赤ちゃんのおへそが飛び出ている「でべそ」のことを医学的に「臍ヘルニア(さいへるにあ)」と呼びます。たいていの赤ちゃんは自然に治りますが、稀に治らない子もいて、場合によっては重い合併症になる可能性もあるため注意が必要です。また、見た目にも影響するため、赤ちゃんが将来嫌な思いをするかもしれません。そこで今回は、赤ちゃんが臍ヘルニアになっても慌てずにすむように、臍ヘルニアとはどのような病気なのか、手術が必要なのか、手術以外の治療法はないのかなどを説明します。
臍ヘルニアとは?
臍ヘルニアとは、不自然におへそが出っ張っている状態のことで、「でべそ」と呼ばれたりもします。痛みがあることはごく稀です(※1)。出産時のへその緒の処置が悪かったせいで臍ヘルニアになると勘違いする人もいますが関係ありません(※2)。
臍ヘルニアによる合併症は少ないのですが、場合によっては「嵌頓(かんとん)」という病気になることもあります。これはおへそから腸が飛び出して、しめつけられて赤くなり、壊死することもある病気なので注意が必要です(※3)。
臍ヘルニアの原因は?
臍ヘルニアは、赤ちゃんのお腹の筋肉に開いている穴が原因で起こります。
ママのお腹の中にいるときの赤ちゃんは、ママとへその緒でつながるためにおへその部分の腹筋に穴が開いています。この穴が生まれてからしばらくたっても完全にはふさがらず、泣いたり、いきんだりしてお腹に圧が加わると、お腹の内側を覆っている腹膜が穴から飛び出します。
飛び出した腹膜の中に腸が入ったり出たりすることで皮膚が持ち上がり、臍ヘルニアになります(※4)。
臍ヘルニアは赤ちゃんや子供がなる病気?
臍ヘルニアは赤ちゃんがなりやすい病気です。ただし、生まれたばかりよりも生後2ヶ月目くらいの赤ちゃんで最も大きくなることが多く、その後は次第に小さくなっていき、9割以上の赤ちゃんは2歳になるまでに自然に治ります。
ただし2歳までに臍ヘルニアが治らない場合は、その後自然に治ることはほとんどありません(※4)。
臍ヘルニアの治療法は?圧迫すれば治る?
臍ヘルニアの治療では、おへそをガーゼなどを使って圧迫する方法が行われます。
まず、臍ヘルニアの大きさに合わせてガーゼなどを丸めて球を作ります。その球でへその飛び出た部分を押し込むようにして、テープで固定します。このように圧迫することで臍ヘルニアの治りが早くなります(※1)。
自宅でも可能な治療法なので、テープが剥がれたりした場合は自分で交換するように医師から指導される場合もあります(※1)。ガーゼやテープの交換頻度やガーゼをつけたままお風呂に入れていいのかなどについては、医師に確認してください。
なお、昔はおへその上に5円玉などをテープで貼って押さえつける方法が取られていましたが、これはおへその皮膚から感染を引き起こし、重大なトラブルになることがあるため、決してしないでください(※4)。
臍ヘルニアに手術は必要?手術後の注意点は?
臍ヘルニアは手術が必須というわけではありませんが、ガーゼなどによる圧迫でも臍ヘルニアが治らなかった場合、2〜3歳以上の子供を対象に、希望者に対して腹筋の穴をふさぐ手術を行うことがあります。手術時間は30分程度で、入院期間は1〜2日程度です。
退院後は、発熱がなければシャワーを浴びたり、お風呂に入ったりしてもかまいません。ただし手術後約3週間は、鉄棒や激しい接触の多いスポーツなど、へそのあたりに直接力が加わる動きは避ける必要があります(※1)。
なお、臍ヘルニアの手術には健康保険が適用されます(※5)。また、自治体によっては緊急性がある場合などに助成を行なっている場合もあるので、お住まいの自治体に問い合わせてみてください(※6)。
臍ヘルニアと臍帯ヘルニアの違いは?
臍ヘルニアと似た名前の病気に「臍帯ヘルニア」があります。
臍ヘルニアはへその緒が取れた後に腸が飛び出す病気です。一方、臍帯ヘルニアは、ママのお腹の中にいるときに赤ちゃんのお腹の壁が正しく作られず、穴が開いてしまい、その穴からへその緒の中へ腸や胃が飛び出した状態で生まれてくる病気です。
臍帯ヘルニアは臍ヘルニアと違い、いろいろな奇形を合併していることもあり、飛び出た臓器をお腹の中に戻し、穴をふさぐ手術をしなければなりません(※7)。
臍ヘルニアは2歳を過ぎたら注意しましょう
臍ヘルニアは、痛みはなく、2歳ごろまでには自然に治る赤ちゃんが多いため、それほど心配する必要はありません。
ただし、2歳を過ぎても治らない場合は注意しましょう。自然に治ることがほとんどなく、そのままにしておくと保育園などで、「おへその形が変だ」といじめられてしまったり、臍ヘルニアが嵌頓になった場合には腸が壊死してしまう可能性があるからです。
そのため、もし子供が2歳を過ぎても臍ヘルニアが治っていなかったら、一度小児科で診てもらった方がいいでしょう。家族で話し合って、子供が大きくなった時に悲しい思いをしなくてすむようにしてあげたいですね。