妊娠を望んでいないときに避妊に失敗してしまうと、焦ったり不安になったりしますよね。緊急避妊法のひとつとして、「アフターピル」と呼ばれる薬が使われることがありますが、正しい服用の仕方や副作用について、よく知らない人もいるかもしれません。今回は、アフターピルの効果が続く時間や副作用、値段など、最低限知っておきたいポイントをご説明します。
アフターピルとは?
「アフターピル」は、性交渉のときにコンドームが破けて避妊に失敗したり、抵抗できない状況で性交渉を強いられたりした場合に、妊娠を防ぐ目的で用いられる緊急避妊薬です。
日本では長年、月経困難症や生理不順の治療薬である「プラノバール」などが、いわゆる「ヤッペ法」による緊急避妊薬として処方されてきました(※1)。
しかし、避妊効果がより高く、副作用が少ない「ノルレボ」が2011年に正式承認され(※2)、こちらの薬がアフターピルとして産婦人科で処方されることも増えています。
アフターピルに避妊効果があるのはなぜ?
アフターピルがなぜ緊急避妊法として有効なのかは、実はまだ十分に解明されていません。
これまでの研究によると、アフターピルを飲むことで子宮内膜の状態が変化し、受精卵が着床しにくくなる、卵胞が完全に成熟する前に排卵が促される、といった理由が考えられています(※1)。
日本産科婦人科学会の指針によると、「ノルレボ」を排卵前に投与することで、5~7日間排卵が抑制され、その期間に女性の腟内に進入したすべての精子が受精能力を失う、つまり受精に至らないという説明がされています(※3)。
なお、生殖医学の領域においては、「妊娠は受精の時点ではなく着床の時点で成立する」と規定されており、排卵や受精を妨げるアフターピルは、人工妊娠中絶薬とはみなされていません(※3)。
アフターピルの効果は何時間まで?
アフターピルの種類によって、避妊効果を得られる服用量やタイミングは異なります。ここでは、プラノバールとノルレボを例に説明します(※1)。
● プラノバール:性交後72時間以内に2錠、さらに12時間後に2錠
● ノルレボ:性交後72時間以内(遅くとも120時間以内)に1.5mg(1〜2錠)
世界保健機関(WHO)によると、ノルレボの場合、性交後72時間を超えて服用した場合でも、避妊効果が全くなくなるわけではなく、ある程度有効である可能性はあるとされています(※3)。
アフターピルの効果はどれぐらい?
アフターピルは妊娠を防ぐために有効とされているものの、100%防止できるとは言い切れません。用法・用量を守って正しく使用した場合でも、プラノバールだと3.2%、ノルレボでは1.1%の確率で妊娠するといわれています(※1)。
本当に避妊できたかどうかは、アフターピル服用後、数日~数週間後に生理があってはじめてわかります。もし、生理開始予定日から1週間たっても生理が来ない場合や、いつもより明らかに生理の経血が少ないというときは、アフターピルを処方してもらった産婦人科で相談してみましょう。
なお、アフターピルを飲んだからといって、そのあとずっと避妊効果が続くわけではありません。妊娠を望まない場合は、低用量ピルやコンドームなどで避妊を心がけることが大切です。
アフターピルの副作用は?
個人差がありますが、アフターピルを服用したあと、半数以上の人に吐き気の副作用が現れます。そのほかに、下腹部痛、頭痛、倦怠感、下痢などの副作用が見られることもあります(※1)。
なお、プラノバールなど従来よく処方されてきた薬と比べると、ノルレボの場合、服用後の嘔吐はほとんど見られず、吐き気をもよおす人は全体の4%以下とされています(※3)。
アフターピルの値段は?
アフターピルの処方は保険適用外なので、全額自己負担です。種類によって値段は異なりますが、目安は次のとおりです。
● プラノバール:3,000~5,000円
● ノルレボ:12,000~15,000円
病院によって、初診料や指導料が別途かかることもあるので、受診のときに確認しておくと安心です。
「病院で医師の処方箋をもらわなくて済む」「安く手に入る」という理由で、アフターピルを通販で購入する人もいます。しかし、先述のとおりアフターピルには副作用があり、安全面を考えると、自己判断で服用するのはあまりおすすめできません。
また、通販でアフターピルを注文した場合、すぐに手に入るとも限りませんし、万が一何かあっても病院ですぐに対処できない可能性もあります。
緊急避妊が必要な場合には、産婦人科を受診してアフターピルの飲み方などを説明してもらったうえで処方してもらうのが良いでしょう。
アフターピルはあくまでも緊急手段
性交後72時間以内にアフターピルを飲むことで、かなり高い確率で妊娠を防ぐことができます。しかし、アフターピルには副作用があり、服用後に体に負担がかかる可能性もあるため、繰り返し使うことは推奨されていません(※1)。あくまでも緊急手段と考えましょう。
「妊娠したくない」という意思がある場合には、普段から低用量ピル(経口避妊薬)を飲むのが確実です。ただし、ピルでは性感染症を防げないため、お互いの体を守るためにも、女性がピルを服用し、男性がコンドームをつけた状態で性交渉をすることを心がけてくださいね。