不妊治療にも様々な治療法があり、それぞれ効果や妊娠率が異なります。なかでも「クロミッド」という薬を使った排卵誘発法は、タイミング法と組み合わせてよく行われるため、どれくらいの妊娠率があるのか気になる女性も多いのではないでしょうか。そこで今回は、クロミッドを服用したときの妊娠率や、確率を高めるための方法についてご説明します。
クロミッドで妊娠率が上がるの?
不妊治療で使われる「クロミッド」は、排卵誘発剤の一つです。軽度の排卵障害がある人や、排卵が起こったり起こらなかったりと不安定な人に対して処方されることがあります。
クロミッドの成分である「クエン酸クロミフェン」が脳の視床下部に作用すると、女性ホルモンの「エストロゲン」を感知するセンサーの反応が鈍り、脳は「エストロゲンが不足している」と認識します。
エストロゲンの分泌が少ないと認識されると、普段エストロゲンによって分泌量が調節されている「ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)」が多く分泌されるようになります。
GnRHは、「黄体化ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の分泌を促進する作用があります。LHとFSHが分泌されると卵胞の発育が進むので、排卵が誘発されるという仕組みです。
不妊の原因は様々ありますが、排卵がうまく起こらないことが原因となっている場合、クロミッドで排卵を促すことで妊娠できる可能性が高まります。
クロミッドの単独療法による妊娠率は?
クロミッドの単独療法は生理の5日目から始め、クロミッドの錠剤を1日50~150mg、5日間連続で飲みます。一般的には、クロミッドを飲み終えて7~10日後に排卵が起こります(※1)。ただし、人によってはクロミッドを飲みきってすぐに排卵することもあります。
クロミッドで排卵誘発の効果が得られるケースは、排卵が起こらずに生理がこない状態(無月経)のうち、比較的症状が軽い「第一度無月経」と、生理のような出血はあるが排卵が起こっていない「無排卵周期症」の2つです。
クロミッドによる排卵誘発率は、第一度無月経で約60~70%、無排卵周期症だと約80~90%と、比較的高い効果が得られます(※1,2)。
しかし、最終的な妊娠率はいずれも約25~30%と、あまり高いとはいえません(※1,2)。その代わり、飲み薬による治療なので手軽で、ほかの排卵誘発剤と比べて重い副作用が少ないのがクロミッドのメリットといえます。
クロミッドの妊娠率は併用療法で上がる?
クロミッドの単独療法では排卵効果が得られない場合、排卵率や妊娠率を上げることを目指して、hCG注射を併用することもあります。
たとえば、クロミッドを5日間飲み続けたあと、婦人科で卵胞の大きさをチェックする「超音波卵胞計測」という検査を受け、卵胞の大きさが20mmを超えたタイミングでhCG注射をすると、クロミッドの単独療法で効果がなかった場合でも排卵することがあります(※1)。
ただし、こうした併用療法の場合、通院回数が多くなり、治療による副作用のリスクが上がるため、どんな治療を行うかはかかりつけの医師とよく相談のうえで決めることが大切です。
クロミッドよりも妊娠率が高い方法は?
クロミッドで排卵効果が得られなかった場合、hMG注射とhCG注射を連日にわたって投与する「ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法」という治療法を行うこともあります。
ゴナドトロピン療法による妊娠率は約30~40%と、クロミッドと比べるとやや高いとされます(※2)。
ただし、妊娠率が高い一方で流産率も高いという点に注意する必要があります(※2)。
また、注射薬によって卵巣が過度に刺激されることで卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起きたり、双子や三つ子などの多胎妊娠になったりする可能性も高くなります(※2)。
こうしたメリット・デメリットを踏まえたうえで、クロミッドで排卵・妊娠がうまく行かなかった場合の治療法についても、医師やパートナーと相談しておきましょう。
クロミッドでの妊娠率を高める方法は?
クロミッドによってかなり高い排卵効果は得られますが、より妊娠の可能性を高めるには、「排卵のタイミングを正確につかむこと」が必要です。そのうえで、最も妊娠しやすい「排卵の1~2日前」に夫婦生活を持つと、妊娠率が上がります。
クロミッドによる治療中に効果的な排卵タイミングを知る方法は、次の3つです。
● 排卵検査薬で陽性反応が出たタイミングで性交をする
● 超音波卵胞計測を受け、卵胞が排卵直前の大きさになる日に性交する
● 基礎体温がガクッと落ちこんだあと、低温期から高温期に移る期間に性交する
医師からクロミッドが処方された時点で、個人の体質などにあったアドバイスももらえるはずなので、わからないことがあればそのときに聞いてみましょう。
また、良いタイミングで夫婦生活を持つためには、パートナーの理解も欠かせません。治療による負担を女性だけで抱えこまないよう、夫婦でよく話し合っておきたいですね。
生活改善でクロミッドの妊娠率を上げよう
クロミッドを飲んで排卵が起こったとしても、体のホルモンバンスが乱れていると、妊娠しにくくなったり、妊娠を継続しづらくなったりする恐れがあります。
クロミッドがより効果を発揮しやすい体の状態を作るためにも、日頃の生活習慣を見直して、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動など、規則正しい生活を送るように心がけていきましょう。