年々めまぐるしく医学が進歩していく現代で、右肩上がりに患者数を増やしている病気があります。それが「川崎病」です。あまり耳馴染みのない病名かもしれませんが、合併症により心筋梗塞などの深刻な病気を引き起こす可能性もあります。しかし、症状が特徴的で、明確な診断基準があるため、判断しく、治療しやすいという面も。そこで今回は、川崎病の診断基準や、ガイドラインとなっている「川崎病診断の手引き」についてご紹介します。
川崎病とは?
川崎病とは、「皮膚粘膜リンパ節症候群」とも呼ばれる病気で、毎年1万人以上の子供が発症しています(※1)。
発症者全体の80~85%を4歳以下が占めるなど、子供が発症しやすい病気です(※1)。また、男の子の方が女の子に比べて1.3倍感染率が高いというデータもあります(※2)。
患者数が多くなるのは春と夏で、秋は少ない傾向があります。過去に発症した経験があっても再発することがあり、その再発率は3.6%です。
症状は?
川崎病の症状で最も特徴的なのは、全身の細かい血管に炎症が起こる血管炎です。全身の血管に炎症が起こると、合併症として冠動脈瘤が現れることがあります(※1)。
冠動脈瘤とは、心臓を動かすための栄養と酸素を運ぶ「冠動脈」という血管にこぶができる病気で、大きくなると心筋梗塞などに繋がる可能性があり、注意が必要です。
全身の血管炎以外にも、5日以上続く発熱や、血管の1本1本が区別できるくらいの両目の充血、唇や口の中の赤みやいちご舌、手足のむくみ、胸やお腹に現れる形がまばらな発疹などがあります。また、首のリンパ節が腫れることがあります。
手足に赤みや、皮膚がパンパンになるほどのむくみの症状が出ることもあります。熱が下がるとむくみも治まり、それと同時に指先の皮膚が剥がれ落ちる症状が見られます。
また、BCG接種の痕が赤くなるのも特徴的な症状のひとつです。
原因は?
川崎病の原因は、コロナウイルスやEBウイルス、溶血性連鎖球菌、アデノウイルスなどの微生物による感染症ではないかと考えられ、これまで研究が行われてきたものの、明確にわかっていないのが現状です(※2)。
川崎病の診断基準は?
川崎病の診断は、「川崎病診断の手引き」によって行われます。
川崎病は1967年に川崎富作博士によって発見された病気で、「川崎病診断の手引き」は、発見から3年後の1970年に初版が作られました。
その後、数度の改定が行われ、現在でも多くの医師が、この「川崎病診断の手引き」を川崎病診断のガイドラインとして使っています。
「川崎病診断の手引き」による診断基準(※3)
● 5日以上続く発熱(治療により5日未満で解熱した場合も含む)
● 両目の充血
● 唇の腫れ、舌がいちごのようにブツブツと腫れる、喉の赤みなど、口や喉の症状
● 形がままばらな発疹
● 手足の赤い腫れやむくみ、発症から10日程あとの指先の皮の剥離
● 発症してすぐのリンパ腺の腫れ
これらの6つの症状のうち、5つ以上の症状が見られるか、4つ以上が当てはまり、心エコー検査によって冠動脈瘤が確認されたら川崎病と診断されます。
川崎病と診断されたらどうする?
川崎病と診断された場合、すぐに入院での治療が行われます。発症後すぐの治療には、熱を下げ、炎症を抑える効果のあるアスピリンと、血液製剤である大量の免疫グロブリンが使われます(※2)。
川崎症の合併症である冠動脈瘤は、狭心症や心筋梗塞などの深刻な心臓の病気に発展することもあります。しかし、早期に発見し、治療を行うことで、冠動脈瘤が後遺症として残る確率を抑えることができます(※1)。
そのため、もし川崎病のような症状が見られた場合は、なるべく早く病院を受診することをおすすめします。
川崎病の診断基準を知って、早期の治療を
患者数が年々増加傾向にある川崎病は、後遺症を残す病気であるにも関わらず、その発症原因がわかっていないため、予防することが難しいという現状があります。
しかし、その症状には特徴的なものが多く、「川崎病診断の手引き」というガイドラインもあるため、感染を見つけやすい病気とも言えるでしょう。
川崎病は怖い病気ではあるものの、子供が川崎病を発症していることに早く気づき、すぐに治療を行えば、後遺症が残る確率を減らすことができます。
なるべく早く子供の川崎病に気づくためにも、ママやパパが川崎病の診断基準を知っておき、子供に該当する症状が現れたら、すぐに病院を受診しましょう。