乏精子症とは?自然妊娠できるの?原因や治療法は?

監修医師 泌尿器科 小堀 善友
小堀 善友 プライベートケアクリニック東京 東京院院長。2001年、金沢大学医学部卒業。金沢大学泌尿器科、米・イリノイ大学シカゴ校泌尿器科、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授を経て、2021年より現職。日... 監修記事一覧へ

男性不妊については少しずつ認知されてきているものの、まだまだ情報が少ないのが実情です。今回は精液の中に含まれる精子の数が少ない「乏精子症」について、原因や治療法、自然妊娠できるのかなどをご紹介します。

乏精子症とは?

ノート 時計

乏精子症(Oligozoospermia)とは、精液の中の精子の数が少ない状態で、男性不妊の原因の一つです。

WHOマニュアルが示した基準値、「精子濃度1mlあたり1,500万精子未満」となると乏精子症と診断され、必要に応じて治療が開始されます(※1)。

男性不妊の中でも特に精子に関する原因としては、乏精子症の他にも、精子の運動率が低い「精子無力症(Asthenozoospermia)」と正常な形の精子の数が少ない「奇形精子症(Teratozoospermia)」があり、これらを総称して「OAT症候群」といいます。

乏精子症の場合、精子無力症や奇形精子症の症状も同時に見られることが多くあります。

乏精子症の原因は?

理由 why

乏精子症になる原因の多くは、精巣で精子をつくる機能に何らかの問題がある「造精機能障害」だとされています。造精機能障害には下記のような原因がありますが、原因がわからないことも多くあります(※2)。

精索静脈瘤

静脈に瘤ができることによりうっ血し、陰嚢内の温度が上がって造精機能障害になることがあります。また、血が逆流することにより精巣に酸化ストレスがかかることも造精機能障害の原因とされています。

加齢

女性が加齢と共に妊娠しにくくなるのと同様、男性も35歳以降は精子の数や運動率。精液量が下がる傾向があります。

その他の原因

子供の頃の停留精巣、鼠径ヘルニアや骨盤部の手術、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、精巣上体炎など、様々な要因により、造成機能障害に影響が及ぼされている可能性もあります。

乏精子症の検査方法は?

診察

乏精子症かどうかを確かめるためには、まず精液検査を行います。

自宅または病院で精液を採取し、顕微鏡で精子の状態を観察します。生活環境やストレス等の要因によって結果が変化しやすいため、通常2~3回検査を行い、その結果を総合して診断されます。

次に睾丸の診察を行います。

睾丸の大きさに異常がないか、精巣の血管に異常がないかを検査するのと同時に、超音波検査を行い、精巣の大きさや静脈瘤の太さ、睾丸に悪性腫瘍がないかを調べます。また、採血によるホルモン値検査を行う場合もあります。

乏精子症の治療法は?

薬

乏精子症は、精索静脈瘤が原因の場合のみ、手術を行うことによって改善できる可能性があります。それ以外の原因に対しては、抗酸化剤であるビタミンCやビタミンE、コエンザイムQ10を服用したり、生活習慣を変えたりすることで改善できることもあります。

生活習慣のポイントは、できるだけ健康に過ごすことです。健康的な食生活を行い、カロリーを摂りすぎないこと、タバコを吸わないこと、運動をして睡眠をしっかりとることなどが大切です(※1)。

乏精子症の対策・予防法はあるの?

夫婦 カップル 食事
乏精子症は原因不明なことが多いため、予防法が確立されていないのが現状です。しかし精巣や精子に影響を与えるとされる生活習慣を改善することは、少なからず予防になるでしょう。

例えば、睾丸への締めつけがきつい下着をつける、股間が温まる状態を続ける、加工食品を多く摂るといった習慣を改めることが大切です。

またパソコンを膝に置いたり、スマホをズボンのポケットに入れたりすることも、精子に悪影響を与えるとされているので気をつけましょう(※1)。

乏精子症でも自然妊娠できるの?

診察

前述したとおり、乏精子症は基準値より精子が「少ない」状態です。精子が全く存在しないわけではないので、自然妊娠の可能性が全くないわけではありません。しかし乏精子症でない人に比べると、確率は低くなります。

妊娠できると考えられる精子の下限値としては、WHOが2010年に改定した「精子濃度1mlあたり1,500万個以上」という基準があります(※1)。

妊娠したカップルの男性について、全員が精液検査をすることはないので、日本人男性の精液が平均的にどれくらいの値かはわかっていないものの、やはり上記の基準値を下回ると自然に妊娠しにくくなります。

乏精子症が重度の場合は自然妊娠の確率がかなり低いので、体外受精や顕微鏡受精を検討する必要があります。

乏精子症かどうかは病院で検査を

カップル
男性不妊は女性不妊と比べて、まだわからないことが多い分野です。また男性自身が検査を受けたがらず、治療が進まないということもあります。

しかし確実に生殖医療の技術は発達してきており、精子の状態が悪いと診断されたとしても、子供を授かる可能性は十分あります。自然妊娠できない場合でも、体外受精によって妊娠できたというカップルも多くいます。

乏精子症には基本的には自覚症状がないため、病院を受診するタイミングを逃しがちです。避妊をせずに妊娠を希望して性交を行い、半年~1年程度かかっても妊娠に至らないときには、男性も女性も、カップルで不妊検査を受けるようにしましょう。

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