女性にしか見られない「ターナー症候群」は、新生児のうち1,000〜2,000人に1人の割合で現れる先天異常です(※1)。これから出産を迎える妊婦さんや、女の子を持つママは、少し気になる病気かもしれません。今回は、ターナー症候群について、原因や特徴、治療法のほか、妊娠・出産への影響などをご説明します。
ターナー症候群とは?
人間の生物学的な性別は、XとYの2種類の性染色体の組み合わせによって決まっています。XとYの染色体が対になっていると男性(XY)、X染色体のみが2つ並ぶと女性となります(XX)。
ターナー症候群とは、女性が持つ2本1対のX染色体のうち、1本の全体または一部が欠けていることによって生じる染色体異常です。
生物学的な体の構造は女性ですが、思春期に身長があまり伸びなかったり、初潮などの二次性徴がほとんど見られなかったりという特徴があります。成長障害の一つとして位置づけられることもあります。
ターナー症候群を持つ赤ちゃんのほとんどは自然流産してしまい、日本産科婦人科学会によると、ターナー症候群を持ったまま生まれてくる赤ちゃんは1,000人〜2,000人に1人の確率です(※1)。また、難病情報センターによると、日本におけるターナー症候群の患者は約4万人います(※2)。
ターナー症候群を発症する原因は?
ターナー症候群は、ママのお腹の中で細胞分裂するときに、X染色体の数や構造に何らかの異常が現れることが原因だと考えられていますが、発症のメカニズムはまだはっきりと解明されていません(※2)。
ターナー症候群の女の子の場合、妊娠14~18週頃までは正常に卵巣が発育しますが、そのあとは何らかの原因で卵細胞の数が減っていってしまい、卵巣や卵管、子宮、腟などの女性器の発育が不十分となります(※3)。
なお、一般的に妊娠年齢が高くなるほど、染色体異常を持った赤ちゃんが生まれるリスクが上がりますが、ターナー症候群に関してはあまり関連性がないといわれています(※1)。
ターナー症候群は妊娠中にわかるの?
妊娠初期の超音波(エコー)検査で、胎児の首のうしろが厚くたるんでいるのが発見された場合、ターナー症候群が疑われることがあります(※1)。
その後、絨毛検査や羊水検査などの出生前診断によって、染色体異常が判明する場合もありますが、これらの検査にはわずかながら流産リスクがあるので、検査を受けるかどうかについては医師やパートナーとよく相談する必要があります。
ターナー症候群の症状や特徴は?
ターナー症候群を持つ女性には、主に次のような特徴が見られます(※1,2)。
● 身長が低い
● 胸のふくらみ、陰毛、初潮など第二次性徴の傾向が見られない
● 肘(ひじ)がわずかに外側に反っている(外反肘)
● 首のうしろの皮膚が肩にかけて広がっている(翼状頸)
● 後頭部の髪の生え際が低い
● 手足の甲がむくむ
● 卵巣機能不全をきたす
なお、染色体異常が生じる部分によっても影響は異なるため、これらのうち全ての症状が現れるとは限りません。
ターナー症候群の治療方法は?
患者それぞれの症状に合わせて治療が行われますが、なかでもホルモン補充治療は有効な方法とされています。
成長ホルモン治療
ターナー症候群では、骨の形成に関わる遺伝子が影響を受けます。そのため、ほぼすべての患者に低身長の症状が出ますが、対処法として成長ホルモン治療が効果的とされます。
一般的に、自宅での自己注射によって成長ホルモンを補充します。
女性ホルモン治療
胸のふくらみ、陰毛、初潮などの第二次性徴が見られない場合は、一般的な思春期の年齢(12〜14歳頃)から女性ホルモンの投与を始めます。
エストロゲンとプロゲステロンを併用することで、第二次性徴を促進し、女性ホルモン不足による骨量の低下を予防します。
ターナー症候群でも妊娠・出産できる?
ターナー症候群の主な症状として、18歳を過ぎても生理がこない「原発性無月経」が見られることも多く、その場合は不妊につながります。
ただし、ターナー症候群の女性のうち、10〜20%は自然と思春期を迎え、2~5%に月経(生理)が見られます。この場合、正常な妊娠・出産が期待できます。
また、女性ホルモン治療による効果で、月経異常が改善される可能性もあります。現在では不妊治療の技術も発達してきているので、妊娠・出産を望む場合は、不妊治療を行うクリニックに一度相談することをおすすめします。
ターナー症候群で気をつけるべき合併症は?
ターナー症候群で最も多く見られる合併症は、耳鼻科系の病気です。そのほか、循環器疾患を伴うこともあります。
具体的には、次のとおりです(※1,2)。
● 炎症や難聴などを伴う中耳・内耳性疾患
● 心臓・血管系疾患
● 腎疾患
● 甲状腺疾患
● 糖尿病
● 骨粗鬆症
これらの合併症があるときには、ホルモン治療と並行して、症状に合わせた適切な治療を続けていく必要があります。
子供の成長に合わせて、定期的に超音波検査やMRI検査を受け、異常がないかどうか医師に診てもらいましょう。
ターナー症候群では知能面での障害もある?
ターナー症候群は先天性異常による病気なので、知能面の障害があるのではないか、と思う人もいるかもしれません。
しかし、日本産科婦人科学会によると、空間認識が苦手な人はいるものの、知能は正常であることが多いとされます(※1)。
ターナー症候群の子の成長を温かくサポート
ターナー症候群は、自然流産の原因の多くを占める染色体異常の一つです。しかし、この病気を持って生まれてくる女の子の赤ちゃんもいます。その場合、ホルモン治療を続けることで、ほかの人と同じように日常生活を送ることが期待できます。
ターナー症候群を持って生まれてきた子が大きくなるにつれて、低身長などの見た目や、思春期の無月経などの悩みが出てくることもあります。ママやパパも不安になるかもしれませんが、かかりつけの小児科医や産婦人科医などに相談しながら、温かく成長を見守ってあげてください。