが多い病気です。妊娠がしづらくなったり、卵巣の切除によりホルモンバランスが崩れ、更年期障害のような症状に悩まされたりすることもあるため、精神的なサポートが必要です。
不安なことがあればパートナーやかかりつけの医師とよく話し合い、時にはカウンセラーにも相談するなど、1人で抱え込まないようにしましょう。
子宮頸がんの治療方法は医師とよく相談を
今回ご説明したとおり、子宮頸がんの治療方法は進行ステージや患者の年齢、妊娠希望の有無など様々な要素を総合的に考えて選択されます。治療にあたって不明なことがあれば、担当医に相談してください。
子宮頸がんは、発見が早ければ早いほど、子宮を温存したまま治療できる可能性が高くなります。定期的な検診やワクチンの予防接種を受けることで、予防に努めましょう。