妊活で大事なことの一つに、「子宮内をできるだけ受精卵が着床しやすい状態にしておく」ということが挙げられます。しかし、「子宮内膜ポリープ」ができてしまうと、受精卵の着床が妨げられてしまう恐れがあります。今回は、子宮内膜ポリープができる原因や症状、治療法のほか、妊娠への影響などをご説明します。
子宮内膜ポリープとは?
「子宮内膜ポリープ」とは、子宮内膜から子宮の内側に向かって、キノコのように突き出た腫瘍のことをいいます。「胃にポリープができた」という話を聞いたことがある人もいると思いますが、子宮内膜ポリープも形状は似ています。
大きさは1cm未満のものが多いですが、2cm以上のポリープも10~20%ほどの割合で見つかります。多くは1つだけの単体でできますが、いくつか発生することもあります(※1)。ほとんどの場合が良性ですが、稀に悪性(がん)のこともあるので、慎重に検査する必要があります(※2)。
子宮内膜ポリープは、40~50代に多く見られますが、妊娠を望んでいてもなかなか授からない不妊の女性のうち、子宮内膜ポリープが見つかった割合は約20%という報告もあるため、年齢を問わず注意したい病気です(※1,2)。
子宮内膜ポリープの原因は?
子宮内膜ポリープができる原因は詳しくわかっていませんが、女性ホルモンの一つである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の刺激によって発生するのではないか、と考えられています(※1,3)。
エストロゲンが過剰に分泌されている場合や、エストロゲンに対する子宮内膜の感受性が強い場合、子宮内膜が過剰に増殖し、子宮内膜ポリープだけでなく子宮内膜症などの病気リスクも高まります。
ただし、エストロゲン分泌が活発なのは20~30代で、閉経を迎えると分泌量が減少していくのに対して、子宮内膜ポリープがよく見られる年齢が40~50代であるため、エストロゲンの刺激以外にも様々な要因が関係して発症している可能性があります。
子宮内膜ポリープの症状は?
子宮内膜ポリープができても、特に小さい場合は自覚症状がほとんどありません。婦人科で定期検診を受けたときに偶然発見される、というケースも少なくありません。
なお、生理の出血量が多い「過多月経」や不正出血、ひどい生理痛のほか、軽い貧血を引き起こすこともあります。これらの症状が、実は子宮内膜ポリープのサインである可能性もあります(※1)。
また、最初にご説明したとおり、ポリープが子宮内膜にできると受精卵が着床しにくくなることから、不妊が最初の自覚症状であることも。「生理は規則的に来ているのに、なぜかなかなか妊娠しない」と婦人科を受診してみたところ、子宮の中にポリープが発見された、という人もいます。
子宮内膜ポリープの治療法は?手術が必要?
ホルモン剤による治療効果は明らかになっていないため、手術で子宮内膜ポリープを摘出するのが一般的です。目立った症状がなくても、内膜細胞診の検査結果によって、悪性が疑われる、ポリープの大きさが1cmを超える、不妊の原因と考えられる、といった場合は摘出し、それ以外は経過観察となることが多くあります(※2)。
日本産科婦人科学会のガイドラインによると、子宮内膜ポリープの取り残しによる再発を防ぐために、「子宮鏡下手術」が推奨されています(※2)。これは、細い内視鏡(子宮鏡)を膣から子宮の中に入れ、子宮内腔(内膜側)を確認するとともに、先端についた電気メスなどの器具でポリープを切除する手術で、日帰りか、比較的短期間の入院で済みます。
子宮内膜ポリープの手術費用はどれくらい?
子宮内膜ポリープの手術費用は、健康保険が適用され、自己負担額は10万円以下が相場です。ただし、医療機関や手術方法によって幅があり、入院日数によってさらにベッド料金や食事代などがかかりますので、あらかじめ病院で確認しましょう。
民間の医療保険に加入していれば、子宮内膜ポリープが婦人科系疾患の補償対象に含まれているかもしれません。不明な点があれば、契約している保険会社に確認することをおすすめします。
子宮内膜ポリープの手術後、妊娠しやすくなるの?
子宮内膜ポリープを手術で取り除くことで、不正出血や子宮への精子輸送障害、着床障害が改善され、妊娠しやすくなるという研究結果がいくつか出ています。
たとえば、2000年代に行われた不妊の女性を対象とした研究で、子宮内膜ポリープを切除した方が、切除していないケースよりも有意に妊娠率が高かった、という結果が出ています(※1,2)。
また、別の研究では、不妊女性が子宮内膜ポリープ除去の手術後に妊娠した確率は50~80%弱という報告もあります(※1)。
ポリープを取り除いたからといって、絶対に妊娠できるというわけではありませんが、子供を授かりたいと考えている場合は、摘出手術について医師に相談してみましょう。
子宮内膜ポリープを検査するタイミングは?
子宮内膜ポリープは自覚症状がないため、どのタイミングで検査を受けたらいいのか、いつ病院に行けばいいのか気になりますよね。まず一つには、不妊期間が長いときに、婦人科や不妊外来で相談してみて、不妊検査の一環で子宮内の状態を検査してもらうと良いでしょう。
また、1~2年に一度、子宮体がんや子宮頸がんの検査を受けることをおすすめします。たとえ自覚症状がなくても、定期的に自分の体の状態をチェックしておくのは、とても大切なことです。また、生理不順や不正出血など、気になることがあれば検査のときに医師に聞いてみましょう。
子宮内膜ポリープの治療で、妊娠率が高まる可能性も
「子宮内膜ポリープ」の診断を受けると、「もしかして妊娠できないのではないか」と不安になる人もいると思います。しかし、摘出手術後に赤ちゃんを授かったケースも多く報告されているので、前向きな気持ちで治療に取り組みましょう。
また、長年不妊に悩んでいる女性の場合、もしかすると子宮内膜ポリープが原因の一つである可能性もあります。まずは婦人科や不妊外来を受診し、詳しい検査を受けてみてください。