CRPは、血液検査で計測される項目としては一般的なものです。しかしその意味をきちんと理解している人は、あまり多くないのではないでしょうか。CRPは病気の種類や進行具合を図る重要なサインで、「概ねこの数値を超えると病気の疑いがある」という基準値があります。今回は、CRPの基準値が大人と小児で違うのか、基準値より高い場合や低い場合はどんな病気が疑われるのか、といったことについてご紹介します。
CRPとは?
「CRP」とは、C-reactive proteinの略称で、日本語では「C反応性たんぱく」と呼ばれます(※1)。
人は、細菌やウイルスに感染した際、体を守るために炎症が起きて損傷部から異物の侵入を防ぎます。その際、肝臓が血液中に放出するたんぱく質が、CRPです。
CRPの値は血液検査で測定できますが、急性の炎症が起こった際には、その値が1,000倍にも増えるとされています(※2)。
CRPが高い場合は、体内のどこかに炎症や癌などがある可能性があります(※3)。ただし、CRPの数値と関連性のない病気もあるので、CRPの値が低いからといって体に異常がないというわけではありません。
またCRPの値は、炎症が発生してから12~24時間程度経過してから上昇するため、治療を始めた後にCRPの値が上昇する場合もあります。
CRPの基準値は?小児は違う?
成人におけるCRPの基準値は、以下の数値とされています(※3)。
- 基準範囲:0.30mg/dL以下
- 要注意:0.31~0.99mg/dL
- 異常:1mg/dL以上
1mg/dL以上であれば、体内に何らかの炎症が起こっていることが考えられます。
また子供の正常値も同様に0.3mg/dL以下ですが、1mg/dL以下であればほぼ正常とされています。ただし、肺炎球菌などの細菌感染や、腹膜炎、自己免疫疾患などの重症時は10mg/dL以上になることもあります(※4)。
CRPが基準値より高い場合は?
子供でCRPが高い場合、主に以下のような病気の疑いがあります。
細菌性感染症
ウイルス性感染症より細菌性感染症の方が、CRPの値が上がりやすいという傾向があります。18歳以下の小児患者において、細菌感染症の患者は、ウイルス感染症の患者よりCRPの値が高いという報告があります(※5)。
細菌性感染症で代表的なものは、肺炎球菌・ヒブなどの細菌性髄膜炎・菌血症・肺炎があります。
ただし、ウイルス性の感染症であっても、CRPの値が上がらないというわけではありません。夏風邪の一つであるアデノウイルス(プール病)ではCRPが上昇することがあります。
あくまでも細菌性感染症と比べると、上昇の幅は緩やかであるということです。ウイルス性感染症で代表的なものは、手足口病、RSウイルス、インフルエンザ、ヘルパンギーナがあります。
新生児・乳児の消化管アレルギー
牛乳が原因の大半を占めますが、大豆、米、野菜、果物、魚などが原因で、消化管のアレルギーにより、CRPの数値が上昇することもあります(※6)。
川崎病
川崎病は、1967年に川崎富作博士が発表したことでその名がつけられた病気です(※7)。特に日本人や韓国人など、アジア系に多い病気です。
川崎病の原因ははっきりしていませんが、ウイルスや細菌に感染したことから免疫反応が起きて全身の血管に炎症が起こると考えられています。川崎病が発症すると、CRPの数値が上昇します。
小児がん
小児がんとは、白血病、脳腫瘍、神経芽腫(しんけいがしゅ)など、子供に起きる様々ながんの総称です(※8)。
小児がんにより、正常な白血球数が低下することもありますが、小児がんの治療における薬の副作用で白血球数が低下することもあります。
白血球数が低下すると、細菌に対する体の抵抗力が弱くなり、細菌に感染しやすくなります。時には、全身に細菌が感染してしまう菌血症や敗血症などになることもあり、その際にCRPの値が高くなります(※9)。
その他の要因
上気道炎、気管支炎、中耳炎、肺炎の際に、CRPの値が10以上であれば、より重症化しているという判断を下すことがあります(※10)。
また、外傷、皮下出血、火傷、手術、歯周病などでもCRPの値が上がることがあります(※1,11)。
CRPが基準値より低い場合は?
CRPの値が低いことは、正常である証です。前述した0.3mg/dLという値は、正常範囲の上限なので、それより低い分には問題ありません。
ただし、CRPが低い数値でも、その値が上下することは、何らかの病気の兆候ということもあります。
CRPの基準値はあくまでひとつの目安
CRPの数値は、医師が病気の原因を探るためのひとつの指標として使われているものです。
数値だけを見て、病気が重いか、軽いかを判断することはできないので、「CRPは、お医者さんが診断するときに参考にする数値」と覚えておくといいでしょう。
CRPの数値で一喜一憂せず、医師の判断を仰いでくださいね。