卵巣がんとは?自覚症状はあるの?原因や治療法は?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

婦人科系のがんを発症しても、手術や治療を経て、妊娠・出産できた先輩ママは少なくありません。しかし、卵巣がんは自覚症状に気づかないまま進行しやすい病気なので、発見されたらすぐに治療を始めることが大切です。今回は、卵巣がんの原因や症状、検査・治療法のほか、手術後に妊娠できるのかについてもご説明します。

卵巣がんとは?

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卵巣にできる腫瘍の種類は様々ですが、そのうちの約9割は良性です(※1)。残りの1割を占める悪性の卵巣腫瘍が、いわゆる「卵巣がん」です。

もっとも多くみられるのは、卵巣の表面にできる「上皮性悪性腫瘍」ですが、他にも、卵胞の中にある卵子に原因がある「胚細胞腫瘍」などがあります(※2)。

いずれの卵巣がんも、初期症状が現れないことが多く、早期の発見が難しいといわれています。痛みなどの症状が現れたときには、すでに腫瘍が大きくなっていたり、ほかの部位に転移していたりと、症状が進行している可能性が高くなります。

卵巣がんの原因は?予防できるの?

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卵巣がんの原因ははっきりとはわかっていませんが、卵巣がんや乳がんの家族がいるなど、遺伝的リスクが指摘されています(※2)。

遺伝カウンセリングや検査で「自分が卵巣がんにかかりやすいかどうか」を知ることもできます。遺伝カウンセリングや検査費用は、多くが健康保険の適用外となり、カウンセリング1時間で1万円程度の費用がかかります。

遺伝以外だと、高脂肪の食事や肥満、喫煙が原因となる可能性が指摘されています(※2)。そのため、動物性脂肪を摂りすぎないことや、禁煙することは卵巣がん予防につながる可能性があります。

逆に、卵巣がんのリスクを下げる因子として「排卵が少ない」ことが挙げられています。すでに出産・授乳の経験がある、経口避妊薬(ピル)を一定期間飲んでいた、という女性は、そうでない人に比べて卵巣がんになるリスクが低いといわれています(※2)。

卵巣がんの症状は?

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初期の卵巣がんは無症状のことが多く、進行する前に発見することが非常に難しいという特徴があります。

しかし、早期発見につながる一つの可能性として、2007年に報告されたワシントン大学医学部による研究では、次のような症状が1ヶ月に12回以上、1年未満続いたときには、卵巣がんとの関連が有意である、という結果が出ています(※3)。

● 骨盤痛や腹痛を感じる
● トイレが近くなる(頻尿)
● お腹周りのサイズが増加した
● お腹の膨満感がある
● 食欲がなく、食べられない
● すぐに満腹感を感じる

一般的な人もこれら6つの症状を感じることがありますが、それほど回数は多くありません。これだけで卵巣がんだと判断することはできませんが、早期発見のためにも違和感があれば、婦人科系のがん検査・治療が可能な病院を受診しましょう。

卵巣がんは検査で早期発見できるの?

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がんの症状が現れる前に、がんを早期発見するための検査を「スクリーニング検査」といいます。様々ながんのスクリーニング検査について研究が進められているところですが、卵巣がんについては、早期発見や死亡率の低下に有効とされる検査方法は、未だ確立されていません(※2,4)。

ただし、卵巣がんを発見できる可能性のある検査として、膣内に指を直接入れて異常がないか調べる内診や、プローブという器具を挿入して調べる経膣的超音波検査、血液中の腫瘍マーカー値を見るCA125検査などが行われることもあります。

卵巣がんの治療法は?どんな手術をするの?

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基本的には、まず手術をし、その後化学療法を進めることになります。

手術では、卵巣・卵管・子宮・腸を覆っている脂肪組織を切除しますが、腫瘍の種類や進行状況によっては、リンパ節や他の臓器を切除することもあります。

自覚症状がないため、検査で発見されたときには症状が進行していることが多く、可能な限りの腫瘍を切除しても手術のみで完治することは難しいといわれています。そのため、手術後は抗がん剤による化学療法が行われるのが一般的な治療法です。

卵巣がんは不妊の原因になる?妊娠できないの?

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卵巣がんの基本的な手術では、卵巣や子宮などの生殖器を切除するため、手術後の自然妊娠は難しくなります。

ただし、患者が妊娠・出産を望んでいて、主に卵巣がんの進行が初期段階(I期)の場合、がんがある片側の卵巣や卵管のみを切除し、子宮ともう片方の卵巣を温存する「妊孕(にんよう)性温存手術」が行われることがあります。

しかし、腫瘍の種類やがんの進行度、転移などの状況次第で、妊孕性温存手術ができない場合もあります。温存手術の利点とリスクの両方について主治医からしっかり説明を受け、家族とも相談の上、慎重に決定してください。

卵巣がんが発見されたらすぐに治療を

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卵巣がんは、婦人科系がんの中でも稀な病気ですが、自覚症状がほとんどないため、早期発見が難しいだけでなく、進行してしまった場合の死亡率が高いのが特徴です。

現在のところ、確実に卵巣がんを発見できるスクリーニング検査はありませんが、妊婦健診やその他の病気の検診などで偶然見つかることもあるので、定期的に婦人科で診てもらいましょう。

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