「シリンジ法」という不妊治療をご存知でしょうか?キットが市販されているため、誰でも手軽に行える方法として注目されています。そこで今回は、シリンジ法とはどのようなものなのか、キットを使うときのコツ、妊娠の成功率などについてご説明します。
シリンジ法とは?
シリンジ法とは不妊治療の一つで、採取した精液をシリンジと呼ばれる針の付いていない注射器を使って、女性の膣内に注入する方法です。「自己人工授精」や「スポイト法」などと呼ばれることもあります。
シリンジ法と人工授精の違いは?
人工授精との違いは、注入するものと注入する場所です。人工授精は精液から精子だけを取り出して子宮内に注入します(※1)。一方、シリンジ法では、精液そのものを膣内に注入します。
シリンジ法のメリットは?
シリンジ法のキットは市販されているため、自分たちで行うことができます。そのため、人工授精よりも経済的で、いつでも行えるという点がメリットです。
シリンジ法はどんな人が使用するもの?
シリンジ法は、病院で不妊の検査をしたけれど特に原因となるものが見つからなかった人たちや、子供は欲しいけれど女性が痛みを感じてしまったり、男性が膣内射精障害などを持っていたりするために、うまく性行為ができない人たちが行うことが多いようです。
シリンジ法の妊娠率は?
残念ながら、シリンジ法を使った場合の妊娠率に関する統計はありません。
そもそも、シリンジ法は採取した精液を腟内に注入するだけなので、基本的には性行為と同等だと考えられます。そのため、妊娠率が自然妊娠と比べて高くなるというわけではありません。
なお、自然妊娠のしやすさは、女性の年齢とともに低下していきます(※1)。そのため、シリンジ法による妊娠率も女性の年齢とともに下がっていくと考えられます。
シリンジ法キットのコツややり方は?
シリンジ法は不妊治療専門の病院などで行うこともありますが、キットが市販されているので、それを使えば自宅で行うこともできます。シリンジ法のキットには、シリンジとカテーテル、採取した精液を入れるカップがセットになっていることが多いようです。
以下はあくまで一般的なキットについての説明です。詳しくは、各キットに添付されている取扱説明書をよく確認してくださいね。
シリンジ法のやり方は?
ここでは、一般的なシリンジ法のやり方を紹介します。
1. 男性がマスターベーションを行い、カップに精液を入れる
2. シリンジの先端にカテーテルを装着し、カップ内の精液を吸い上げる
3. カテーテル部分を膣内に入れ、シリンジを押して精液を女性の膣に注入する
シリンジ法のコツは?
シリンジ法のコツとされているのは次の2つです。
採取した精液をすぐには吸い上げない
精液を採取したらすぐにシリンジで吸い上げてしまうのではなく、しばらく待ちましょう。待つことで精液が液状化し、吸い上げやすくなります。
精液を吸い上げる前に空気を少し入れる
シリンジで精液を吸い上げる前に、少しだけ空気を吸わせましょう。こうすることで、精液を残さず膣内に注入できるとされています。
シリンジ法に危険性はない?
手軽に行えるのがシリンジ法のメリットですが、次のような危険性があると考えられるため、行う際は注意しましょう。
女性が感染症にかかってしまうかもしれない
シリンジ法は誰もが自宅で行えます。しかしそのぶん、衛生面での危険性が考えられます。もし、手を十分に洗っていない状態などで行ったら、細菌が女性器に感染してしまい、炎症などを起こしてしまうかもしれません。
そうなってしまったら、妊活を中断しなくてはならなくなる可能性もあり、それだけ妊娠できるまでに時間がかかってしまいます。
そのため、シリンジ法を行うときは、しっかりと手を洗い、清潔な環境で行うようにしましょう。
不妊の原因の特定に時間がかかるかもしれない
シリンジ法ですぐに妊娠する女性もいれば、なかなか妊娠しない女性もいます。なかなか妊娠しないケースの中には、そもそも精子の数が少ないなど、シリンジ法では解決できないところに不妊の原因があることもあります。
その場合、病院で不妊の原因の特定をしてもらう必要がありますが、自己判断で病院に行かずにシリンジ法を行うことで、原因の特定が遅れてしまうかもしれません。
シリンジ法は使用前に医師に相談を
シリンジ法は簡単かつ経済的な方法のため、不妊に悩んでいる場合は試してみたいと思うかもしれませんね。膣内射精障害やED、生活時間のすれ違いなど、何らかの事情で子供が作りたくてもうまく性交ができない場合は、有効な方法の一つと言えます。
しかし、シリンジ法で妊娠が成功する確率はよくわかっておらず、使えば必ず妊娠できるというわけではありません。そもそも、原理的には通常の性交と同じため、特別妊娠しやすい方法とはいえない可能性があります。また、自宅で行う場合は衛生面での危険性などもあります。
シリンジ法を行うのであれば、事前に医師に相談しましょう。そのうえで本当にやる必要があるのかどうかをしっかりとパートナーと話し合い、納得のできる選択をしたいですね。