魚の目は足の裏や足の指などにできやすい、ありふれた皮膚病です。しかし、一般的には大人がなりやすく、他の皮膚病と区別がつきにくいこともあるため、子供に魚の目のようなものができたとしても、違う病気の可能性もあります。そこで今回は、魚の目は子供にもできるのか、魚の目の治療で市販薬を使ってもいいのか、イボやタコなどの他の皮膚病との違いについてご説明します。
魚の目とは?
魚の目とは、足の裏や足の指などにできる、直径5〜7mmくらいの硬いしこりのようなものです。激しい痛みを伴う皮膚病で、中心に魚の目のような芯が見えるので、魚の目と呼ばれています。
魚の目の正体は厚くなった角質です。何らかの理由で皮膚の一部に繰り返し異常な圧迫刺激が加わると、角質が厚くなって芯のようになり、魚の目となるのです。
また、角質の芯は角質層の下にある真皮に向かってくさび状に食い込んでいくことがあり、歩いたり、圧迫したりするとこの芯が神経を刺激するため、激しい痛みが起こります(※1)。
魚の目は子供にもできるの?
魚の目は、子供にもできる可能性があります。しかし、一般的には大人がなりやすい皮膚病です。
そのため、子供に魚の目のようなものがあったとしても、魚の目ではないかもしれません。例えば、後ほど説明する「足底疣贅(そくていゆうぜい)」や「ミルメシア」と呼ばれるイボなど、魚の目と区別がつきにくい皮膚病になることもあります(※1)。
魚の目に似た子供がなりやすい病気は?
上述の通り、皮膚病の中には魚の目と区別がつきにくいものもあります。そのため、子供に魚の目ができたと思っても、実は違う病気だった…ということもありえます。そこで、ここでは魚の目と似ている皮膚病について説明します。
イボ
イボとは、皮膚が盛り上がってできた小さなできもののことですが、その多くはウイルスが皮膚や粘膜に感染して起こります。
イボにはいくつも種類があり、それぞれ見た目が違います。
子供に最もよくみられるのが、手足にできる「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」です。そのほかには顔にできる指状疣贅(しじょうゆうぜい)」、足の裏にできて魚の目に間違えられやすいイボには、「足底疣贅(そくていゆうぜい)」「ミルメシア」というものがあります(※1,2,3)。
足底疣贅
足底疣贅は足の裏にできるイボで、体重が常にかかる部位にできるため表面が赤みを帯びています。硬くなり、赤みのある部分が広がると痛みを伴うことがあります(※4)。
ミルメシア
真ん中が少し陥没したイボで、足の裏や手のひらにできます。体重がかかったりして圧迫されると痛みがあるのも特徴です(※5)。
ミズイボ
ミズイボとは、伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)というウイルスに感染することで発症する、子供がかかりやすい皮膚病です。発症すると体のいたるところにミズイボができますが、通常のイボとは違い、手のひらや足の裏にはできないものです。
ミズイボは、表面がつるつるしており、みずみずしい光沢を持っています。大きさは直径数mmから5mmくらいで、盛り上がりのてっぺんが少し凹んでいます(※6)。
タコ
タコは、魚の目と同じように、皮膚の一部が慢性的な刺激を受けて角質層が厚くなる病気です。ただし、魚の目とは違い、刺激を受けたあたり全体の皮膚が少し黄色味を帯び、厚く硬くなって盛り上がります。
タコは、その人の持っている癖や生活習慣などに応じて、体のあちこちにできます。例えば、指しゃぶりや吸い癖のある子供の場合は、腕や手の甲に「吸いダコ」ができます。
タコには痛みがないことが多く、むしろ角質が厚くなったために感覚が鈍くなることがあります。痛みがあるときは、細菌感染を起こしている可能性があります(※7)。
魚の目などが子供にできたときの治療法は?
魚の目やイボ、ミズイボ、タコなどの治療法はいくつもあるため、その一例を以下で紹介します。どの治療法がベストなのかは子供によって違うため、医師とよく相談することが重要です。
取る
魚の目の場合、魚の目の大きさに切った「スピール膏」と呼ばれるシール状の医薬品を数日間貼り、角質を柔らかくした後に魚の目の中心部だけをメスやハサミで切り取ります。この方法は魚の目の治療で最も一般的です。
タコの場合も同様の治療が行われることがあります(※8)。
また、ミズイボも皮膚科・小児科では取ることが一般的ですが、その場合は痛み止めのシールを使用してピンセットで取ります。ただし、痛みや精神的苦痛を強いることがあるのが欠点です(※9)。
圧迫しないようにする
痛みの軽減や再発を予防するために、ドーナツ型のパッドなどを貼り、患部が圧迫されないようにすることもあります(※8)。
液体窒素で凝固させる
魚の目やイボなどで行われる治療法で、大きさに合わせた綿球に液体窒素を含ませて、その綿球を患部に当てて冷凍し、凝固させます(※8,10)。
電気で焼く
魚の目やイボなどで行われる治療法で、電気を流して患部を焼きます(※8,10)。
魚の目の子供に市販薬を使っていい?
魚の目やイボ、タコはありふれた皮膚病ですが、区別がつきにくかったり、他の皮膚病を併発していたりすることがあります。
また、診断が正しく、治療法が簡単であったとしても、正しく行われないとかえって有害なこともあります。例えば、魚の目を自分で治そうとして化膿させてしまうというケースもありえます。
そのため、子供が魚の目などの病気になったら、まずは病院に行きましょう。医師に正しく診断をしてもらい、適切な指導と管理の元に行えるのであれば、市販薬を使って自分で治療しても良いでしょう(※11)。
魚の目が子供にできたと思ったら病院へ
魚の目はイボと見分けがつきにくかったり、その他の皮膚病を合併していることもあります。魚の目のようなものが子供にできたら、まずは病院で診てもらってください。
悪化させたり、長引かせたりさせないために、子供には適切な治療を受けさせてあげてくださいね。
※1 日本皮膚科学会「Q11ウオノメと思って皮膚科を受診したら、イボと言われました。ウオノメとイボはどう違うのですか?また、ウオノメはどうしてできるのですか?」
※2 日本皮膚科学会「Q1そもそも、『イボ』って、いったい何ですか?」
※3 日本皮膚科学会「Q3イボ(ウイルス性疣贅)には、どんな種類がありますか?」
※4 エルゼビア・ジャパン株式会社『ネルソン小児科学 原著第19版』pp.2685-2687
※5 徳島県医師会「【質問】 子どもの右足指裏のイボについて」
※7 日本皮膚科学会「Q12ウオノメとタコはどう違うのですか?」
※8 日本皮膚科学会「Q13ウオノメやタコの治療はどうするのですか?」
※9 日本皮膚科学会「Q8ミズイボの治療はどうするのですか?」